奈良時代の「勤務評価」には、「善」という儒教の思想に基づいた、「徳義」・「清慎」・「公平」・「恪謹」の4つの評価基準がある一方で、「業績評価」には、役職ごとに、「最」と呼ばれる評価基準があります。
例えば、民政を行なう「民部省」の役人の「最」は、「戸籍に登録されている民衆の数を減らさず、倉庫を収穫物で一杯にすること」でした。
■奈良時代の評価の仕方
評価の基準を満たすと、「善」と「最」の評価が得られ、それらを1年にいくつ獲得したかによって、「上上」から「下下」の、9等(9段階)の勤務評定が定められます。
「上上」から「中中」の5等が、昇進に関係するプラスの評価となる一方、「中下」以下の4等はマイナスの評価になります。その評価の組み合わせは、以下のようになります。
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「上上」:1最以上+4善 「上中」:最なし+4善
「上下」:1最以上+2善、または最なし+3善
「中上」:最なし+2善 「中中」:最なし+1善
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「中下」以下は最・善ともに1つもない場合で、その場合は以下の基準で評価されました。
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「中下」:仕事が粗い
「下上」:仕事の際に「愛憎」(好き嫌い)を持ち出し、仕事が理に
背いている
「下中」:公のためではなく、自分のために仕事を行ない、職務を滞らせる
「下下」:仕事上の権限を使い、お金を着服する
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また、1年の勤務評価のことを「考」といいますが、役職についている任期中の各年の「考」を計算してその結果が昇進に関わる最終の勤務評定になります。
昔の役職の任期は、基本的には6年ですが、その任期中の6年間の勤務評定=「6考」がすべて「中中」ならば、位階が1階級上がるというのが評価の基本的な基準になります(例えば、従六位下から従六位上に昇進)。
また、6考とも「中中」という条件を満たした上に、さらに「中上」が3考、「上下」が2考、「上中」が1考ある毎にさらに1階級が上がり、「上上」が1考ある毎に2階級上がります。
下考(「中下」~「下下」)の評価は、上考(「中上」~「上上」)の評価で相殺することができ(「中上」と「中下」、「上下」と「下上」のように上・下考を対応させて相殺する)、相殺した後に、上考が1つでも残れば、昇進の対象となっていました。
■今も昔も難しい評価、お悩みであればインソースにご相談下さい。
奈良時代の評価制度は、今と比べるとシンプルですが、評価基準をどのように業務で具体化するか、ハロー効果、寛大化傾向などの評価者の偏りなどは当時から存在していたのではないかと思います。
古代は、記録が少なく、実態を知るのが難しいことが多いです。まだ不勉強で、その辺をじっくりと調べておりませんので、調べて分かりましたら、また別の機会にご報告いたします。
☆次回もお楽しみに!