■プロフィール
1963年生まれ。株式会社ユニソンパートナーズ代表取締役。
一橋大学社会学部卒業後、三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。
営業店勤務、官庁出向を経て、インターネットバンキング、融資業務BPRなど、ITを活用した新規業務開発とマーケティングなどに携わる。また、NTTデータに出向し、同社北米技術センタ(在シリコンバレー)で米国金融ビジネス調査と有望なソリューションのビジネスデベロップメントに従事。
その後、「ビジネスとITの協調(ユニソン)」を標榜するユニソンパートナーズを設立。大手銀行リテール業務戦略構築、証券会社BPR、保険会社ダイレクトチャネル戦略構築、銀行向けTMS構築支援、J-SOX対応支援など金融機関およびITベンダー向けに多数のプロジェクトを手掛けている。
■金融の変化の本質は?~業者保護から利用者保護へ
◇中島:
ここ最近、やはり金融世界はそれなりに変化があるものと思います。特にどんなところが変化が大きいのでしょうか?
◆山本:
一言で言うと、国が、業者保護から利用者保護にシフトした、ということです。
簡単にご説明しますね。キーワードは、「護送船団(ごそうせんだん)方式」です。
戦後復興の頃の日本の産業界を考えていただければわかりやすいと思います。当時、日本経済全体が非常に貧弱、脆弱でしたよね。そのときに、基幹産業に金を重点的に集めて、そこを育成しよう、ということをやっていました。(これを「傾斜生産方式」といいます)。
金融業界もまさにそれで、金融は非常に手厚く保護されてきました。このことを「護送船団方式」といいます。
例えば金利一つとってもどこの銀行でも同じだったんですね。それも、つい最近まで同じだったんですよ。金融の自由化の一番初めが金利の自由化です。業者保護だったのが、明らかに利用者保護に切り替わりました。その対価として事業者が得たのが、自由化です。もちろん、自由にやる代わりに、そこに対しては一定の事後的なチェックを入れますよとは言われましたが。
これが一番、世界的にも大きな流れの変化だし、特に金融業界は保護されていたのでドラスティックにこの10年15年変わってきた、かつそのための体制整備が進んできたというところだと思います。
後もう一つは電子化ですよね。先ほど説明しましたIT化の延長です。
■金融業界の変化~ペイオフ
◇中島:最近、ペイオフが話題になっていますが、あれも変化の一つですか?
◆山本:
ペイオフというのは、1,000万円まで一般の預金の元本とその利息を保護します、ということです。あの銀行のケースでは、おそらく2,000億円から3,000億円くらい、預金保険から保険金が払われることになるでしょう。その保険金ってどこから出ているでしょうか?
これは我々国民の預金がおおもとになっているともいえます。預金の利息が削られて、削られた部分が保険料になっている。これは、毎年6,000億円くらいで、そこから2,000億円とか3,000億円とかが保険金支払いになってしまうのです。ペイオフでテレビなどが盛んに取り上げていたのは、1,000万円以上預けていた預金者の預金が戻ってこなくなるという点ばかりでしたが、それとは別に、もっと多額の我々の"公金"が使われるということに対して、もっと関心を寄せなければならないと考えます。
この件が示すように、金融機関というのは、健全でないとツケが国民みんなに回ってくるんですね。
☆次回も引き続き、山本氏のインタビューをお送りします。お楽しみに!