社交的・物怖じしない・積極的に自分の考えを表現する・チームのムードメーカー......従来、リーダーとして活躍する多くはこのような外向型人材でした。一方、内向型の人は、上記に挙げたようなことがおおむね苦手です。自己アピールもしないため、真面目に取り組んでいるにもかかわらず貢献度がわかりづらく、評価されにくいということはないでしょうか。
目次
近年、多様性が求められ、組織のメンバーも様々な特性、経験、能力を持つ人々で構成されてきています。それに伴い、個々の力を引き出しながら活かしていく柔軟なリーダーシップ(サーバント・リーダーシップやインクルーシブリーダーシップ)が求められています。
中でも内向型の人材は、傾聴や綿密な準備を得意とするため、メンバーに対して忍耐強く接し、配慮ある指導ができるとして注目が集まっています。
また、強固な組織を築くためには、リーダー層の多様性が不可欠と言われています。均質性の高い組織に潜むリスクを回避するには、同じ考え方の意思決定者だけでなく、様々な意見を持つリーダーを増やすことが重要です。
異なるバックグラウンドや特性を持つ人々が管理職に就くと、問題解決や意思決定において多角的な視点を持つことができます。これにより、より創造的で柔軟な解決策が見つかり、新たな課題や環境に効果的に対応できる組織づくりへと繋がります。
多様なリーダーを育成するために、本日は、内向型人材だからこそとれるリーダーシップについて解説します。
「リーダー」という言葉からは「前向きでポジティブにチームを引っ張る」人物像を連想する人が多いのではないでしょうか。しかし、本質的にリーダーは、チームの目標を達成し、課題を解決する役割を指し、適したタイプが限定されているというわけではありません。
パス・ゴール理論
チームの目標達成や課題解決など、望ましい成果(GOAL)に到達するためには、状況(=環境的要因)とメンバーの能力(=メンバーの要因)が大きく影響します。そのなかで、リーダーの役割は、GOAL(成果)への最適な道筋(PATH)を示すことです。
本理論から考えると、その時の状況に応じて最適な道筋(PATH)を示して目標を達成することがリーダーの本分であり、そのための手段が外向的なのか、内向的なのかは関係ないということになります。
ここからは、内向型リーダーはどのような道筋(PATH)を示し、どのように活躍できるのか、リーダーシップの取り方について見ていきましょう。
チームが一丸となってGOAL(成果)を目指すためには、部下のパフォーマンスを引き出す組織づくりが必要です。内向型の資質を、GOAL(成果)やメンバーのモチベーション向上に結びつける方法は大きく分けて次の4点です。
これらを順に見ていきましょう。
(1) 思慮深いコミュニケーション能力
内向型の人は衝突を好まない傾向があるため、会議や交渉など、利害対立が生じやすい状況で、両者の意見を理解し、合意に導こうとする意欲を持っています。アサーティブコミュニケーションとは、相手を尊重し、自分の意見を適切に主張する手法ですが、内気リーダーはこのコミュニケーションスタイルに適しています。また、大勢の前で話すことよりも1対1で深く話をすることに長けており、面談などで部下の意見を注意深く聞いて、意見を引き出す能力があります。
内向型は準備を十分に行うことが多いため、情報を収集して冷静に話すことが可能です。傾聴のスキルを持ち、相手の考えを理解し、細やかな配慮を行うことができます。このように、アサーティブコミュニケーションと共感性によってメンバーの事情に配慮しながら意思疎通をおこない、信頼関係を築くことに力を発揮します。
(2) 心理的安全性の醸成
内向型の人は他人の意見を受け入れることが得意であり、相手の異変にも気づく能力を持つ場合が多いです。したがって、自身を含む全てのメンバーが安心して働ける環境を築くことに注力します。繊細なコミュニケーションスタイルを通じて、誰もが自分らしく発言できる場を提供し、創造性や主体性を引き出します。また、大きな声や音に敏感な内気リーダーも存在し、柔らかい口調でコミュニケーションを取ることで他者に安心感を提供します。このように、安心して意見を出し合える職場環境を整備し、心理的安全性を醸成していきます。
