インソース研究チームの上林憲雄教授(神戸大学大学院 経営学研究科)の研究より「ダイバーシティ」についてお伝えいたします。
ここ数年、時流の経営キーワードとなっている用語の1つに、ダイバーシティ・マネジメントがあります。ダイバーシティとは多様性を表す英語で、「多様性」を経営へ導入することを意味します。
しかし、ダイバーシティがどう企業論理と結びついているのかが議論されることはあまりありません。今回は、ダイバーシティと企業論理の結びつきについて考察してみたいと思います。
「ダイバーシティ(多様性)」は万能薬か?~経営・マネジメントのコツ
著者:インソースマネジメント研究チーム
- ■時流のキーワード:「ダイバーシティ」
- ここ数年、時流の経営キーワードとなっている用語の1つに、ダイバーシティ・マネジメントがあります。ダイバーシティとは多様性を表す英語で、「長期間働き続ける、会社忠誠心を持った男性社員」という一律の勤労者観を否定し、「多様性」を経営へ導入することを意味します。
- ■議論されない企業の論理との結びつき
- しかし、そもそもなぜ、昨今になってことさらダイバーシティの導入が叫ばれるようになってきたか、何ゆえにダイバーシティ・マネジメントが企業経営の論理と結びつくのかについては、世間ではあまり議論されることはありません。
- ■ダイバーシティが企業にとって有効な条件
- ダイバーシティが企業経営の論理と結びつく理由は、企業が環境との相互作用の中で経営しており、その経営環境が時代を経るごとに不安定になってきている、という事実と関係します。どんなシステムでも、要素に多様性があるほうが、その要素を様々に組み換えることによって、不安定な環境においても長期にわたり存立するものです。企業も同じで、多様な要素から構成されることにより、不安定な環境でも存続しうるのです。
- ■日本企業でダイバーシティが求められる理由
- かつて、日本企業が、多様性を含まないにも関わらず、長期にわたり成長し続けていた理由として、かつては現在に比べると経営環境の不確実性が、遙かに小さく、今後の事態が予測可能な状況が続いてきたためではないか、と推論できます。ただ、最近では環境変化の程度が従前と比べると遙かに大きくなったため、システムに多様性を内包させておく方が、経営的に有利となってきた、という状況があるのです。
- ■現象が起こる理由を考えるスタンスこそ重要!
- ここで重要なことは、何でも時流の現象やキャッチフレーズを鵜呑みにしてしないことです。現象が起こる理由を、冷静に覚めた眼で、周りに流されることなく自分なりに考えてみることが重要です。そういうスタンスでいれば、ダイバーシティが求められている理由も、特殊な条件下で、企業経営にとって有効であるからだということも理解できます。こうしたスタンスを身につけ、物事の分析眼を身につけることは、自社のオリジナリティを高め、真の競争力をつけることにも繋がっていくはずです。