─────────────────────────────────
◇上林 憲雄氏(Norio Kambayashi)◇
英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、 2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。専攻は人的資源管理、経営組織。
─────────────────────────────────
■戦略と人事の強い繋がり
経営学の世界では,人事労務管理が人的資源管理になって,以下のいくつかの点が変化したと言われています。1つには,人事マネジメントが企業の経営戦略と大きくリンクしてきているということです。人的資源管理では,人事労務管理の時代と比べて,全社的な経営戦略との結びつきが明らかに強くみられるようになってきています。人的資源管理パラダイムの下では,トップの戦略計画が策定される際には,中長期にわたる人員の採用・削減計画など,必ず人事関連のイシューとリンクさせながら計画が立てられることになり,この点が人事労務管理とは異なると認識されています。世界的に見て,「取締役」の中に人事出身の役員がちらほら入るようになってきたのも,ちょうどこの頃からです。
■後追い的な業務から主体的な業務へ
このことは,角度を変えてみてみると,人的資源管理が,能動的・主体的な戦略的管理活動の中心にくるべきマネジメントとして位置づけられるようになってきているということを意味しています。人事労務管理の時代においては,従業員の給与計算や保険業務等の定常業務を行なったり,あるいは職場でのコンフリクトや労使紛争が発生した場合にそれら諸問題を解決する「火消し活動」的業務に従事したりといったような事項が主たる業務であると考えられていました。紛争処理のような,何か問題が発生した際に対処するような受け身的な活動(・・・こうした活動も重要なわけですが)をする部署が人事部であると考えられていたのです。
■全社の牽引役としての人事部
戦略という用語の意味は,前回にも触れたように,世の中の先の動きを見据え,現時点でやるべき事項をリストアップし,それらに優先順位を付けて1つ1つこなしていくことを意味していますから,人事部は,後追い的な火消し活動を超えて能動的・主体的に動かなければならないようになってきています。言い換えると,今日では,企業の経営戦略における人事関連のトピックスが占める比重が大きくなり,いわば人事部が会社を引っ張るようになってきたということです。
「きみは営業に向いてない」
周りの人にさんざん言われていながら入社早々営業担当になってしまった中島が伝える、営業の頑張り方