前回の,ホーソン工場の実験の続きです。 作業中に休憩時間を設けたり,リフレッシュメントを提供したりといった様々な"変化"を導入して生産性があがったことを確認した後,休憩時間もリフレッシュメントもなしの条件に戻したところ,意外な結果が得られました。
人的資源管理の源流(2)
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.生産性や能率は,物的な環境条件ではなく,一緒に働く人たちの間の人間関係によって規定される。
2.その人間関係をベースにして,公式組織とは別の仲間集団が形成されており,その仲間集団が生産性に関する暗黙のルールをもっている。
3.経営者は,この仲間集団の"暗黙のルール"をうまく活用して生産性を上げることができればよい。
- ■条件を元通りに戻すと
- 前回の,ホーソン工場の実験の続きです。
- 奇妙なことに,休憩時間もなくしリフレッシュメントもなしの元通りの条件に戻したところ,再び生産性のアップが見られたのです。この結果は,メイヨーら実験グループにとっては大きな驚きでした。
- ■物的環境は生産性と無関係!?
- このことが意味しているのは,こうした休憩時間やリフレッシュメントといった作業の物的環境条件をいかように変化させようとも生産性への影響はない,という事実です。
- では,いったい生産性や作業効率はどういった要因によって決まってくるのでしょうか。
- そこで,次に実験グループが注目したのは,「実験室」というのは普段働いている職場とは異なった特殊状況で,特に監督者が不在である,という点でした。監督者というのは,皆さんも想像のつくとおり,仕事への指示が欲しい場合には従業員にとって有難い存在ですが,仕事内容が比較的単純で,上司に指示を 仰ぎたいことがあまりないような場合には,かえって煙たい存在です。
- ■人間関係こそが重要
- 「照明とか作業条件とかいった物的環境ではなく,上司との関係や同僚相互の仲の良さのような人間関係が,作業の生産性を規定しているのではないか」という仮説を立証するために,次の実験ステップでは,一緒に作業する人たちを自分たちで選んで,仲の良いグループで作業をしてもらうことにしました。
- その結果,この仲良しグループでの作業は,作業員が相互に気を配り,助け合いながら作業をしていて,生産性が上がっているということがわかったのでした。
- ■職場での不平不満の原因
- 実験の次なるステップは,この「実験室」でみられた「人間関係が生産性に影響を及ぼしている」状況が,平常の職場においてもみられるかどうかを,インタビュー調査で明らかにすることでした。
- わかってきたことは,メイヨーらの想定したとおり,従業員の不平不満の大半は,作業の物的環境によるものではなく,一緒に働いている人々に関するものだったということです。例えば,「あの上司の下で働くのはイヤだ」とか「一緒に作業をしているAとはウマが合わずやりにくい」等々の人間くさい不満だったのです。
- ■非公式な仲間組織
- 職場での人間関係の形成に関し,実験グループが最後のステップで明らかにした点は,組織図・職制上の公式的な関係に加え,仲間集団による目に見えない組織が形成されていて,これらのインフォーマル・グループ(非公式集団)が"暗黙のルール"を有している,という事実でした。
- 実験は、照明の強度を徐々に上げていくグループと、時間を通じて照明の強度を変えないグループとを相互に比較するという形で行われました。
- ■暗黙のルールの効用
- 要するに,ホーソン工場の実験を通してわかったことは,生産性や能率は,物的な環境条件ではなく,一緒に働く人たちの間の人間関係によって規定されるのであり,その人間関係をベースにして,公式組織とは別の仲間集団が形成されており,その仲間集団が生産性に関する暗黙のルールをもっている,ということでした。
- 経営者としては,この仲間集団の"暗黙のルール"をうまく活用して生産性を上げることができればそれに越したことはないわけです。 <続く>