今回は、新人社員3名それぞれがお気に入りに選んだ、『銀子の一筆』3つの名作についての感想や質問を銀子さん本人にぶつけ、記事を深堀りしていく内容をお届けします。
◆対談者
銀子(70代古稀ライター)以下:銀子
小林(WEB制作責任者)以下:小林
新人A:
新人G:
新人T:
◆予断を持たない、ということ
新人A:
私は、「傾聴は人のためならず」という記事を選ばせていただきました。
なぜこの記事を選んだのかと申しますと、コロナ禍において人と直接話をすることが少なくなっていて、 自分自身コミュニケーションの仕方に不安があります。これから営業としての仕事も始まっていくので営業の大切なスキルでもある傾聴に関して書かれたこの記事に興味をもって選びました。
この記事を読んで、傾聴することで相手が自分に心を開いてくれるようになって、相手の時間も濃密にして、自分の時間も結果的に充実させられる、ということがとても勉強になりまして、これからの自分の教訓にしていきたいです。
特にこの記事の
"通常、クライエント役は、適切なうなづき・真摯な視線・穏やかな共感などを得ると、落ち着いて自発的に話がしやすい。逆に、チラッと時計に視線を移すなど、相手のちょっとした行動で気持ちが波立ち、話そうとする意欲を一瞬で奪われてしまう。"
という部分を読んで、自分の行動で人が心を開いてくれたり、逆に無意識な行動一つで心を閉ざしてしまったりということを常に頭にいれながらコミュニケーションをとらなければいけないな、と感じました。記事には傾聴の訓練をされていた、とありましたが、実際に傾聴の訓練をする中で銀子さんが一番大切だと思ったことはどのようなことか教えていただけますでしょうか。
銀子:
予断を持たないことが大事です。医学的な臨床としての傾聴と、営業などのビジネススキルとしての傾聴はちょっと違うと思うのですけれども。
どうしても予断というか、アンコンシャスバイアスというか、「だろう」判断が入ると思うんですね。でも本当はなにも思わないほうがいいと思うんです。 逆に多少はもってないとお客さまに失礼というのがあって、そこが難しいかなと思います。私は今の仕事でお客さまと直接お話しすることがないので、わかったようなことはいえないんですが。
でも同じフロアで仕事をしている先輩たちにも、やっぱりちょっと予断をもってしまうんですよね。そうじゃなくて、何を言うかわからないという立場で即座に対応するというのはすごく難しいんです。
でも予断はもたず、知ったかぶりするより、わからないことはわからない、と言うようにしています。教えていただくことから話が始まれば、それはそれでいいと思っています。
小林:
営業でも、商談の最初は緊張感があるので、それを解きほぐすために傾聴は重要です。
相手の話すことについてしっかりあいづち・うなずきをすることで、自分が相手に関心があり、心からお話を聴いていることを相手に示します。また、先ほど予断という話が出ましたが、営業でもあまり相手のことを調べすぎたり、行く前に話す内容のストーリーを考えすぎると、当日その場での柔軟性が欠けてしまうことがあります。
準備としていろいろお客さんのことを知ることは重要ですが、いったん本番になったら、調べてきたことをいったん脇において、目の前のお客さまとの対話に集中するというくらいの感覚がいいのかな、と思いますね。 ところで銀子さん、傾聴は専門的なところで訓練されていたのですか?
銀子:
臨床心理学の先生を紹介していただいて、その勉強会に入ったんですが、私はカウンセラーになるためじゃありませんでした。
私は当時、読み書きに困難を抱える人のサポート「読み書き情報支援員」の有償ボランティアをしていて、視覚障がい者や学習障がい者の本音を引き出すのに度々もどかしい思いをしていました。インタビューをするにも、そういうスキルがあったほうがいい、と思いました。
なかなか身につかないんですけれどね。勉強会の先生も家族からはそういう仕事なのに家族の話は全然聞かないと責められると言っていました。
身につかないかもしれないけれど、まったく知らないよりはいいだろうと勉強しました。
小林:
傾聴の勉強会にはどのくらい通われてたんですか?
銀子:
ゼミの形式で、1年半から2年くらい行ってたのかなあ。一か月に1回とか多くて2回とか。不定期に先生が決めました。その活動の中で、予断を持たないということが大切だとわかりました。今小林さんがおっしゃったように、調べるけれど現場にいったらゼロになって、耳を傾けることが大事だと理解しています。なかなかできないんですが。
小林:
なかなかできませんよね。
◆銀子の仕事の流儀に迫る!
