前回に続いて、テイラーの研究が今日につながっていることを、例を交えて説明します。
仕事の効率を上げるには ―斜め読みする経営名著:F. W. テイラー(2)―
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.テイラーは、一番有能な労働者の作業量を標準とし、賃率に差を設けることで効率性を高めようとした。
2.段取り替えにかかる手間暇を極力減らすことで、1人でも効率的に作業をこなすことができる。
- ■標準を決める
- 前回ご紹介した、「時間-動作研究」は、実は労働者が一日に成し遂げるべき作業量を決めるのにも使われました。現場で一番有能な一流労働者を基礎として決められた課業ですから、普通クラスの労働者には大変きつい筈です。しかし、テイラーはこれを全体の「標準」として定めるべきだと主張したのです。
- ■賃率に差を設ける
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そして、この標準として定めた課業を達成できた労働者と達成できなかった労働者とで賃率を変えるべきだ、と主張したのです。(「賃金」ではなく「賃率」であるところがミソです。)課業が達成できなかった労働者は低い賃率を(つまり、頑張っても僅かずつしか賃金が上がっていかない)、課業が達成できた労働者には高い賃率を(つまり少し頑張れば大きく賃金が上がっていく)それぞれ適用すべきだという主張です。
例えば、課業を製品10個生産することとすれば10個に至るまでは緩慢な賃金の上昇の仕方ですが、10個を超えると急に賃金が上がっていくというメカニズムです。こういう仕組み(インセンティブ賃金と呼びます)が導入されていると、どんな怠け者の労働者でも、頑張って最低10個生産するところまでは到達しようと考えるはずだ―テイラーはこう考えたわけです。 - ■分業の原理
- もう1つ、テイラーの科学的管理法を説明するうえで欠かせないのが「分業の原理」です。作業員が同一作業にずっと継続的に就いていると、彼ら彼女らのスキルは徐々に上がっていき、短い時間で作業をこなすことが出来るようになります。いわゆる経験効果と呼ばれる現象です。テイラーは、職場での作業は、職場でともに働く人たちの間で分担され、各自が1つの単純な作業のみに集中できるようにすべきだと主張したのです。
- ■1人でも分業は可能!
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職場で働いている人たちの間で作業を分担するのは今日では当たり前ですが、その原型はテイラーが編み出したということです。さらに興味深いのは「分業」は何も多くの(複数の)人たちの間でだけではなく、単独の1人だけでも可能、という点です。
ごく簡単な例として、年賀状を手書きで30枚書き上げる、という作業を考えてみて下さい。効率的に30枚書き上げようとすると、先に30枚全ての表の住所・宛名欄を書き上げてしまい、その後裏面のメッセージを30枚続けて書こうとなる筈です。 - ■ある程度の量をまとめて作業する
- これは、1枚ずつ表→裏と代えてその都度違ったスキルを分散して使うより、いわゆる「段取り替え」にかかる手間や時間を省略した方が集中的に作業に取り組むことが出来るということを私たちが無意識的に知っているからなのです。効率的に作業をこなさないといけない際には段取り替えにかかる手間暇を極力減らすよう、工夫されることをお勧めします。