☆今週のキーワード☆
「営業」
■営業部門を製造部門と比較して考えてみよう
営業部門(以下、営業)と製造部門(以下、製造)の業務は全く異なっており、両者を比較することはできないとか、比較する意味がないと考える方がいても不思議ではありません。営業は、自社の商品、製品を販売して売上を上げることが仕事であり、製造は、自社の製品を製造することが仕事であるため、両者の間に接点がないように感じられます。
とは言っても、両者に共通して言えることも当然あります。それは、両者には各々の業務プロセスが存在し、そのプロセスの中で、業務を改善しながら、最大のパフォーマンスをあげることが求められているということです。営業は、限られた時間の中で、最大限の売上を上げるとか、売上予算を達成するために努力していますし、製造は、できる限り安いコストで、高品質の製品を製造しようと、日々試行錯誤しています。しかしながら、業務プロセス管理、業務改善においては、両者にはかなりの差があるというのが、私自身の経験に基づく実感です。正直なところ、製造では、トヨタの「カイゼン」に代表されるように、日々のQC活動を通して業務改善にコツコツと励んでいるのに対して、営業では概して、そのような活動が少ないのではないかと感じられます。
それでは、なぜ営業ではプロセス管理=PDCAが上手くいかないのでしょうか。
第1に、営業に従事する人のタイプの問題です。営業マンといえば、明るく元気で、体育会系的な人が配属されるケースが多いように感じられます。明るく元気で、人に好かれることは、営業には非常に大切な要素ではありますが、このようなタイプの人は、管理すること、管理されることをあまり好まない傾向があります。若いうちにPDCAを教わらず、管理職自身がPDCAの手法を知らないため、PDCAが行われない、定着しない大きな要因になっています。
第2に、営業マンはお客さまを訪問して商談することが仕事の大半を占めるため、会社の机で落ち着いて仕事をする機会が少ないことです。夕方~夜に会社に戻ってきて、その日のまとめや提案書作成などをしているうちに、退社時刻になってしまうため、じっくり考える時間が取りにくいようです。
第3に、営業の目標指標が、売上(あるいは粗利益)というアウトプット指標一本であることです。営業は目標達成がすべての世界ですから、そのプロセスに神経質になる必要もないのかもしれません。製造であれば、原材料の仕入、人件費、経費などのインプットと製品というアウトプットの両方があり、目標値が、原価率低減や歩留率向上という、インプット、アウトプットの両方で管理する指標であるため、否応なくプロセスを管理せざるをえない訳です。
第4に、営業にも当然チーム目標がありますが、その目標の大半は、一部のできる営業マンに依存する傾向にあります。そのノウハウ、技などは属人的なものとして、チームに共有されにくくなっています。
それでは、なぜ営業にもプロセス管理が必要なのでしょうか。そんな時間があったら、お客さまを1件でも多く回って、売上を上げるほうがよっぽどいい!という方も多くいらっしゃるのかもしれません。しかしながら、プロセス管理の目的は、「楽して成績を上げる」ことであり、「体」と「頭」の両方で汗をかくことによって、はじめて良い成績が上げられます。
営業プロセスを考えてみると、
1.営業戦略・営業方針策定
2.見込み先リストアップ
3.アポイント・訪問
4.顧客との信頼関係構築
5.顧客ニーズの収集
6.提案活動
7.受注
という流れになっています。
上記の営業プロセスの中で、受注に辿り着くまでの間、「現在どの段階にあるのか」、「どこがネック、障害になっているのか」、「ネック、障害をどうしたら取り除けるのか」ということを考え、実行に移すことが必要であり、「楽して成績を上げる」ためには、「成約率をいかに高めるか」、「受注までのリードタイムをいかに短くするか」ということを常に念頭において活動しなければなりません。この活動こそが正に「PDCA」であり、「PDCA」をコツコツ行うことこそが、目標達成への王道であります。そして、この「PDCA」を、個人、チームの両方で「視える化」させることが、チームの目標達成、情報・ノウハウの共有につながっていきます。営業が難しいのは、「モノ」を売るだけではなく、売るという行為の中に、お客さまという「ヒト」が介在するためで、「ヒト」と信頼関係が構築できなければ、いくら頭の良い営業マンでも売れないわけです。営業マンが「心理学者たれ」と言われるのも、「ヒト」との信頼関係構築が大きなウェイトを占めるからに他ならないからです。営業において最大限のパフォーマンスを上げるためにも、「PDCA」を定着させ、「頭と体で汗をかく」最強の営業部隊を作り上げて頂きたいと思います。
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