(3) リスク管理
リスクの予知と回避においては、内向型の注意深さを活かすことができます。
内向型の人は不安を感じやすい人が多く、計画に対して徹底的な検討を行います。周囲からは「考えすぎ」と指摘されても、自分が安心感を持てるまで一つ一つ確認し、不安要因を排除します。この特性はリスクマネジメントにおいて重要な資質です。リスクの最小化と効果的な課題解決に重要な役割を果たすことでしょう。
また、内向型の人は細部に気を配る傾向にあり、モラルや規律を尊重します。これは不正防止の観点からは強力な抑止力となります。メンバーや組織全体の行動が法律やルールに適合しているかを確認し、逸脱がないように努めるでしょう。
(4) 権限の委譲
内向型の人は自分の苦手なことをよく理解しています。より適していると判断した場合、他のメンバーに権限を委譲する柔軟性を持っています。こうした姿勢により、内気リーダーは個々の能力を最大限に引き出し、メンバー全体の成長とチームの協力関係を促進する素質があります。異なるタイプの人々がお互いの弱点をカバーし、強みを引き出し合うことで、多様性のある強固な組織を作り上げる手助けとなります。
内気リーダーは、こうした内向型ならではの特性を活かし、メンバーをまとめ上げ、チーム全体のパフォーマンスを上げてGOAL(成果)を目指します。
働く上で、給与や昇進よりも、生きがいや充実感を重視する人も増えています。部下の潜在的な能力を引き出すことに満足感を感じる内向型の人は少なくないでしょう。
内向型の人は、人の上に立つことや目立つことが苦手で、リーダーの役割を避ける傾向があります。しかし、成果を上げたり、能力を発揮したりしない場合、管理職であっても非管理職であっても、いずれは停滞感を感じます。これをキャリアプラトーと言います。キャリアを自己主導的に築くためには、組織に貢献するスキルを習得し、経験を積み、自ら停滞を克服する必要があります。
リーダーという役割を積極的に捉えてみましょう。リーダーや管理職になることで、より大きな視座で仕事に関わり、意思決定の機会を得ることができます。働き方を改善し、多様な人材が輝ける環境を作り上げることは管理職ならではの業務です。仕事への価値観を深く考える内向型の人にとって、大きな意義を持つことでしょう。
内気リーダーのポテンシャルを活かすことで、より包括的で柔軟なチーム文化を築く一端を担います。多様性が尊重される今、心遣いができるコミュニケーションスキルを持つリーダーシップが求められています。
一つ留意すべきことは、内向的な人々がストレスを溜め込んでしまうことです。他人の気持ちを気にしてエネルギーを使いすぎないよう、適切な方法を身につけましょう。リソースをどこに注ぐかの優先順位を付ける、リフレッシュする方法を見つけるなど自分なりのマネジメントが必要です。他にも、思考のクセを見直す、呼吸法や軽い運動で感情をコントロールするなど、自分の能力を最大限に発揮するためのセルフマネジメントスキルが助けになります。
内向的な個性を持つ人材が、「リーダー」として果たす役割とその価値について解説しました。
多様性が求められる現代において、内向的な人だけでなく、様々なタイプの人々が活躍できる環境を構築する必要があります。リーダー層に多様性があると、トップ層から一般従業員までの意識が高まり、多様性と包括性を尊重する組織文化が根付きやすくなります。様々なバックグラウンドや特性を持つ人々がリーダーのポジションに就くことで、組織全体がより健全な状態になっていきます。
マハトマ・ガンディーは、「優しく穏やかなやり方で、あなたは世界を揺り動かすことができる」と述べています。他者の意見を尊重し、深い洞察力を持ち、注意深く情報を整理する能力に優れてる内向的な人々。内気リーダーはその特性を生かし、チームメンバー全員が活躍できる環境を整備する役割を果たし、組織の成果や雰囲気に新たな価値をもたらすことでしょう。
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