「商工にっぽん」2007年9月号掲載:「弊社取締役顧問・大島」の原稿を
再編集したものです。
業務の改善点を社長が指摘して、それを社員たちに行わせることは簡単です。しかし「業務改善」は、社員全員が「意欲」をもって、自ら組織を動かし、少しずつやっていくべきものなのです。
「社員一人ひとりが小さな流れを作り、それを大きな流れにしていく」。最初は「一個人の考え」であったものを、「組織の総意」へ変えることができれば、組織は良くなっていきます。社長や管理職の方がアドバイスすることで、社員のみなさんが自分たちで気づきながら「業務改善」を行っていくためには、どのようにすればいいのでしょうか。
今回は、弊社取締役顧問の大島さんにインタビューをして、「自律的な業務改善(後編)」のヒケツをお伺いしました。
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◇ 前回の内容
■現場の"常識"を外部の常識と照らし合わせて考える
■連続処理は「機械化」のチャンス
■"分業"の不経済もある
■まれな業務は"集約"すべき
(1)まれな業務を集約化する
(2)集約化で新規事業!
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◇ 今回の内容
■日常業務と注意すべき業務
(1)日常業務は現場に権限委譲する
(2)特に注意すべき業務は管理職や経営幹部が厳密に取り扱う
■マニュアルづくりのポイント
(1)マニュアルはできるだけ少なく
(2)マニュアルは2種類用意
(3)マニュアル"レス"のすすめ
■ 現場の問題をどう見つけるか
(1)人のせいにしない!
(2)2つの法則を活用
1. ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)
2. パレートの法則(20:80の法則)
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◇ 本文
■日常業務と注意すべき業務
(1)日常業務は現場に権限委譲する
仕事は、標準化して、定型化していくと「日常業務」になります。日常の業務については、チェックも含めて現場委譲し、管理職に判断を仰がないことで、時間と手間を少なくします。
(2)特に注意すべき業務は管理職や経営幹部が厳密に取り扱う
ただ、そこに載ってこない業務については、特に注意する必要があります。
例えば、リスク管理や人事管理などの業務については、必ず複雑な手順を踏むようにしておけば、トラブル、リスクが減ります。そうしないと万が一トラブルがあった場合、10倍、100倍のコストがかかってしまう恐れがあります。
すべての仕事を、同じように一律にチェックするのは非効率です。チェックの厳密さに「濃淡」をつけることで業務の量を減らすことができます。
インソースではあなたの部署の、「日常業務」「注意すべき業務」「特に注意すべき業務」を洗い出し、その対応方法を考えるシートをご用意しています。お問い合わせください。
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■マニュアルづくりのポイント
(1)マニュアルはできるだけ少なく
マニュアルを作る場合は、なるべく量を少なく、すぐに全体を見られるものが好ましいでしょう。
作る側は分量を多く作ったほうが満足しますが、ボリュームが多いと他の人に読まれませんし、重要なこともぼやけてしまいます。一度作ったものを3分の1ぐらいまでギュッと凝縮すると、よいマニュアルができると思います。
マニュアルを凝縮させたほうがよい理由には、内容を削る過程で、重要なことがより明確になるということもあります。
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(2)マニュアルは2種類用意
一番よいのは、概要がパッと分かる入り口的な「エッセンス・マニュアル」と、困った時に詳しく調べられる「辞書的なマニュアル」の、2種類のマニュアルが揃っていることです。
また、マニュアルは、「通常業務」「特殊業務」で区分されています。「通常業務」のマニュアルは、新入社員にとってはありがたいものですが、だんだん仕事をするうちにいらなくなってしまいます。ですので、基本的にマニュアルは、「特殊業務」のものさえあれば十分です。
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(3)マニュアル"レス"のすすめ
「通常業務」のマニュアルについては、仕事が正常に行われるために、ミスをしやすい所や重要な部分について、チェックリスト型のマニュアルがあれば良いでしょう。
また、稟議書や報告書といった文書に、注意すべき項目を盛り込むと、マニュアルがいらなくなります。
さらに、業務の中で複雑になっている部分を、なるべく普段の自然な動きで進められるようなフローにすれば、マニュアルは必要なくなります。マニュアルがなくても、業務が進められるようにすることも「業務改善」のひとつです。
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■ 現場の問題をどう見つけるか
(1)人のせいにしない!
業務改善の最大の阻害要因は、「○○さんが不注意だからダメ」「○○さんは仕事ができないからダメ」など、トラブルの原因を特定の人物のせいにすることです。
そうすると、すべての思考が停止してしまい、業務改善を行う理由・必要性を考える"なぜ"という問いを阻むことになります。
(2)2つの法則を活用
業務改善の問題を見つけるためには、次の2つの「法則」に基づいて考えると、とても有効です。
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1. ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)
労働災害の事例を統計分析した結果、1つの重大な事故の裏には29の軽微な事故があり、さらにその裏には300の事故寸前の、「ヒヤリとしたり、ハッとしたりする危険な状態」があるというもの。
労働災害の事例から導き出された比率であるが、リスクの洗い出しにも利用可能である。
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2. パレートの法則(20:80の法則)
重要な20%が全体の方向を決定しているという法則。多数の問題があるなかで、そのうちの重要な20%を解決すれば、おおよその問題は解決する。
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私の経験で、この2つの法則を用いて問題解決を行った例を紹介します。
銀行時代に、私はネットバンキングを立ち上げました。その際、まだ登録者が少ないにもかかわらず、厳しいご批判を多くいただきました。
私は、このままの状態でお客さまが増えると、サポートの人数を膨大に用意しなければならなくなると感じました。それに対処するためには、まだ問題がそれほど大きくないときに、重大なリスクの発生を回避する方法を考えなければならないと思いました。
そこで、私は、「サービスの種類を増やす」とか、「多機能にする」など、他の多くの意見があるなかで、「操作をシンプルにして、それに関する問い合わせを減らすこと」が、一番大事なのではないかという考えにいたりました。
この考えは当たっていたようで、実際に当時のネットバンキングの中で、「使いやすさナンバーワンサイト」にも選ばれ、利用者獲得にも多大な効果がありました。
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このように、何か問題が発生した時点で、今後起こりうる同じ要因の、重大な問題の発生を回避するため、問題が軽微なうちに原因をつきつめることが重要です(ハインリッヒの法則)。
また、問題の原因をつきつめる際には、瑣末(さまつ)なこと(80%)を捨象し、本質的な部分(20%)を絞り込むことが大切です(パレートの法則)。
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