モノやカネ、情報のマネジメントの領域と同様、人のマネジメントの領域でも20世紀末から21世紀初頭にかけてアメリカ型の仕組みを導入しようとする動きが多くみられました。しかし、その結果はどうだったでしょうか。先に結論を述べるならば、それらのアメリカン・システム導入へ向けた性急な動きは、ことごとく挫折してしまったのです。
日本的人事システムの先進性(3)
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.日本の企業では、アメリカ型の職務主義や成果主義がうまくいかなかった
2.日本ならではの人事制度をつくることが必要だった
3.マネジメントは、従業員の感情に配慮しばければうまく機能しない
- ■万能ではなかったアメリカ型システム
- 人のマネジメントの領域では、20世紀末から21世紀初頭にかけて、アメリカ型の職務主義や成果主義人事など、雇用流動型の仕組みを導入しようとする動きが多くみられました。しかし、それらのアメリカ型システム導入へ向けた性急な動きはことごとく挫折しています。
- ■職務主義?成果主義?
- 昨今の日本企業では、アメリカ型の職務主義の導入は難しいと認識され、職務を大括りに捉えて従業員との対応関係を柔軟に運用する「役割主義」人事が提唱されるようになりました。また、アメリカ型の成果主義の弊害が露呈するようになり、そこで人材育成と両立しうる「ポスト成果主義」のあり方が議論されるようになりました。
- ■メイド・イン・ジャパンはハイ・クオリティか?
- 製造現場では、短期的な経済的動機から働こうとする一部の非正規社員が増加したことで、ハイ・クオリティ製品の代名詞でもあったメイド・イン・ジャパンのイメージが崩れてきています。したがって、そこから、非正規社員をも含めた教育訓練体系や人材育成の仕組みを真剣に再考せざるを得ない段階にさしかかっていると言われています。
- ■コンテキストを考えた人事制度設計が重要!
- これらの現象から、日本企業において、特に人のマネジメントに関する側面に関しては、アメリカ型と全く同じ収斂化・同型化を性急に志向しようとしてもうまく機能しないということがいえます。異質な歴史・文化を有した二国の人事システムが、完全に同一形態へと収斂することなどあり得ません。日本には日本のコンテキストをふまえた人事システムが必要なのです。
- ■納得の得られるマネジメント
- 人のマネジメントは感情を有した生身の人間が対象となるため、管理者が意のままに操ることはできません。管理者は、生身の人の感情を勘案したうえでマネジメント活動に従事しなければならず、新しい人事システムの設計もこの点への配慮なくしてはうまく機能しないのです。いきなり新しい人事制度を導入したところで、その制度を利用する立場にある従業員を納得させることができなければ、その仕組みはうまく根付きません。1990年初頭、多くの日本企業で成果主義の導入がうまく機能しなかったのはこのためです。