本日は、大学院教授から、学生の皆さんに向けたメッセージをご紹介します。
◇上林 憲雄氏(Norio Kambayashi)◇
英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。専攻は人的資源管理、経営組織。
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■自分自身に身近なこと
最近,大学で学生を教えていて感じるのは,物事を捉える視野や関心が本当に狭く,自分と直接関係がある身近なことに対してしか興味を示さないということです。
例えば,「何でもいいから,自分の関心の持っていることを挙げてみなさい」と指示すると,大半の学生は,自分が今取り組んでいるアルバイトや部活動などを題材として取り上げようとします。
■自分から離れたことは・・・
もちろん,「何でもいいから」という指示なので,それで全然構わないのですが,何百人も学生を教えていて,1人か2人程度は,より根源的な社会の時事的な問題やホットイシューに関心を持っているような学生が居てもいいのに,と感じることがままあります。
例えば,最近であれば,「政権交代後に政治がどう変化したか」とか,あるいは「原発にはどういった問題が潜んでいる(いない)のか」とか・・・少し社会に眼を向ければいくらでもネタは転がっているはずなのに,そうした問題を取り上げようとする学生は皆無です。
要するに,最近の若い学生は,自分に直接関係していないような広く大きな問題は,考えようとしない傾向にあるのです。そもそも自分とは違う世界だと思っているか,考えてもどうせわからないと高をくくっているかです。
■眼が外へ向かない!?
このことを別の角度から見ると,最近の学生は,自分自身のことや自分の思いを述べることは,恥ずかしがらずに出来るのですが,自分以外のこと(他者,社会)を対象にした問いには急に寡黙になってしまう傾向がある,とも言えます。そもそも他者に関心が無いとすれば致し方のないことかも知れませんが,社会的な話題を出そうとすると,急に冷めてしまい,コミュニケーションを遮断しようとしてしまう態度は残念至極です。
■「なぜ」を,他者に当てはめて考える癖をつける
こうした学生に対し,私はいつも「(あなたではない)他人は,なぜそういった行動をとったと思いますか?」と尋ねるようにしています。あるいは,人ではなくても仕組みや制度,法律等でもよくて「なぜ,そういった仕組みになっていると思いますか?」と尋ねるようにしています。
このような問いには最初は全然答えられないのですが,繰り返ししつこく問いかけていくことを通じ,次第に考えようとする態度を身につけてくれる学生が多いようです。数ヶ月もこの訓練を続けると,少なくとも「すぐにあきらめては駄目だ」ということは理解し,考えようとするようになっていきます。
■他者・社会の中の自分という視点を
要は,こうした"自己中心的"な世界観の若者には,自分だけの世界から,他者も含めた自分の世界へと脱皮させてやらないといけないということです。自己を相対化し,客観的に見つめられるよう育ててやらないといけないのです。そのためには,自分がどう思うかだけではなく,極力,自分以外の他者が,なぜそういう行動をとったのか(あるいは,なぜそうなっているのか)を問うてやることです。こうした訓練を粘り強く続けていくことで,ビジネスの世界に入ってからも広い視野から物事を考えられるようになるはずです。
★次週もお楽しみに!
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