晴れた日は、冷気の地表にキラキラと眩しい冬日が降り注ぐ。通勤路にマスクの列が戻って、進化・変性するウイルスに抵抗している。仕事・教育・遊び、私たちの暮らしの基本は健康にあることを思い出させる季節だ。新しいカレンダーの予定が、健やかに運びますように。
体調良好・気力充実だと思っている時には気にならないが、ひとたび不調が起きると引き金になって胃腸・筋肉などに不定愁訴が現れ、健康の歪みに気がつく。風邪などの症状が重くなって初めて、目に見えない「免疫」が私たち個体の日々を司っているのが分かる。
免疫力とは、外界から体内に入ってくるウイルスや病原菌を除去して、自身の体を保全・修復する力をいうそうだ。低下すれば、体内に感染・炎症・発熱・化膿などが起き、全身の弱所に不調を来たして病気を発症する。おもな原因は、食事の乱れや睡眠不足、過度な労働やストレス、冷えや年齢といわれている。無意識の過信が影響しているのかも知れない。
かつて整形外科で長い入院を経験した。同じ病棟に当時30代の同病の女性がいて、子どもが待つ家に早く帰りたくてストイックにリハビリに励んでいた。が、ストレスにより帯状疱疹を発症、リハビリを中断することになった。頑張り過ぎて逆効果を生んでしまったのだ。
また現在闘病中の友人は、明るく振舞っているが先の見えない自身の状態に強い閉塞感を感じているように思える。家族も友人も傍にいるだけで何もできない。
■忍び寄る不調
健康・仕事・経済・家庭などに問題を抱えながら自力ではどうすることもできない状況にある人、またはそのような経験がある人は多い。そんな時をどう過ごすか?人それぞれ案件により異なるだろうが、私の場合はわが身の先が見えない時は変化に注意しつつ現状にじっと耐え、今自分にできること、すべきことに専心してきた。視点を変えて、閉塞の時は自身の勉強・忍辱の修行の時と考えて、いずれ来る決断のために内側を補強した。
先が見えないことにストレスを感じるのは、個人だけではない。(と言うより社会のストレスが個人に及んでいることの方が多いのだろうが)社会もまた予測不可能な「VUCA(Volatility変動性・Uncertainty不確実性・Complexity複雑性・Ambiguity曖昧性)」の時代(1990年代~)に苦慮している。さらに「TUNA(Turbulent騒然とした・Uncertain不明確な・Novel斬新な・Ambiguous曖昧な)」の時代(2016年代~)を経て、今は「BANI(Brittle脆弱性・Anxious不安・Non-Linear非線形性・Incomprehensible不可解さ)」混沌の時代(2020年代~)といわれている。または予見不能な時代から、明確な停滞の時期に入ったとする説もある。
■悪化させない手立て
組織を取り巻く社会変化の中で存続成長を目指すビジネスでは、時に応じて様々なスキル強化やマインドの醸成・対策が講じられ続けている。が、不安定な状況下で、社会を構成している人心はどうだろうか。不安定な環境や停滞している状況が続くと、希望が見えない人心は荒廃しがちだ。もちろん多くの人は正しい認識と手法でレジリエンスを目指し続けてはいるのだが。
歴史に学べば、用心すべきは閉塞状態が長引くとき、人心は現状を打破してくれそうな強硬なリーダー、起死回生・一発逆転を果たして明るい未来を拓くだろう果敢なヒーローに惹かれやすいことだ。現にそうした動きは活発化していると感じる。果たして、疲弊から悪化しつつある世界のカンフルになるのか、弱の肉は強の食になる(韓愈)の始まりなのか、まだ私たちは知らない。
「停滞」という不健全な状況で、私たちは正気を保って様々を判断できるだろうか。レジリエンスによって回復することは大事だが、既に不十分に思える。それ以前に日頃からよく学び・よく考えて心身の免疫力を高めて、病む前に自浄作用で危険要因を健全に正す努力をしなくてはいけない。ビジネスも個人も、同じ学習を身につけよう。などと、正月休み中から長い風邪症状が続く私は、不調に浮かされて考えていた。とりあえずは、今日の薬を飲んで回復しなければ。
2025年1月22日 (水) 銀子