リーダーシップのスキル強化ガイド~マネジメントやコミュニケーションとの関係

「リーダーシップ」とは、チームでの目標達成や課題解決に向き合う際に必要な「指導力・統率力」のことをいいます。チームの力を最大限に活かすリーダーシップを発揮するには、時代の傾向や組織のあり方などの状況をふまえて行動することが求められます。

本記事は、リーダーシップについて初めて学ぶ方や、苦手意識がある方へのガイドとして、また経験豊富なリーダーの再確認にも役立つものとして作成しました。リーダーシップを発揮する上で押さえておくべきスキル強化のポイントを分かりやすく解説します。ぜひご一読ください。

リーダーシップの本質とは何か

(1)リーダーシップはリーダーだけのものではない

リーダーシップという言葉は、時と場合によって様々な意味を持ちます。ある時は指導者としての地位や職務を表すこともありますし、人や組織を統率する機能を表現するものとして使われることもあります。「リーダー」という言葉がついているため、リーダーの立場にある人に求められるものだと考えがちですが、実は集団の中で仕事をするあらゆる人に求められ、発揮することが期待されるものです。

(2)リーダーシップのある人が持つ"背負っている感"

「リーダーシップのある人」からイメージされる姿とはどのようなものでしょうか。他のメンバーをグイグイと引っ張っていく姿でしょうか。嫌なことでも率先してやろうとする姿勢などを思い浮かべる人もいるでしょう。逆に、何でも人任せの人や、わがままを言って周りを困らせるような人からは、リーダーシップを感じにくいのではないでしょうか。リーダーシップのある人の言動には、強い責任感や使命感といったものが感じられます。それは、彼ら彼女らが全てのことに対して、いい意味での"背負っている感"を持って関わっているから、といえるでしょう。

リーダーシップが"秩序"と"動き"をもたらす

(1)「混沌」や「沈滞」に対する問題意識

では、そもそもなぜ、「リーダーシップのある人」は、まわりの人たちを統率したり、進んで面倒なことを引き受けようとするのでしょうか。それは、「問題意識の違い」ではないかと思われます。無秩序で混沌とした状態や、滞って不活性な状況を何とかしたい。そんな思いが強い人が、突き動かされるように、リーダーシップを執って行動するようになるのではないでしょうか。

(2)状況によって最適なリーダーシップのあり方は変わる

リーダーシップの発揮の仕方は、状況によって異なります。例えば、平時と変革期では、自身の役割の果たし方も、メンバーに対するアプローチの仕方も違ってきます。秩序を作り、メンバーのエネルギーを一つの方向に揃えていくことがリーダーシップにおける重要なテーマとなる場合もあれば、沈滞した状況に敢えて一石を投じ、変化を起こすことでメンバーの活性化を図ることが求められる場合もあるのです。

(3)様々なリーダーシップのスタイル

リーダーシップとは機能であり、またそれを発揮する人の心の持ち方でもあります。言い方を変えれば、リーダーシップが有効に発揮されるのであれば、そのスタイルは置かれた状況と自身のタイプに応じて変えてよい、ということでもあります。スタイルの違いが分かりやすい例として、「支配型のリーダーシップ」と「サーバント型のリーダーシップ」が挙げられます。前者は、リーダーに圧倒的なエネルギーがあり、リーダーの指示命令でメンバーを動かすスタイルです。後者は、メンバーが持つ力が発揮されることでチームの成果が上がるという前提で、リーダーがメンバーを支援するスタイルです。どちらが良い悪いという話ではなく、置かれた状況とリーダーのタイプの組み合わせによって、力が発揮されるスタイルは異なるということです。

▼リーダーシップの4類型

リーダーシップの4類型です。支配型(牽引型)リーダー、緻密型リーダー、サーバント型(奉仕型)リーダー、ビジョン型リーダーがあります

今の時代に求められるリーダーシップ

(1)大量生産時代のリーダーシップ

それでは、今の時代に求められるリーダーシップのあり方とはどのようなものでしょうか。それを考える前に、"一昔前"の時代状況において求められたリーダーシップについて考えてみたいと思います。1990年頃までの日本を取り巻く経済環境は、今から振り返れば変化は緩やかであり、比較的シンプルに業容を拡大することのできた時代だったといえます。また、その頃の職場の人材は今よりも画一的で、同じ方向に向かって活動させやすい状況にありました。そんな環境の中、この時代のリーダーシップとしては、指示命令を基本とした「支配型」のスタイルが成果を上げる上で有効に機能していました。

