■交渉はどのような場面で必要か、その目的は?
私は銀行に長くいましたが、その前半はプログラマーとしてものづくりをやってきました。その頃は幸せで、機械と対話してればよくて基本的に自分ひとりで何でもやれました。
それがプロジェクトを束ねる立場になるとすごいシンドイ。自分の実力もなければいけないし、他者と交渉しなければならない。
コストを考えたら出来ないこともあるし、やれと言われたことをやらなければいけないこともある。
そうしたものを自分のコントロール出来るところへ持っていかなくてはいけなかったので交渉の連続でした。
(中略)
基本的に組織の中では新しいアイディアがあっても、それをやりたい人がいるかといえば、ほぼ全員がNOなんですね。今の仕事の仕方を変えなければいけないし、もしかしたら今の仕事を奪われるかもしれない。
だから、企画を通していくって行為は実に大変です。新しい企画が採用され、新事業をやることになったとします。しかし、社長がやれと言っても、誰もやりません。仮に配属されました、辞令が出ましたってなっても、「私はやり方がわからないから出来ません」と言うんですね。
それはやり方が分からないからではなく、仕事に対して「嫌だ、承諾しかねる」と暗に言っているんですね。私は人生において「やり方がわからないから出来ません」みたいなことは、100万回くらい言われましたね。そういった中で、やってくれない人をどう動かすかって事が「交渉」なんですよ。
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■交渉は相手を言い負かすことではない
まず交渉ってなにかを考えたときに、似ているようで違うものはディベートだと思います。ディベートと言うのは相手をやり負かす、言い負かすっていう口と頭の勝負だと思うんですね。しかし交渉は違います。
生身の人間が全人格を使い戦う、これが交渉なんですね。交渉とディベートの違いは、結果がハッピーエンドでなければいけないということです。たとえWin-Winじゃなくても、少なくとも自分がハッピーにならなければいけない。
あとは経済的利益が伴うのが普通です。だから、ディベートが上手いからといって交渉が上手いかというと、全然そんなことはありません。むしろ、ディベートの気分で交渉すると、相手に嫌われてしまうことがあります。
ビジネスでは嫌われたら終わりですからね。そこがディベートとの大きな違いです。だから、交渉のプロというのは基本的に穏やかに笑ってるんですね。激しく議論するっていうのは、交渉においてはマイナスなんです。これは全世界共通だと思います。
悪いやつほどいい笑顔で笑うんですよ。例えば、アメリカの映画なんかで激しく議論してたりするけど、あれは素人の交渉なんですね。ビジネスにおける交渉はにこやかに行われるんですよ。
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■交渉に必要な能力
■事例研究に即したロールプレイング
■3つの説得方法
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~商談や調整を円滑に進める交渉術を習得