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中心化傾向
中心化傾向とは、アンケートや調査に選択回答する際に「ふつう」「どちらともいえない」などの標準値または中央値を選んでしまう心理を指します。特に人事評価においては、当たり障りのない中央値を選ぶことで、評価が標準レベルに集中してしまうことを指します。評価エラーを引き起こす心理的バイアスの1つと言われています。
■人事評価で中心化傾向が起きる要因
人が人を評価する上で、様々な心理的バイアスが働き、評価エラーが起こります。中心化傾向が起きる要因は以下の通りです。
- ①評価基準があいまい
- ②評価者が過大または過少評価することを怖がり、評価する自信がない
- ③部下に嫌われたくない、事なかれ主義
- ④部下の業務内容や成果、日頃の様子をしっかりと把握していない
- ⑤人事評価の意義や重要性を理解していない
このような理由から、だいたいこのくらいだろうという無難な標準値をつけてしまいがちです。 心理的要因による間違った評価は、評価者自身が無自覚であることが多く、問題点が見えにくく改善が難しいとされています。
■中心化傾向が及ぼす人事評価への弊害
中心化傾向により評価の基準が不明確になると以下のような弊害が起きます。
- ①本来ならば高評価であるはずの被評価者のモチベーション低下
- ②評価制度や会社自体への不信
- ③低評価者の成長機会が奪われる
- ⑤被評価者の能力や特性が平均値なので、育成やキャリア形成支援が一律になってしまう
- ⑥能力に合わない業務アサインや異動・昇進に結びつく
特に成果を出した部下にとっては、中間評価を受けた納得感が薄く、離職につながる可能性があります。
■中心化傾向を防ぐ対策
人事評価制度の意義は「人材育成と組織力向上」であることを評価者・被評価者に周知徹底することが前提です。その上で、以下の対策を講じます。
- ①評価者・被評価者ともに評価基準を明確にして共有する
- ②心理的な評価エラーを知り、公正な評価の仕方を学ぶ
- ③評価者は日頃から、部下の行動・特性を記録し評価資料を作っておく
- ④評価者が「評価は指導・育成のためのマネジメントである」と認識する
- ⑤評価者によるバラつきを防ぐため、評価の2段階制、評価者間のチェックなどを行う
- ⑥形式的な成績づけでなく、コミュニケーションを重視した評価面談を取り入れる
人事評価は、昇進や賞与のための査定だけでなく、経営戦略や人材育成に結びつく大切な機会です。心理的エラーによる不適切な評価がリスクにならないよう、制度の見直しや意義の再認識を迫られています。