クレームは決してなくなりません。これはあらゆる業界を通じて共通しています。日常的に発生するクレームの多くは、一定の手順を覚え、お客さまの心情を理解し、冷静に対応すれば、必要以上にあわてることのないものばかりです。それどころかしっかりしたクレームの「作法」を身につければ、クレームを自分の味方にすることもできます。
◇
「クレーム対応の基本がしっかり身につく本」<改定版>今回の改訂では、「お客さまとの円滑なコミュニケーションの方法」や、皆さまからのご質問の多い「激しく正当性を主張されるお客さまへのクレーム対応」「クレームeメール対応」を新たに追加しました。
以前からの読者の方にも、初めて本書を手にされる方にも、新しい気づきを得ていただけることと思います。
この出版を記念いたしまして、ここでは、その内容の一部をご紹介します。
■きれいに「頭を下げて」お詫びを伝える
気持ちのこもった「お詫び」ができるかどうかは、きわめて重要です。相手の心情を汲み取り、申し訳ない気持ちを「頭を下げて」あらわします。具体的には、以下の点に注意して頭を下げます。
(1)当方のミスやお客さまのご要望に応えられないことを
心から申し訳ないと思い、頭を下げる
(2)「誠に申し訳ございません」と静かな口調で申し上げ、
同時に深々と頭を下げる
相手に自分の「つむじ」が見えるくらい頭を下げます。
おじぎの角度は45度。「最敬礼」です。
背筋をピンと伸ばし、腰から上を折り曲げます。
(3)誠意を込めて頭を下げ続ける
心の中で「申し訳ございません」を最低3回は唱えましょう。
■「言葉の緩衝材」を使って気持ちを和らげる
事実や状況に配慮した「言葉の緩衝材」を使うテクニックもあります。
「お手をわずらわせまして、申し訳ございませんでした」
「ご不快な思いをさせてしまいまして、申し訳ございませんでした」
というように、相手への心づかいをあらわす言葉をお客さまにおかけすることでお客さまのお怒りを受け止め、冷静になっていただくことができます。お客さまに、「この人はわかってくれる人だ」「理解されている」という感情が生まれると、それがスムーズなクレーム対応につながります。相づち、うなづき、復唱なども、「言葉の緩衝材」と同様の効果があります。
■「ジャブ」を繰り出して言い分を伝える
クレーム対応の上手な方は、激怒するお客さまの声を真剣に聞きながら、少しずつ、事実やこちらの言い分を伝え、お客さまの頭の中に、こちらの主張を積み上げていきます。叱られても、怒られても、あたかもボクシングのジャブを打つかのように、小出しにこちらの言い分事実を伝えていきます。
お客さま「この商品がすぐ手に入らないとはどういうことだ!」
応対者 「(しっかりお話を聞いたあとで)お怒りはごもっともでございます。実は、この商品は在庫を切らせておりまして・・・」
お客さま「そんなことは聞いていない! 明日から仕事ができないじゃないか!どうしてくれるんだ!」
応対者 「大変お困りのこととお察しします。全国の支社や物流倉庫に確認を取りましたが、もうどこにもございません」
お客さま「それじゃあ、困る。何とかしてくれ!」
応対者 「申し訳ございません。お取り寄せに1週間はかかります」
お客さま「どうしようもないんだな・・・。それではしかたがない」
冷静になったお客さまのお話を詳しくお聞きして、具体的な対応策を考えていきます。
・。.・。.・。.・。.・。.・。.・。.・。.・。.・。.・・。.・