┏───── 今回のビジネスパーソン ──────────┓
◇安藤弘一氏(Hirokazu Ando)◇
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■マーケットの成長性に対応したコスト戦略の選択
利益を確保するうえで、コスト面に目を向けることも忘れてはいけません。損益分岐点分析は、この点についても、大いに示唆的です。
たとえば、マーケットが拡大し、売上高が増加すると予想されるとき、どのようなコスト戦略を取ればいいのでしょうか。
この場合、売上高が増加しても、総費用が増加しないように、変動費を固定費化することが得策です。高度成長期に、積極的な設備投資が行われたのはこのためです。
一方、マーケットが縮小し、売上高が減少すると予想されるときはどうでしょう。売上高の減少に歩調を合せる形で、総費用が減少することが望まれます。
このためには、逆に、固定費を変動費化することが得策です。バブル経済の崩壊後、会社は挙って人員を削減しました。また、外注化も積極的に活用されました。これらは、固定費を変動費化するためのものです。
皆さんは、以上を踏まえて、マーケットの成長性を掌握した後、コスト戦略についてもしっかりと検討してください。
■リスクの掌握~わが社が生き残るための最低条件は何か
会社は、なんとしても生き残らなければなりません。このための条件は、プラスの利益を確保することです。皆さんの会社は、売上高を何割失うと損益分岐点売上高を下回るのでしょうか。まず、この点をしっかりと掌握してください。そして、この状況を引き起こすリスクが何かをしっかりと洗い出してください。
利益が少ない会社は、ちょっとしたことでも損益分岐点売上高を下回ります。また、好業績を維持している会社でも、工場で大事故が起これば、操業度が低下し、これを起因にして売上高が大幅にダウンすることがあります。
コンプライアンス違反を起こせば、顧客離れが起き、売上高が一気に減少します。国内マーケットでの急速な高齢化が、売上高減少に拍車をかけるかもしれません。競合他社の新しい技術が、自社の主力商品の売上高を直撃するかもしれません。
会社は、生き残るために、どれほどの売上高を最低限維持しなければならないのでしょうか。そのために、どのようなリスクを想定し、どのような手を打たなければならないのでしょうか。損益分岐点分析を、このようにリスク管理に役立てることも大切です。
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■売上高を正しく因数分解する
事業に精通するための8つのポイントの最後として、皆さんに、どのような戦略や施策を打てばいいのかがすぐに分かる方法を伝授します。その方法とは、売上高を正しく因数分解することです。皆さんも、これに「なるほど」と思えるのではないでしょうか。
たとえば、わが社の売上高が、営業人員比例型であるとします。つまり因数分解の姿として、
年間売上高=商品単価×営業人員1人あたり年平均販売数×営業人員数が成り立っているとします。
これが正しい因数分解の姿であれば、「売上高を5%伸ばす」ために打つべき戦略や施策は、自動的に決まります。「一つは、営業人員を5%増やすことであり、もう一つは、営業人員一人あたりの年平均販売数量を5%アップさせるための手を打つこと」です。
現下の因数分解モデルを改善して得られる効果に限界がある場合には、このモデルを刷新することも必要です。「店舗販売ではなく、インターネットを活用したセールスモデルを導入しよう」などは、まさに、因数分解モデルの入替えにあたります。
因数分解モデルを入替える際には、くれぐれも、現下のモデルがもつ収益性を徹底的に追求したかをチェックしてください。これによって、新モデルの構築に役立つ情報が数多く得られるからです。
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※次回は、今年の新人の特徴に関するまとめと、それに対応した研修についてお送りいたします。