クレームは決してなくなりません。これはあらゆる業界を通じて共通しています。日常的に発生するクレームの多くは、一定の手順を覚え、お客さまの心情を理解し、冷静に対応すれば、必要以上にあわてる必要のないものです。それどころかしっかりしたクレームの「作法」を身につければ、クレームを自分の味方にすることもできます。
◇9/17出版
「クレーム対応の基本がしっかり身につく本」<改定版>今回の改訂では、「お客さまとの円滑なコミュニケーションの方法」や、みなさまからのご質問の多い「激しく正当性を主張されるお客さまへのクレーム対応」「クレームeメール対応」を新たに追加しました。
前回の読者の方にも、初めて本書を手にされる方にも、新しい気づきを得ていただけることと思います。この出版を記念いたしまして、その本の一部をメルマガにてご紹介いたします。
■20~30分を目安にバトンタッチ
クレームを受けたら、できる範囲の対応は自分で行い、安易に上司や先輩に丸投げしたり、バトンタッチしないようにしましょう。クレーム対応をうまくこなすと、それが自信になり自分の成長にもつながります。
ただし、自分である程度対応しても、一向に解決の糸口が見いだせない場合は、上司や経験豊富な人に代わります。
交代の目安は会社や仕事内容によっても違いますが、20~30分ほど対応してもダメな場合は代わるというように、時間を基準とするのがよいでしょう。あるいはクレームの内容で代わる場合もあります。
業務知識もあり経験豊富な人が対応するとお客さまも安心ですし、時間コストの節約にもなります。
また、立場が上の社員に代わることで、
「立場が上の人がお詫びしてくれた」
「ベテランの人に言ってダメなら、本当にどうしようもないようだ」
「少しでも力のある人に言うことができた。しかたない、あきらめよう」
というように、お客さまにクレームをおさめる「理由」が生まれ、怒りをしずめていただけることにもなります。
■二次対応者に「引き継ぎメモ」を渡す
クレームをほかの人に引き継ぐ際は、お客さまからのクレーム内容をメモに残して二次対応者に渡し、お客さまに2度、3度と同じことを聞くことがないようにしましょう。二次対応者が同じことを言ったら「何度同じこと言わせるんだ!」ということになって、クレームが大きくなってしまいます。
二次対応者はお客さまとのやり取りを聞きながら一次対応者の書いたメモを読み込んでおきます。それでもよくわからなければ、一次対応者に短時間事情を聞いて応対を代わるようにします。
■対応で困っている人をバックアップする
ほかの人がクレーム対応をしているときには、「私じゃなくてよかった」とひとごとのように思ってはいけません。クレームは特定の個人に向けられたものではなく、会社全体に向けられたもの。誰もが会社の一員として無関係ではありません。
クレーム対応で困っている人がいたら、資料を用意したり、クレームの類例を調べたりするなど、積極的に協力することが必要です。クレーム応対者を孤立させないようにしましょう。
周りの応援を頼みたいときの合図を決めておくのも手です。クレームの電話がかかってきたとき、参照したい資料があるときには手をあげるなどのルールを決めておくと協力体制が作りやすいです。
クレームを一人に押しつけると、当事者がクレームを一身に背負い込んで、精神的に追い込まれたり、モラルダウンを引き起こしたりして、ほかの仕事に支障が出ることもあります。現在、「心」の問題が深刻化していますが、クレームによるメンタル面への影響に十分に配慮しましょう。