本日は、インソース研究チームの上林憲雄教授(神戸大学大学院 経営学研究科)の研究より「ワーク・ライフ・バランス」についてお伝えいたします。
この言葉は、直訳して無駄な残業をなくすための時短や、多様な働き方の推進に使われことが多いですが・・・、もともと欧米発祥のこの言葉、日本では少し違う考え方を持つべきなのではないかと考えております。
それは、単に「時間」の問題ではなく、より「楽しく」働くことが「ワーク・ライフ・バランス」なのではないかということです。上林教授はこんなことをよく話しています。自分は大学教授で24時間働いているも同然。いつも考えている。でも苦痛かといったらそうでもない。大事なことは「時間」を短くすることではなく、いかに楽しく働くかを考えることなのではないか。
詳しくは下の記事詳細をお読みください。皆さんはどのようなご感想をお持ちいただきますか?
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■就労形態や労働時間のみに注目されがちなのが気がかり
- 「ワーク・ライフ・バランス」という言葉があります。訳すと「仕事と生活の調和」。ワークに比べてライフが軽視されがちな生活スタイルを改め、私生活を犠牲にしない働き方を目指したキャッチフレーズです。
しかし若干気がかりな点があります。それは、目下の取り組みが就労形態や労働時間短縮など、ワークの"外枠"に関わる問題がクローズアップされがちだということです。この結果、肝心のワークの"中身"――働き方そのものや仕事内容の豊かさの側面がなおざりにされてしまっています。
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■欧米の考え方は「労働=骨折り」、その根底は「分業」
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もともと欧米では、「労働は骨折りそのもの」と考えられています。なるべく労働は少ない方が人間にとって望ましい、と考えられているのです。そのため、「ワークはいくら大変で骨が折れるものであっても、(ライフさえ充実していればそれで)構わない」という発想になっています。
その発想は、根底に「仕事の『分業』」があります。仕事は分業すればするほど効率が上がると考えられていて、できる限り作業を分割し、一人一人の仕事を明確に決めてこなす習慣があります。でもそれですと、各人の仕事は楽しくなく、離職してしまうことが多いとわかってきました。
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■日本の考え方は「チームで柔軟に仕事をしていく」
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これに対して、日本にはチームで柔軟に作業を進めていくという伝統がありました。そのためワークとライフを完全に分けず、あえて曖昧にしておくという風土があったのです。日本ではむしろ作業員に、仕事を飽きさせないようなことが積極的に行われてきました。また、職場や企業を1つの家族として見立てるようなことも行われてきました。
- ■「ワークもライフも共に充実させる」ことが必要
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ワーク・ライフ・バランスは、本来、ワークとライフの間を厳格に"線引き"するものではありません。特に日本では「ワークもライフも共に充実させる」という考え方です。
無駄な残業をなくすための時短や多様な働き方の推進はもちろん重要ですが、これらワークの"外枠"を整備すると同時に、肝心かなめのワークの"中身"を再検討、再設計し、各自が主体性をもって楽しく仕事ができる状態を目指す必要があるといえます。