(2)VUCA時代のリーダーシップ

翻って、現代はビジネスを取り巻く環境が大きく変化しています。時代の特徴を表す「変動性(Volatility)」「不確実性(Uncertainty)」「複雑性(Complexity)」「曖昧性(Ambiguity)」のイニシャルを組み合わせて「VUCA時代」などと呼ばれています。このような時代では、リーダーが全てにおいて指示命令し、成果を上げていくことは不可能になります。多様なメンバー一人ひとりの持ち味を生かし、それぞれが持つ専門性を伸ばしながら成果につなげていくためには、「サーバント型」のスタイルの方が相性が良いといえるでしょう。

▼VUCA

VUCAとは、Volatility、Uncertainty、Complexity、Ambiguityの頭文字をとったものです

(3)企業活動のゴールが変わってきた

ゴールを目指してメンバーを動かしていく上では、そのゴールの置き方も大事な要素となってきます。かつては、「収益を上げること」こそが企業にとっての最重要ミッションであり、そこを目指してメンバーをモチベートすればよかったのですが、今の時代、そこだけを見て行動させようとすると、顧客からはもちろん、メンバーからの離反も招きかねません。ESGと略される「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(統治・ガバナンス)」などの観点から、長期的に持続可能な事業運営のためのバランスも考慮しつつ、収益の拡大を図ることをゴールとしなければならない時代となっているのです。

(4)危機に対応できる「強いリーダー」づくり

コロナ禍においては、「危険」、つまり多様なリスクについて考えるよりも、「恐怖」対策を中心に考えてしまう傾向にありました。例えば、重症化リスクの高い高齢者にも、そうでない層にも同じ対応をとるなど、多様なリスクに応じた対策を迅速に決断、実行できず、結果として混乱が大きく広がってしまいました。

このような「危機」に求められるのは、「主体的に動ける現場リーダー」と「スピード感を持って動けるリーダー」です。平時とは異なり、危機においてはトップからの指示を待ってから行動するのではなく、現場リーダーが刻々と状況が変化するなかで速やかに判断を下し、いち早く実行に移すことが求められます。

また、「危機の最中」「危機の直後」「危機後の新たな未来」の3段階において、それぞれ求められるリーダーシップは異なります。

危機の最中・直後、危機後の新たな未来

「危機の最中」においては、とにもかくにも「止血」することが肝要です。原理原則に沿って躊躇なく判断し、行動するリーダーシップが求められます。次に「危機の直後」においては「治癒」、つまり的確に問題を捉え、冷静に解決策を推し進めるリーダーシップが必要になります。最後に「危機後の新たな未来」においては「体質改善」、つまり新たな世界での生き方をビジョンとして示すリーダーシップが重要になります。

リーダーシップとマネジメント

(1)人を動かすための2つのアプローチ

チームの長としての"リーダー"には、「リーダーシップ」と「マネジメント」の2つのスキルが求められますが、この2つには、どのような違いがあるでしょうか。リーダーシップもマネジメントも、「人を動かす」という点では同じ機能を有しているといえます。現実的には、その両方を組み合わせて発揮することがほとんどかもしれません。マネジメントがどちらかというと、仕組みや制度を通じて人を動かすのに対し、リーダーシップは、目標に向かって相手を鼓舞することで人を動かすことといえます。別の言い方をすれば、前者は「頭脳」で人を動かし、後者は「人間力」で人を動かすといえるかもしれません。

(2)どちらのスキルも後天的に身につけられる

リーダーの立場に立つ者としては、基本的にはリーダーシップとマネジメントの両方を兼ね備えていることが理想ではありますが、人によってどちらかが得意だったり不得手だったりすることは当然あるでしょう。ただ、マネジメントスキルについては、その手法を学ぶことで、ある程度スキルが身につくイメージが沸くのですが、リーダーシップの方は、何となく先天的な要素に規定されてしまうように感じる人も多いのではないでしょうか。誤解しないでいただきたいのは、一般的なリーダーに求められるリーダーシップは、決してカリスマ性のような特殊な素質を指しているのではないということです。リーダーシップは、リーダーという自身の立場を正しく認識した時点で、ある程度は自然なふるまいとして現れてくるものです。あとは自分のタイプに合わせて、得意なアプローチの仕方を選び、磨いていけばよいのです。

