「メール」によるクレーム対応は、文面の"読解力"が最も重要となります。
そして、メールの文面を読み取るポイントは3つ。
・苦情のお申立て内容(6W3H)
・お客さまの感情(お客さまにとっての事態の重要度・緊急度)
・お客さまのご要望・ご要求内容
本日は、先週ご紹介したお客様とのやりとりメールの解説をご紹介します。
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【先週のワーク】
以下の文章をお客さま(山田さま)の立場で読んでください。
あなたならどう感じるでしょうか?
■お客さま(1)
先週、貴社WeBより「☆☆☆」をクレジットカードにて購入した山田と申します。
インターネット申し込みの「備考欄」にも念のため「宛先空欄か会社名(インソース商事)で領収書希望」と入力したのですが、商品には何も同封されておりませんでした。経理締めの関係で領収書が至急必要なのですが、別送されるのでしょうか?恐縮ですが、いつごろ到着予定かお知らせください。よろしくお願いします。
□B社より(1)
山田さま
B社にお問い合わせいただきありがとうございます。領収書の発行に関するお問い合わせですが、お支払方法にクレジットカードをご選択いただいている場合には、商品に同梱しております納品書兼領収書が、当サイトにて発行しております領収書となります。納品書兼領収書には、ご請求先、お届け先、ご注文日、商品名、お支払方法、単価、合計金額が記載されておりますので、恐れいりますがこちらをご利用くださいますようお願い申し上げます。なお、別形式での領収書の再発行は一切承っておりませんのでご了承ください。ご不明な点がございましたら、ご遠慮なくお問い合わせください。
■お客さまより(2)
だから、商品以外は何も入っていなかったんですよ。納品書兼領収書のことは先に全部読んで知っていました。それでいいので、早く送ってください。お願いします。
□B社より(2)
山田さま
このたびは、ご注文商品に納品書兼領収書が同梱されていなかったとのことで、大変ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。通常は領収書の再発行は承っておりませんが、今回はお受け取りいただいていないとのことでございますので、領収書の発行手続きを開始させていただきます。
手続き完了のお知らせにつきましては、領収書の郵送をもってかえさせていただきます。また領収書のお届けにはお時間をいただくことがございますが、手続きが完了しだい順次郵送させていただきますので、ご理解くださいますようお願いいたします。
■お客さまより(3)
通常は領収書の再発行は承っておりませんが、今回はお受け取りいただいていないとのことでございますので、領収書の発行手続きを開始させていただきます。
一言多いのではないですか?もともと入っていなくて困っていると言っているではないですか?急いでるっていってるじゃないですか?
□B社より(3)
このたびは、お客さまに大変ご迷惑をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。また、前回の返答に失礼がございましたことを、重ねてお詫び申し上げます。
お客さまの領収書につきましては、前担当者より発行の手続きをさせていただきました。領収書発行手続き完了のお知らせにつきましては、領収書の発行をもってかえさせていただきます。また領収書のお届けにはお時間をいただく場合がございますが、手続きが終了しだい順次郵送させていただきますので、ご理解くださいますようお願いいたします。
万一、数日お待ちいただきましてもとどかない場合には、誠にお手数ではございますが、再度ご連絡いただけるようお願い申し上げます。
■お客さまより(4)
領収書、本日到着しました。が、「会社宛」とお願いしたのにもかかわらず「山田 宛」での領収書でした。至急空欄か会社名義で再送付してください。メールのやり取りに使った時間を返してください。きわめて遺憾です。責任者の方からしかるべき回答を頂戴したいものです。
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【解説】
前回のケースを解説しますと、お客様が苦情をお申し立てになっている背景、お客様の感情(お客さまにとっての事態の重要度・緊急度)を「読み取る」ことを怠り、マニュアルどおりの対応をしてしまったことが、一番の失敗だったといえるでしょう。
まずは、お困りの内容の事実確認不足です。
お客様がお困りになっているのは、「領収書希望」と書いていたのに商品に「何も」同梱されていなかったことです。お客様はそのことをメールに明記していたにも関わらず、B社は「同梱されている納品書が領収書も兼ねています」というような主旨の返信をしています。おそらく「領収書がない」というお問い合わせがこの会社では多いのでしょう。いつもの感覚で、お客様のメールを深く読み取ることなく、「領収書がないと言っているお客様はたいてい納品書が領収書も兼ねていることを知らずにお問い合わせをしてきているのだ」という勝手な思い込みで返信したのだと思われます。お客様からの苦情のメールにこのように安易な思い込みで対応するのは厳禁です。
次に問題なのは、お客様がなぜそんなにお困りなのかという背景の読み取り不足です。このお客様は急いでいらっしゃいます。お客様の最初のメールをよく読めば、領収書が早く到着しなければ、会社の経理締め日に間に合わないかもしれず、経費が請求できないかもしれない、というご事情が見てとれます。
にも関わらず、B社の2回目の返信では、謝罪の言葉も添えずに「領収書のお届けにはお時間をいただくことがございますが、~ご理解くださいますようお願いいたします」と事務的に自社のルールを述べているだけです。この場合、本来であれば、少しでも早くお客様に領収書をお届けできるよう努力すべきですし、どうしても不可能なのであれば、その事情を申し上げて謝罪の言葉を添えるべきです。
また、全体を通して、マニュアルどおりの言葉を熟慮せずそのまま書いてしまっている点も問題です。たとえば、B社の2回目の返信における、「別形式での領収書の再発行は一切承っておりませんので~・・・」という一文もおそらくマニュアルに従って書いたものだと思われますが、苦情の内容を読み間違えられたうえに、余計な注意まで促されては、お客様のお気持ちを逆撫でしてしまうことになりかねません。お客様からの3回目のメールでもご指摘を受けてしまっています。
最終的に領収書はお客様のお手元に届いたものの、お客様のご希望される内容とは異なるものでした。
このメールのやり取りのあとにそんな結果になれば、お客様のお怒りが最大限に高まってしまったとしても仕方ありません。
このように、顔の見えないメールでのやり取りであるからこそ、受け手は最大限の注意を払ってお客様の背景・感情を読み取り、細心の注意を払ってお客様への心遣いを示した返信をする必要があるのです。
☆来週もお楽しみに!