新人G:
私は「スージーのハッピー&ヘルシーな仕事」という記事を選ばせていただきました。
この記事の、
"スージー、どうして働くの?
「働くのは普通のこと。私は働くのが好きだし、この仕事が楽しいの。働けること自体、ハッピーじゃない?ヘルシーでもあるわ」"
という部分に共感したので選ばせていただきました。
今までは仕事ではないんですけど、自分の所属があったりしてその場所で自分の力を発揮して、みとめていただくこととか、そういう自立していることで、成長してきたなあと思うことがありました。
それが就職活動にも生きて、人が生き生き働くとか、力を発揮できる環境をつくるのに携わりたいと思って、この業界に入ったんですけど。「働けること自体、ハッピーじゃない?」という言葉がすごく印象的で。わたしも現代のスージーになりたいと思っています。
ご自身は、
"40年前、女性が積極的に社会と関わろうとすると、あからさまな「~のくせに」「~なのに」「~にしては」という反応に出会った。"
とあるように、女性が働くことはあまり主流ではないような時代を生きてらっしゃったということですが、そういう意見に囲まれた中でもお仕事をつづけていらっしゃったのは、自分の軸とかがないとできないことだったんではないかなと思いました。
銀子さんが働くうえで大事にしていることだったり、譲らないと決めていること、
そういったことがありましたらぜひ教えていただきたいなと思います。
銀子:
自分の戒めにしていることは「できない約束はしない、した約束は守る」という単純なものです。
ずっとフリーで働いてきていたので、約束を守らないと明日がない状態だから、そうなってしまったのだと思うのですが。それは組織の中にいても同じことだと思うんですね。
「内々だから約束は守らなくてもいいや」とやっていると、知らない間にその人のアイデンティティはどんどん実際よりも下がってしまうんじゃないかと。約束を守れなくなったときは、すぐに理由と対処、代案を出さないとね。実害がなくても「あの人はそういう(あてにならない)人だから」と、見えないところで信用を無くしていくことが怖いなあと私は思っています。
新人G:
ありがとうございます。銀子さんはすごく楽しく仕事されてて、僕もそうなんですけど、なんかモットーとかありますか?
銀子:
楽しいんですよ、別に努力しなくても。読み書きは好きな仕事ですから。多少不得手なことだって勉強して、それでもわからなければ教えてもらって。
そういうこと自体がどんどん楽しくなるので、つらいとか嫌な仕事をさせられている、などと受け身になって思うことはありません。仕事にもよるでしょうが、「人は理解していないところから始まって、どのようにして理解できるようになるか」のサンプルだと、自分のことを見ています。知らないことを知ることは面白いです。言い換えれば、「不出来で、すみません」なんですけれど。
小林:
我々も理念が「働くを楽しく」ということでやらせていただいてますけど。採用面談していたときは、就活生に「御社に来たら楽しめますか?」と聞かれたときに、仕事はお金をいただいてやることなのでそれ自体が楽しいということはあんまりないですが、「楽しむように自分から向いていかないと」と答えていましたがその気持ちですかね。
何事もたのしく、やらされ感のないようにとおっしゃっていましたが、僕もそうで、できるだけ一生懸命やって楽しくなるようにしています。
銀子:
おもしろがってないと効率が悪いですよね。
小林:
あんまりおもしろがっていると余計な事しちゃいますけどね。
あと記事には、"約40年前、2週間のアラスカ取材に行った私は、旅の間中同じホテルに滞在した。ホテルで私の部屋を担当するルームメイド、スージーは健康的で快活、若くて明るい働き者だった。"
とありましたが、結構海外に取材行かれてたんですか?
銀子:
仕事で海外に行ったのはそれが最初で最後です。日本だと三周くらいは各県周っています。
小林:
どういう先にいかれていたんですか?