リーダーシップの必須要件

リーダーシップの執り方については各々の個性によりますが、その一方で押さえておかなければならない必須要件といえるものがあります。

(1)当事者意識

まず、物事に当たる上での「当事者意識」です。「責任感」や「使命感」といったものにもつながる要素で、リーダーシップのバックボーンと位置付けられます。「自分がやらなきゃ誰がやる」という自負、「困難にぶち当たっても逃げない」という覚悟、「最後は自分の意思で決める」という決断力なども、この当事者意識をもとに生まれてくるものと考えられます。

(2)実行力

リーダーシップを発揮する上では、「熟考する」よりも、まず「行動する」ことが優先されます。行動に移すフットワークの軽さがリーダーシップにおけるダイナミズムの源泉となるのです。人にやらせる前に、まず自分でやってみる。自分が実践する姿を見せて、メンバーを感化させていく。そうしていくうちにメンバーも、指示命令の系統上、言うことを聞かなければならないから聞くのではなく、「あの人がやるというのだからきっとやれるのだろう」という信頼感でついていくのです。

(3)「チームでやる」意識

チームの目標を実現するにあたり、その目標をメンバーごとの個人目標に分解し、それぞれの達成状況を管理することで達成しようとすることは、どちらかと言うとマネジメント寄りの発想です。一方、リーダーシップは、目標をチームで達成することにこだわり、チームのためにどのような貢献ができるかをメンバーに求めます。リーダー自身は、メンバーをモチベートすることに意識を向け、自分自身がプレイヤーとして成果を上げることは後回しと考えます。

(4)パッション(情熱)

リーダーシップにはある種のパッション(情熱)が伴います。パッションは、その背後にリーダーの強い思いがあってこそ生まれるものであり、そのパッションを感じたメンバーは、理屈ではなく感化されて動かされることになります。理屈で人を動かそうとすると、理屈の範囲でしかメンバーは動いてくれませんが、パッションで人を動かす場合は、理屈を超えたパワーでメンバーは行動し、チームに貢献しようとします。メンバーに、損得や貸し借りの意識なく「無理をきいてもらえる」かどうかは、リーダーシップで仕事をさせることができているかどうかの試金石でもあります。

リーダーシップと相性のよい素質

一方で、リーダーシップを発揮するにあたり、備わっているとより有利な素質というものもあります。こうした素質を持ってないと、リーダーシップが発揮できないというわけではありませんが、意識することで身に付けられる要素も多分にあります。

(1)自己効力感が高い

自己効力感とは、何かの課題を前にした時に、自分にはそれをこなすことができるという自信や期待のことですが、この自己効力感の高さが、リーダーシップを執る上でもプラスに働くと言えます。自己効力感の高さは、何かを始めたいと思った時に実際に行動に移すかどうかを左右します。また、始めた後に行動を継続できるかどうか、困難に直面した際にそれに耐えられるかどうかにも影響を及ぼします。メンバーにとっても、「自分にはできる」という自信を感じさせるリーダーについていきたいと思うのは当然でしょう。

(2)フェアである

「正義感が強い」「誰に対しても公平である」「考え方に偏りがない」といった公明正大さは、リーダーシップに対するメンバーやまわりからの信頼につながります。また、リーダーという地位を「特権」として認識するのではなく、「誰よりも重い責任を負う立場」と理解していることの結果が、「自己犠牲」という行動で現れます。こういう行動がメンバーを感化させる上では重要であり、結果としてリーダーシップの機能を高めることになります。

(3)ポジティブである

リーダーが前向きな発言をすれば、メンバーの仕事に対する姿勢も前向きになります。一方で、愚痴ばかり言ったり、斜に構えた発言をするようなリーダーだと、メンバーはやる気を失い、心が離れていってしまいます。仕事に困難はつきものですが、次々と立ち現れる困難に対し、ポジティブに対処しようとするリーダーは、メンバーから見ると頼りがいを感じます。また、明るくユーモアがあり、遊び心があって好奇心旺盛なリーダーは、メンバーにとって「一緒に働きたい人」に思えるものです。

(4)成長を志向する

自分の中に限界を決めてしまうと、アグレッシブな目標の達成は叶いません。そのため、常に「前の自分を超える」ことが求められます。常に成長していたいと考える人は、自分に対して謙虚であり、守りに入ることを嫌います。こうした姿勢は、まわりのメンバーにとっても刺激となり、チーム全体に成長を志向する考え方が広がっていきます。

