今週のキーワード
【CS(顧客満足)】
前回は、CSとはお客さまの利用実感が全てであるとお伝えさせて頂きました。よって、CSは顧客対応視点のみで捉えられることが多いのですが、私は、CSは多面的な視点で検討する必要があると考えています。よって、CSは「CSの捉え方」について解説させて頂きます。
■CSに関する様々な声
従業員の持ち場・ミッションから見たCSは、その意味するところがあいまいなことが多いものです。富士山を眺めるとき、富士山自体は1つだとしても、見る人、見る場所、見る時刻、見る動機などによって印象が異なります。同じように、経営理念におけるCSが1つだとしても、現場におけるCSは、部署・従業員ごとに大きく異なるのです。当然のことながら組織、業種が違うとなるとCSの印象の違いはさらに大きくなります。事実、CSに関する次のような声をよく聞きます。
Aさん「CSについての喫緊の課題は、クレームを減らすこと。」
Bさん「うちの部署の大きなリスクは、お客さまに関する身近な事務リスクとクレームリスクです。管理者としては、リスクからCSを見るのが当然だと思
います。」
Cさん「そうかな。お門違いのクレーム客対応に力を入れても、普通のお客さまのサービス向上に直接つながるわけではないよ。」
Dさん「その点は賛成。おもてなし・接遇の基礎ができていなくて、何がクレームだ!」
Eさん「でも、いくらサービス・接遇がよくても、他社の商品と比較して運用利回りが劣勢だと挽回できないのではないでしょうか。」
Fさん「そのとおり。ホンネでいえば、CSで収益が得られるか疑問です。利益を生むお客さまを絞り込み、そのお客さまの特性を考えてサービスを提供することこそCSの役割ではないでしょうか。」
Gさん「CSは手段、ブランドロイヤリティこそ目的です。重要なのはロイヤリティ向上によるお客さまの囲い込みのために、何を考えるかです。」
Hさん「言うとおり。我々のお客さまは、ビジネス客。お待たせさせない、時間どおりサービスを提供するのが最優先。」
Iさん「いや、うちは、地域の高齢者だ。コミュニティを重視するので、信頼関係こそCSの真髄です。よくお話を聴くことこそCSの始まりといっていいのではないでしょうか。」
Jさん「実はそうなんです。CSは手段ではなく、経営理念そのものです。手段なんかじゃなく、いかに経営理念であるCSマインドを末端まで浸透させることです。」
Kさん「いや、経営理念でいくらCSマインドをうたっても、現場でどう動いたらよいか分かりません。窓口の応対は待ち時間改善、渉外の応対は提案力が課題です。これを解消するのがCS向上であると思います。」
Lさん「CSは手段で、収益を逃さないための当然力を入れるべき施策です。儲けることで利益を社会に還元することじゃないですか。」
Mさん「ところで、資産運用商品のリスクをルールどおり説明すると、お客さまに不信を買って、CS上逆効果になることがあります。どうしたらよいでしょうか?」
■多様な組織の視点でみたCS
経営者の立場、CS推進の立場、営業の立場、苦情処理の立場、コンプライアンスの立場、業務改善の立場、研修する立場など、なるほどと思える発言です。皆思いつきで言っているのではありません。真剣そのものです。便宜的に分けてみると、次のとおりですが、十人(組織)十色という感じがします。
1.接遇/おもてなしからみたCS、2.クレームからみたCS、3.経営理念からみたCS、4.業務改善からみたCS、5.マーケティングからみたCS、6.コミュニティ・公益、説明責任、コンプライアンスなどからみたCS。確かに、クレームを減らしたからといって、大半の顧客はクレームなどには関心がありませんし、接遇を重視すると間接部門の職員は関係ない点は問題といえば問題です。また、経営理念レベルで課題といっても、お客様の顔が見えていないところでの議論をいくらしても顧客が満足してくれるわけではありません。かといって、CSは継続的な利益確保・維持のための手段です。顧客ロイヤリティが真の目的だといっても、現場が直面している課題の即効薬にはなりません。クレーム対応などの対処療法が今必要だという組織もあります。
以上のようにCSを考えるにあたっては、多面的に解決を検討する必要があります。自組織は、どの視点でCSを考えるのか、まずはこの分析に多くの時間をさくべきだと私は考えています。時間もコストもかけた大掛かりなCS改善策が、期待したほどの効果を生まない場合、顧客対応部門など実は限定的な施策になっていなかったか再確認してみるのが良いと思います。
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