生産性を上げるにはどうしたら良いのでしょうか。
人的資源管理の源流(1)
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.「人のマネジメントこそ、経営を左右する最重要要因の1つだ」という共通認識が得られるようになったきっかけは、いわゆる「ホーソン工場」の実験である。
2.実験では、作業の途中に休憩時間を設けたり、軽食によるリフレッシュメントを提供したりすると、生産性は継続的に上がるという結果が得られた。
- ■人的資源管理ブーム
- 組織の経営や経営学の中で、人的資源管理が非常に重要な位置づけを占めているのは、皆さんにとっては常識だと思います。ただ、この人的資源管理のいちばん古い淵源がどこにあるか、ご存じの方はそう多く居られないようです。
- 以下では、「人のマネジメントこそ、経営を左右する最重要要因の1つだ」という共通認識が得られるようになった、その最も古い出だしのきっかけについて、述べてみようと思います。
- ■ホーソン工場での実験
- 経営学を少し勉強された読者の皆さんは、いわゆる「ホーソン工場」の実験についてご存じでしょう。実は、この実験の結果、導かれた結果から、人はお金を求めるだけの存在ではない、ということが言われ出したのです。
- ■生産性をどうやって上げるか
- 実験は、社会心理学者のメイヨー(E. Mayo)と社会学者のレスリスバーガー(F. Roethlisberger)が主導して行われました。そもそもは、工場側から、労働者の生産性をもっと上げて欲しいとメイヨーらが要望を受け、それに応えようとして「生産性は何によって規定されているか」を調べようとしたものでした。
- ■科学的管理法の失敗
- テイラーの科学的管理法によると、生産性は分業することによって上がっていく、というように考えられるのですが、当時の産業界はテイラーの手法(労働者から考える作業を取り除き、徹底して単純な作業のみを指示通りにやらせるという手法)に強い反発があり、どうやら生産性はテイラーのいうとおりにしても上がっていかない、ということが問題になっていたのです。
- このように、繰り返し「生産性向上」というテーマが出てくることからしても、この点が経営学における最も根源的な問いであることがうかがえます。
- ■物的環境と生産性
- ホーソン工場では、まず「照明の強度によって生産性が上がっていく」という仮説が考えられ、それを立証する実験(照明実験)が行われました。単純に、物的な環境条件によって作業の生産性が向上していくのでは、と考えられたためです。
- 実験は、照明の強度を徐々に上げていくグループと、時間を通じて照明の強度を変えないグループとを相互に比較するという形で行われました。
- しかし、実験の結果は、どちらのグループもともに同じだけ生産性が上がっていくという、想定外の結果が得られました。わかったのは、照明という物的環境は、生産性の向上にはあまり関係していなさそうだ、という事実だけで、他には何もわかりませんでした。
- ■休憩時間の効用
- そこで、次のステップとして、従業員の働きやすさを考慮して実験が行われることになりました。作業の途中に休憩時間を設けたり、リフレッシュメントとしてコーヒーやサンドイッチを提供したりといった変化を、作業現場に導入しました。そうした変化を導入した方が、より生産性が上がるのではという仮説がたてられたのです。
- すると、当初の予測通り、生産性は継続的にずっと上がっていきました。休憩時間を入れ、またリフレッシュメントを提供すればするほど、生産性はどんどん上がっていったのです。
- ■意外な結果
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そこで、今度はそれらの変化を当初の状態に戻し、生産性が元通り下がることを確認しようとしました。ところが、メイヨーらの予測と反し、極めて意外な結果が得られることになったのです。
<続く>