リーダーシップを発揮している人のコミュニケーション

リーダーシップを発揮している人は、普段メンバーと接する際に、ある特徴的な行動をとっています。「リーダーシップ」と「マネジメント力」の2つのスキルのうち、どうしてもマネジメント側に頼ってしまうリーダーは、こうした行動を真似してみることで、部下とのコミュニケーションの幅を広げられるかもしれません。

(1)人の話をちゃんと聴く

信頼されるリーダーは、相手の年齢や立場に関係なく、敬意をもってちゃんと聴こうとします。マナーの問題というよりも、人と対峙する時の姿勢が基本的に謙虚であり、少しでも何か役立つことが得られるのではないかと考えて耳を傾けるのです。また、あいづちを打ったり、表情豊かにリアクションを返したりして、話す相手を盛り上げることも忘れません。メンバーから「この人に話したい」と思われる人であることは、リーダーシップを発揮する上では大きなアドバンテージとなります。

(2)さりげなく気遣う

チームを見渡して、様子のおかしい人や、困っていそうな人はいないか、常に気を配っています。「何か困ったことがあれば言いなさい」といってもなかなか言いづらいことがわかっているので、雑談の中でさりげなく、「そういえば、あれってどうなった?」といった様子で、相手に構えさせずに訊き出したりしています。メンバーの本音を引き出す上で、偉そうな態度を取ることはマイナスに働くため、敢えてとぼけたキャラクターを演じたりすることもあります。

<参考>リーダーとして観察すること

リーダーとして観察すべきことは、正直さと真実、欲求と本音、障害、欠けているもの、メンバーに対する自分の反応です。

(3)弱さも晒せる

リーダーの仕事は長丁場です。その間、誰よりも有能であり続け、成果を上げ続けることなど現実的には不可能です。上手くいかないこともあるでしょうし、苦手とすることもあって当然です。時には弱音を吐く自分をメンバーに晒すことは、むしろリーダーの人間味として好意的に受け入れられるものです。逆にメンバーからの支援を得やすくなり、さらにチームワークが発揮されることさえあります。

(4)メンバーに期待を寄せる

リーダーシップの主要な役割として、「メンバーをモチベートすること」が挙げられますが、その具体的な行動の一つが、メンバーに対して「あなたに期待している」と伝えることです。もちろん、口先ではなく本気でそれを伝えることが大前提ですが、加えて、リーダーがメンバーそれぞれに対して、個別に目標を与えることが大切です。全員を同じ基準で評価することは、マネジメントの視点では必要な場面もありますが、リーダーシップの視点から見れば、「一人ひとりと個々に向き合うこと」が大事になります。

特性を知れば効果的なリーダーシップが分かる

(1)「リーダーに向いているか」ではなく「どんなリーダーになり得るか」

かつてのように、固定的な組織運営が中心だった頃からすると、時代は変わってきています。現代ではプロジェクト単位で組織が組まれることが増えており、多くのビジネスパーソンにとって、リーダーとしての役割を担う機会も増えているといえます。また、多様なリーダーのあり方が歓迎されている今の時代においては、「自分がリーダーに向いているかどうか」を考えるよりも、「自分はどんなリーダーを目指せばいいか」を考える方が建設的です。その一助となるのが、自らを見つめ直し、自身の「適正」ではなく「特性」を知ることです。

(2)特性を捉えてモチベーションアップを図る

リーダーシップが機能を発揮するためには、「一人ひとりと個々に向き合うこと」がポイントとなります。そこで大事なのが、メンバー一人ひとりを「個性を持った異なる人間」として認識することです。一人ひとりが違うということは分かっていても、どんな要素がどう違うのかが分からなければ、効果的なアプローチが取れません。部下の「特性」を可視化した「診断カルテ」のようなものがあれば、その部下のモチベーションアップの傾向が分かり、リーダーシップ発揮における強力な武器となり得るでしょう。

<最後に>

リーダーシップを発揮するために必要なのは、何よりも「行動」することです。時代や状況、自身やメンバーの特性に合わせて、チームの力を最大限に活かすために自分は何ができるのか、考え抜いて実行することこそが重要です。

職場での具体的な実践に、本記事を少しでもお役立ていただければ幸いです。

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