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大学経営について・その2

大学経営について・その2

☆今週のキーワード☆

             
【大学経営】

前号で、生き残りをかけた厳しい経営環境の中、大学は、"戦略的視点を持つこと""経営構造を体系化させること"が、必要だとお伝えしました。今回は、上記の2点についてもう少し詳しくお話したいと思います。

まず、戦略的視点を考えるうえでは、「CS(顧客満足)」、「経営戦略」、「マーケティング戦略」という3つのポイントをおさえる必要があると考えています。「CS」の観点では、大学にとっての「顧客」は誰であるのか、その「顧客」にどのような「サービス」を提供して「CS」を実現するのかということを、改めて考える必要があるということです。

学生というと、高卒学生を思い浮かべる方も多いでしょうが、社会人、主婦、高齢者など、顧客の定義づけはいかようにも決められますし、サービスについても、現在の教育サービスをすべて維持する必要もなく、集中と選択を図ることも考えられます。いずれにせよ、顧客に満足を与えられない大学は、顧客からの支持を得られずに、市場から淘汰されてしまう運命にあるということです。

「経営戦略」については、「経営戦略」の定義が「市場における組織活動の長期的な基本設計図」であることを踏まえれば、各大学が、「どんなサービスをどのような市場に対して提供するのか」、「何を武器として、どんな能力を持った企業になりたいのか」、「将来に向けて、今からどんな組織行動を取るべきなのか」ということを、きちんと描くことが重要です。生き残りをかけた市場ではやはり、「差別化戦略」、「集中戦略」が重要になってくるのではないかと思います。

具体的には、他大学と差別化できる個性・特色を持つことや事業領域を特定分野に集中してどの大学にも負けない「強み」を作ることなど、従来の「横並び」の発想から脱却して、「強み」を徹底的に磨くことで生き残りをかけるということです。例えば、「総合」という看板を捨てて、特定学部に特化する大学が出てきてもおかしくありませんし、「スーパーCFO」、「スーパー営業マン」を養成する専門大学が出てきてもよいのではないかと思います(あまりに突飛な発想ですが)。

経営戦略全体を考えるにあたっては、バランススコアカードに基づいて、「顧客の視点」・「内部ビジネスプロセスの視点」・「学習と成長の視点」・「財務の視点」の4つの視点で考えてみると有効です。「内部ビジネスプロセスの視点」とは、戦略を実現するための業務プロセス、組織体制、各種制度、ルール、ガバナンスなど、内部の業務、経営管理をどうするかということであり、「学習と成長の視点」とは、メンバー(教職員)にどのようなスキルが必要か、何を学習したらよいのかという、人材に関する視点です。「マーケティング」・「内部業務・経営管理」・「人材」・「財務」の4つの視点によって、バランス良く経営全体を考えることができ、経営戦略を「見える化」することが可能です。

「マーケティング戦略」については、学生の「入口」から「出口」までを通しての一貫した戦略がポイントになります。つまり、「どのような人材を受け入れるのか、そのためにどのようなプロモーション戦略をとるべきなのか」
⇒「受け入れた学生に対してどのような教育を行うのか、

そのためのカリキュラム、教員、施設設備などをどうするのか」
⇒「どのような人材として学生を社会に送り出すのか、

学生を社会に送り出すにあたっては、どのような支援を行うべきなのか」ということを、予め明確に決めておかなければなりません。「出口戦略」については、実社会が求める人材像に合致した人材を送り出せるか否かが、社会からの大学評価に直結しますので、極めて重要な戦略になると思われます。
        
次に、"経営構造を体系化させること"ですが、
これはつまり、「経営理念」⇒「ビジョン」⇒「中期計画」⇒「年度計画」⇒「PDCA」⇒「業績評価」という流れを全教職員がきちんと理解し、この構造を一気通貫で行うこと、しかも繰り返し継続的に行っていくということです。

この流れの中で最も大切なのは、「PDCA」だと思います。なぜならば、いくら立派なビジョンや計画があっても、「PDCA」がしっかりしていなくてはそれらを実現することはできないからです。しかしながら、「PDCA」をきちんと行っている組織は案外少ないですし、「PDCA」の習慣のない組織であれば、根付くまでには相当な時間がかかります。「PDCA」を定着させるには、コツコツと根気強く行っていくことしか道筋はないと思います。

以上、大学経営について述べさせて頂きましたが、大学経営の舵取りが難しい時代にあっては、経営トップ(学長、総長、理事長など)の強いリーダーシップの下、全教職員が一丸となって知恵を絞りながら、顧客から支持される良質の教育サービスを提供することがポイントになるのではないかと考える次第です。

 
 
 
 
 
 
 
  
  
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