クレームは決してなくなりません。これはあらゆる業界を通じて共通しています。日常的に発生するクレームの多くは、一定の手順を覚え、お客さまの心情を理解し、冷静に対応すれば、必要以上にあわてる必要のないものです。それどころかしっかりしたクレームの「作法」を身につければ、クレームを自分の味方にすることもできます。
今回の改訂では、「お客さまとの円滑なコミュニケーションの方法」や、みなさまからのご質問の多い「激しく正当性を主張されるお客さまへのクレーム対応」「クレームeメール対応」を新たに追加しました。
前回の読者の方にも、初めて本書を手にされる方にも、新しい気づきを得ていただけることと思います。この出版を記念いたしまして、今週もその本の一部をメルマガにてご紹介いたします。
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●事例● お客さまが感情的で話し合いができないケース
当社で管理しているマンションの住人の方から、「自室の上階から毎晩遅い時間に足音がして眠れない」とお電話がありました。ご自分がどれだけ迷惑しているかを一方的にまくし立てられ、当社が派遣している管理人がいかに不誠実であるかにも話が及び、話し合うことができません〈マンション管理会社〉。
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■3分間、相手の話を真剣に聞く
お怒りやご不満が大きい場合、一方的に激しい口調でお怒りの言葉を吐き出される方がいます。こういう場合、お客さまは興奮して感情的になっている状態ですので、お客さまの心の内にあるものをすべて出し切っていただきます。
ひたすら話を聞くといっても、お怒りの言葉は普通、3分と続きません。3分間我慢してください。途中でお客さまの言葉をさえぎると、気分を害されてさらにお怒りが激しくなり、余計に長く話を聞くことになります。
お客さまのお話を聞いている間は、決して否定的な言葉を使わないで、話の合間に肯定的な相づちを打って共感を示し、「話を聞いている」「理解している」という気持ちを示しましょう。
■お客さまに落ち着いてもらうのが先決
お客さまが言いたいことを言い終えたら、「何が起きたのか」「そのことでお客さまがどんなお気持ちになったか」を十分理解したことを伝え、あらためて心情理解の言葉をかけます。
「どうしてくれるんだ!」「なんでこうなったんだ!」と、お客さまが感情的になっている状態では、どんな説明も提案も受け入れてはもらえません。言い訳に聞こえて、お客さまがさらにお怒りを深めるだけです。
クレームの解決に向けて話を進めるのは、お客さまが冷静になり、応対者とお客さまとの間にそれなりの人間関係(信頼関係)ができたあとです。
■話の間に少しずつ主張を入れていく
3分間、お客さまの話を聞いたら、少しずつ「ジャブ」を打っていくのも、テクニックの一つです
「ジャブ」とは、事実やこちら側の主張を少しだけ、伝えること。それでお客さまはまた怒り出すかもしれませんが、それにめげず、何度も「ジャブ」を繰り出します。
そうこうするうちに、お客さまの頭の中に、事実やこちらの主張が入っていきます。それがお客さまの納得を生んで、解決策の話し合いに入りやすくなるからです。
それでもお怒りがおさまらない場合には、お客さまと冷静な状況で話をするために、後日お会いしてお話をうかがいます。
■こんな時どうする?
大声を出す人を別室対応するときは「周りのお客さまにご迷惑ですから・・・」と言わずに、「くわしくお話をおうかがいいたしますので、こちらへどうぞ」とご案内します。あくまでも、あなたの話をしっかり聞きたいからこちらへどうぞというニュアンスで別室に導きましょう。
「態度が気に入らない」と言われたら「お気を悪くされたのであれば、誠に申し訳ございませんでした。ただいま改めますので、ご指導ください」と冷静に対応します。くれぐれも感情的にならないよう、気をつけてください。
☆来週もお楽しみに。