この時季、陽当りのよい山野・河原土手・住宅の垣根などに、ウツギが咲く。香りのある白い小さな花が集まって房になり「卯の花」ともいう。新緑に映えて可憐で美しい。初夏の長雨を卯の花を腐らせるとして「卯の花くたし」と呼ぶが、少しも負けない純白が眼に染みる。
先日、久しぶりのライブにでかけた。生演奏の迫力・興奮と陶酔に浸った幸せな時間は瞬く間に過ぎたが、まだ気持ちの栄養になっている。
楽しい時間はドーパミン効果により速く過ぎ、退屈な時間を長く感じるのは、誰もが経験していることだ。さらに「ジャネの法則(フランスの哲学者ポール・ジャネの考察)」によると、体感時間は年齢に比例して短くなるらしい。ということはライブ時の私の体感時間は、超高速で過ぎたことになる。これは、やはり栄養補給が欠かせない。
■自分のための時間
労働力不足・働き方改革などを受けて、日本の労働時間は量より質が課題になっている。単なる時間外労働の低減ではなく、時間当たりの生産性向上が求められているのだ。
今まで怠けず真面目に勤務して、ワークライフバランスも推奨されていたのに、タイムパフォーマンスを上げるといっても、何をどうすればいいのか分からないという声も聞こえる。特に新しく部署・業務に配属されれば、なかなか仕事をさばけない状況にもあるだろう。
通常のビジネスパーソンの業務は、電話・メール応対や事務処理などのルーチンや雑用じみたものから、急な企画変更やプロジェクトのミッション関連など重要で至急な仕事まで多岐にわたる。ビジネスには常に関係する相手がいるので、他人の都合や意向がこちらの計画に影響するのが普通だ。それらを前提に、過剰にタイトな計画を立てずに(無理は続かないので)自分の時間の密度を上げる必要がある。
タイムマネジメントは、基本的な考え方から流れ・具体的で効果的な方法やヒント・留意点などを学ぶことができる。しかし基本は基本として、同じような仕事をしていても組織の環境やルール・案件の状況や範囲・個人の都合や傾向の違いで運び方はそれぞれだ。各自の創意工夫で自分にマッチするようにアレンジすることが必要になる。それにはまず自分の今の仕事を面白いと思うことが大事だと私には思える。
■それぞれの工夫
時間が足りないという人が多いが、どんな仕事にも自分の仕事の時間内の精度を上げる工夫がある。私は自分の仕事を重要度や難易度・期限などで大まかに分けている。雑事や自由の利く小粒の準備・整理などは「その他」として、待ち時間や半端な時間・気力が途切れた時用にしている(多くの人がそうだろうが)。誰かの予定も大事だが、自分の時間を受け身で待つだけで過ごすのはもったいない。例えば、ノートの使い方・メモの取り方・資料の集め方・検索手順などを変えただけで効率向上することがある。誰にでも当てはまる工夫ではないが、自分の時間を有効に使って、自分の仕事をしたと実感できる。私の時間は無条件に組織のために捧げるものではなく、同時に私の成長に役立つものでありたい。
■困った時には他人の知見
それでも時間が不足なら迷わずSOSを出そう。組織や職場全体のタイムマネジメントを行う立場では、仕事の負荷に偏りがないか・業務の流れは滞りないかなどを俯瞰して、作業の要不要や委任、メンバーの状態などを把握しているはずだ。自身の時間管理をしつつ全体の時間管理に配慮するのは容易ではない。しかし効率にこだわり過ぎないようにフォローまたはコントロールして、仕事が滑らかに進みメンバーが集中できていることが喜びになることもあるだろう。
また自分なりの努力が仕事の向上に結び付いていないと思ったときには上司に相談することも一案かも知れない。かつて私が「振り返り」に戸惑っているとき、当時の上司は「簡単で自分に合うやり方から始めればいいんですよ」と言って、振り返り法のさまざまを分かりやすく教えてくれた。今では合うところだけをつないでノートにしている。
タイムマネジメントというと、組織の成果のために個人の時間を管理されるように聞こえるが、そうではない。残り90秒といわれる終末時計(原子力科学者会報委員会・2024年1月発表)をコントロールするのは個人では難しいが、自分で自分の時間と仕事を管理して個人的な充実感と精神的な余裕を生み出せる数少ない成長機会でもあるのだ。
2024年5月24日 (金) 銀子