社員の動機づけはどの会社にとっても大きな課題です。第一に必要なことは、現状の社員の意識レベルをしっかりと把握しておくことです。今回は意識レベルの把握と動機付けに関してご紹介いたします。
意識レベルに合わせた動機付け
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.理想の状態を念頭におく経営者は、それを理解できない社員の意識レベルを十分把握できていないことがあります。
2.経営者が施策を講じようとしても、社員の意識レベルが高まっていなければ、動機づけはできず、空振りに終わります。
3.現場の意識レベルを把握するには、実際に現場で発生している問題をじっくり観察することが有効です。
4.動機づけには、本人が必要性に気づかなくてはならないため、本人の意識レベルの半歩先を指し示すことが一番有効といわれています。つまり、動機付けの出発点は現状の意識レベルを把握することにあります。
- ■経営者と現場の意識ギャップ
- 一般的に経営者と社員との意識には大きな隔たりがあります。経営者は理想の状態を念頭において発言しますが、社員はこれを実感できないことが多いようです。このように経営者が社員の意識レベルを十分に把握しないまま施策を講じようすることに問題があります。ある会社の改善運動推進の相談を受けたことがあります。そこで、挨拶の奨励、整理整頓の実施などを施策として提案した時、社長から「そんな基本のことの施策ではなく、もっと高い次元の施策を掲げるべきだ。」という発言がありました。考え方としてはどちらも正しいと思います。要は社員の意識レベルの認識の違いなのです。
- ■現場実態の伝わりにくさ
- この会社では、社長の出席する会議の場では、戦略的な話題が常に話し合われていました。ところが実際の現場では、事務的なミスや顧客からのクレームが頻発していたのです。このように社長が目指し好む話題と現場で発生する問題には質的に大きなギャップが生じていたのです。事務的なミスや顧客クレームによる顧客離れが進む中で、一定の顧客離れは仕方ないこととして新規開拓の戦略ばかり話題にしていました。現場では、社長の話す戦略は、現実感のない施策とされ、傍らに置かれていました。結果として、社長の掛け声は空回りに終わっていたのです。
- ■現場の意識レベルを把握する方法
- では社内の現状の意識レベルを把握するにはどうすればよいでしょうか。実際に起きている問題に意識の実態があると考え、発生している問題をじっくりと観察することが有効です。単純な事務ミスやクレームなどが問題となっていれば、自分の仕事を抜本的に見直したり業務の改善を進めたりするレベルにはほど遠いと考えるべきです。社員の業務遂行に単純ミスなどの初歩的問題はなく、生産性の低下などが問題となっていれば業務改善に向けて動機付けすべき意識レベルにあると判断できるでしょう。
- ■意識レベルに合わせて気づきを与える
- 意識レベルとは、問題をどういう視点から見るかということです。同じ現場を数年目の社員と管理職が見た時、数年目の社員は作業がマニュアル通りに行われていないことを問題視し、管理職は付加価値のないこの現場自体を問題視したというように、ものを見る目線の高さによって問題発見レベルは異なります。この目線をどの水準にまで上げさせるかが動機づけであり、その水準を決める判断基準は現状の意識レベルです。人を動機づけるためには、本人の意識の半歩先を指し示すことが一番有効といわれています。本人がその必要性に気づかなくては動機付けにならないからです。そのためには現状の意識レベルを把握することが出発点となります。現場で発生する現実の問題を予断を挟まずにキチンと見る姿勢が、動機づけの施策を考えるためには重要なのです。