■服装の自主ルールづくり
接遇を考えていく上で、見た目は大きな要素の一つです。特に、制服のない職場での女性職員の方の服装や身だしなみは、非常に気を遣う部分です。どういった服装であれば、お客さまにとって不快ではないのか、アクセサリー類はどこまで認めていいのかなど、難しいことが多いです。さらに、男性職員が上司だった場合、「女性の服装について注意するのは難しい」と思っている方も多いようです。
そこで、課長が考えて実践したのが、女性職員による服装の自主ルールづくりです。役職や立場など関係なく、有志の女性職員を集めて自分たちの服装のルールについて話し合いました。
そこでは、いろいろな意見が出ました。一時はまとまることすら難しいのではないかと思われたほどです。とはいえ、人から押しつけられるルールではなく、「自分たちが気持ちよく働ければ、きっとお客さまも気持ちいいはず」と考えて、自分たちのルールをつくり上げました。そのお陰で、自分たちがこの職場をつくっているという意識が強くなったと言います。
■職員にもお客さまにも、安心感のある職場になった
1年目、2年目と関わらせていただく中では、「職場が乱雑です」や「プライベートな内容への配慮を心がけましょう」などの指摘をさせていただくことも、正直多かったです。
しかし、調査を開始して3年目。課長の絶えざる働きかけや、組織のトップに結果を報告したことなどもあり、設備面の改善もされました。今、その部署の窓口に行くと、非常に自然にお客さまを受け入れる雰囲気があり、職員の方々が生き生きと仕事をされています。
職場のメンバーも入れ替わりがあり、これまでの経緯を知らない職員の方もいらっしゃるといいます。それでも、毎日、毎週、毎月に目標を立てて、地道に努力してきた結果が、職場の雰囲気にあらわれているのでしょう。課長は、「まだまだ個別のレベルで改善する余地はあります」と言って、改善を続ける思いを形にしていました。働いている職員も、お客さまも、安心感のある職場って素晴らしいと思いました。
■継続は力なり
現在、最後の調査が終ってから、1年が経ちました。
ときどきその施設にお邪魔することがあります。その度に、今回関わらせていただいた部署の前を通るようにしています。3年間取り組んだ課長は異動になったと伺いました。とはいえ、変わらぬ安心感のある雰囲気を感じます。
「継続は力なり」「ローマは1日にしてならず」。過去の教訓に、改めて教えられる仕事でした。