銀子:
その時はお役所の機関紙だったので、まんべんなく回っていました。
行先は経営者だったり生産者だったりしましたし、並行して県出身の著名人にインタビューにいったり。文化人ですね、主に。
自分で原稿書いてくださるかたもいますし、書いてくれという方もいますし、人によってはゴーストライターのような、自分が書いたかのように書いてくれとか、いろいろな注文があったので勉強になって楽しかったです。
◆「自分事」で考える
新人T:
私は「自覚なき思い上がり」の記事に対してインタビューをさせていただきます。 この記事を選んだ理由としてはまず、タイトルをみてドキッとしたというのがあります。
"他人に善行を行おうとして、ちょっと浮かれた雰囲気だったのだ。私は自分の思いあがった浅薄さに恥じ入った。"
と、ありましたが、銀子さんが経験されたこと痛いほどわかりましたし、最近も東日本大震災の被災地に大量に千羽鶴が送られていて処理に困るってことがあったりして。
この怖いところってすべてひとびとの善意に起因してるってことなんですよね。善意があって自分が動いたってことが原因で相手にそういう思いをさせてしまうということで、難しい問題だなと思いました。
私自身は自分が恵まれて育った自信がありまして、なにか社会に還元したいという気持ちはずっと持ち続けているんですけど、そうすると自分が一段高いところにいると勘違いしてしまうのではないかと思います。
"私はもちろん、人はだれでもつい、うっかり調子に乗って浅はかなことをしてしまう。 行儀の悪い失敗は数知れない。しかしこの時の経験ばかりは忘れないし、忘れてはいけないと思っている。"
とありまして、そういうことって日々の暮らしでもあると思うんですけどこういう自覚なき思い上がり自覚したとき、それを修正するためにどういうことを心掛けてらっしゃるかなと。私自身勉強させていただきたくて、ご質問させてください。
銀子:
私が記事に書いていることは私が出来ることではなくて私がそうしたいことを書いているので私が何か言えるような立場ではないんですけど。人に何かしてもらうときより、して差し上げるときのほうが難しいなと私は思ってるんですね。
自覚してないのだけど心のどこかでやってあげる、みたいな気持ちを、もしも相手に感じさせてしまったら、やったことが何にもならないと思うんです。
偽善ではない、嘘ではないんだけど、多分いつもの私よりいい人になったりするんですよね。そういうのも敏感に感じ取られるんじゃないかと思うと、こわいです。
でも受け手にどう感じられるか、わからないと考えていたほうが間違いがないと思います。
自分はいい人なので絶対相手に通じる、なんて思っていたら大間違いだと私は思っています。
小林:
いやー。難しいですね。
身近なところだと土産物とか渡すとき僕はすごいこだわるんですよ。渡されるほうが困らないものにしなきゃいけないとか。
買ってくればいいって人結構いるんですよね。身近な例で恐縮ですが。お土産とかもらうほうも実際に嫌だったりしますよね。
僕もそのタイプなので、わかってるのでそういう風にしないようにしているんですが。自分がされて嫌なことはしないようにっていうところはありますよね。
銀子:
仕事の面でも相手が偉いと必要以上に怖気づいたり、緊張したり、っていうことあると思うんですけど、なるべくいつも同じ人でいたほうが本当はいいですよね、こういうことは何年生きていても難しいのですが。
小林:
長く働いてこられた銀子さんがいうと深みがありますね。一つ思ったのは、銀子さんの先生のおっしゃった
"災難に見舞われた方に、 恵むという気持ちは失礼です。"
という言葉、非常に重いなと思いまして。東京ドームの近くに小石川養生所ってあるじゃないですか、あれってもともとは施薬院って名前を付けようとしたんですけど、その時に施薬だと施しなので上から助けてやろうって感じだからダメだって言った人がいて、養生所という名前になったという話をききました。
銀子:
昔の人がそういう風に考えてたのがすごいですよね。
◆あとがき
今回は、私新人A含む新人3名がインソース最高齢ライター銀子さんのお話を伺った。 銀子さんは「70代ライター」ということだが、自分の同世代の人々よりもむしろパワフルだと感じるほど、まさに「矍鑠たる」という言葉がぴったりな方だった。新人一同が「銀子の一筆」のお気に入りの記事についての深堀をする企画であったが、共通して「ありのままを受け入れる」ということについて考えさせられる対談となった。長い間働いてきた銀子さんでも「難しい」ということだが、私も「予断を持たず人とかかわり、わからないこと自体も楽しむ」という銀子さんのモットーを胸に、ありのままを受け入れられるよう励んでまいりたい。
新人A
◆WEB制作責任者より
小林です。最後までお読みいただき、ありがとうございます。この座談会は私が企画しました。新入社員3名が、自分と違う年齢、立場の人間と話をすることで、視野、視座を高めたり、また話の内容を受け止め、咀嚼し、自分なりのアウトプットを出すことが、今後、仕事をしていく上の基礎として活きるのではというねらいで行いましたが、一定の効果があったのではと自負しています。今後も、インソース、また新入社員3名を皆さんの温かい目で見守っていただければと思います。宜しくお願いいたします。
小林(WEB制作責任者)