クレームは決してなくなりません。これはあらゆる業界を通じて共通しています。日常的に発生するクレームの多くは、一定の手順を覚え、お客さまの心情を理解し、冷静に対応すれば、必要以上にあわてる必要のないものです。それどころかしっかりしたクレームの「作法」を身につければ、クレームを自分の味方にすることもできます。
今回の改訂では、「お客さまとの円滑なコミュニケーションの方法」や、みなさまからのご質問の多い「激しく正当性を主張されるお客さまへのクレーム対応」「クレームeメール対応」を新たに追加しました。
前回の読者の方にも、初めて本書を手にされる方にも、新しい気づきを得ていただけることと思います。この出版を記念いたしまして、その本の一部をメルマガにてご紹介いたします。
■「お詫び」のあとでお話を促す
お客さまの話を聞くとは、「態度」「表情」「声」を使って、お客さまの困っている状況に対して、「共感」を全身で伝えることにほかなりません。
お客さま
「○○について聞こうとしたら、窓口の人の対応がすごく悪くて、露骨に嫌な顔をされたんですけど......」
応対者
「さようでございますか。当店をせっかくご利用いただいたにもかかわらず、誠に申し訳ございません。どのような状況でございましたか?恐縮ですが、教えていただけますでしょうか?」
このように、「お詫び」のあと、お客さまの話を促して、全身を使って聞くのが対応として適切です。細かいニュアンスで表現すれば、「聞く」ではなく「聴く」。事務的ではなく、心で「聴く」ことが求められます。
■「聞き役」ではなく「話させ役」になる
お客さまの話は、最低でも、「3分間」は聞くようにしましょう。お客さまは、何が起きて、どんなふうに困っているかを話したがっているからです。
クレームを受ける側にとっては小さなことと感じられるかもしれませんが、お客さまにとっては「大きな」「大切な」ことです。ですから、お客さまの気が済むまで話を聞くことが必要。ただし、ここでは、「聞き役」というより、「話させ役」に徹することがポイントです。
お客さまの話を聞いている時間は、長く感じられるものです。しかし、お客さまの最初の話は、ほとんどの場合、3分以内には終わってしまいます。少し我慢して聞いてください。そうすると、話しているうちにお客さまの頭の中もだんだん整理されて、徐々に気持ちが晴れてきます。お客さまのお話を聞くことのゴールは、「お客さまとの信頼関係をつくること」です。お客さまとの信頼関係が生まれると、最小限の時間での解決が実現できます。
■「相づち」「うなずき」「復唱」がポイント
相手に「きちんと伝わっているな」と感じると、お客さまの怒りはしずまります。そのためにも、お客さまへの共感を、お客さまが見て、聞いて、しっかりわかるように対応することが重要です。
「聞く」ときのポイントは、「はい」「よくわかります」「ごもっともです」などと言って「相づち」を打つこと、「うなずき」と「復唱」です。ただし、うなずきすぎは逆効果になるので、話の40~50%ぐらいにしましょう。
「復唱」は、お客さまの言葉の一部(キーワードになる言葉)をそのまま投げ返すことで、お客さまに同調や共感の心情を表す意味があります。たとえば、お客さまが「○○が××なんだけれど」とおっしゃったときに、「○○が××なのでございますね」と答えると、お客さまは自分の話を理解してもらえているとわかり、心が落ち着いてきます。
☆次回もお楽しみに。