■プロフィール
1963年生まれ。株式会社ユニソンパートナーズ代表取締役。
一橋大学社会学部卒業後、三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。
営業店勤務、官庁出向を経て、インターネットバンキング、融資業務BPR
、ITを活用した新規業務開発とマーケティングなどに携わる。また、
Tデータに出向し、同社北米技術センタ(在シリコンバレー)で米国金融ビジネス調査と有望なソリューションのビジネスデベロップメントに従事。その後、「ビジネスとITの協調(ユニソン)」を標榜するユニソンパートナーズを設立。大手銀行リテール業務戦略構築、証券会社BPR、保険会社ダイレクトチャネル戦略構築、銀行向けTMS構築支援、J-SOX対応支援など金融機関およびITベンダー向けに多数のプロジェクトを手掛けている。
敷居の高そうな金融システム、実は・・・
◆山本:
金融システムが難しそうだと、皆さんにイメージを与えてしまっているのは、金融のシステムが複雑化したことが要因の1つだと思います。システムだけでなく商品や法律なども高度化・複雑化しました。
複雑化すればするほど、システムトラブルが気になるので、かえって昔ながらのシステムを残してしまっています。ブラックボックス化してしまっているんですね。でも、それらを紐解いて見ていくと、そもそもそんなに難しいものではありません。
ですので、実は「金融系のシステム」を作るというのは、業務の基本の所に立ち返り、それを"機械語に翻訳していくだけ"の話なのです。
■ブラックボックス化していても、中身を紐解いていけばわかる
◆山本:預金の払戻しを例にお話ししましょう。
銀行で「システム化」または「オンライン化」は、1960年代後半から行われていました。それ以前はコンピュータがありませんので、1万円引き出すのにも大変な手間がかかっていました。
どうやって預金を出したのでしょうか?
1万円引き出そうと思ったら、銀行に行く→通帳を出す→伝票に名前を書く→印鑑を押す→受付の人がお届けの印影と伝票の印鑑があっているか見る、という作業をします。
ATMを使わないのなら、ここまでは今とあまり変わりません。
ただ、その後。
窓口の後方にいる預金係が何をするかと言うと、手書きの元帳を出してきて、預金口座ごとの入出金や残高をそろばんで計算して、手書きで書いていくんです。例えば1万円の払戻しの場合、「残高が3万円あったとすると出金1万円で2万円になりました」など。正確を期する意味で、1人だけではなく、もう一度他の人に確認してもらいます。そのうえで、現金を管理している出納係にその伝票を持っていって、現金を用意してもらいます。そして、管理者が伝票に書かれた金額と現金が合っているかを確認し、お客様に現金と通帳を渡すことになります。
それが、今はコンピュータの中に預金者全部の元帳が入っているわけですね。非常に労働集約的だった預金の払戻事務が、今ではATMで簡単に、かつお客様自らできるようになりました。以前は、支店の銀行員が大勢いましたが、人数も大幅に減っています。
「システム化」というのは、そういう一連の業務を全部システムに置き換えていることなんです。それなのに、そこを理解していないから、インプットとアウトプットしかわからなくなり、中がブラックボックス化したように感じてしまうんです。
だから、金融のシステムは、全然複雑ではありません。気楽に考えてください。
☆次回も引き続き、山本氏のインタビューをお送りします。お楽しみに!