『月刊ガバナンス』2006年10月号掲載
~実践事例で学ぶ・成功する自治体職場のプレゼン(全4回)~
【第1回】「ケース1:市庁舎建替えに関する住民説明会」
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≪ケース1:市庁舎建替えに関する住民説明会≫
はじめて市民説明会を任されたAさん。懸命に資料を作り、自分なりにシュミレーションもした。準備万全のつもりで、いざ会場へ。
しかし、緊張で顔はこわばり、手も震えがち。市民の顔もまともに見られず、黙々と分厚い資料を読む...。
発表途中で、市民からは野次が飛び、場内は険悪なムードに。
さて、こんなときどうすればよいか。
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■20代、自分のプレゼンは意味不明と言われた!
プレゼンテーション(以下、プレゼン)でお困りのみなさんが多いと思います。
「人前で話すのは苦手だな」「できれば人前で話したくない」
こんな声が聞こえてくる気がします。
現在、プレゼンの講師をしている私ですが、20代のころは、「お前の話は意味不明だ」「しどろもどろで人前に出せない」と言われ続けてきました。今でも、人前に出るのは勇気がいりますし、あがり性は治っていません。
しかし、こんな私でも多数の修羅場をくぐり抜け、その結果、ほどほどうまくなり、ビジネスの成果を上げてきました。そんな経験と現在の多数のプレゼン指導実績を踏まえ、実践プレゼンのポイントをお話したいと思います。
■プレゼンは業務知識+一般常識+伝える技法
プレゼンに必要な要素の70%は、仕事の「業務知識」と社会の「一般常識」です。あとの30%だけが「伝える技法」です。それもかなり「自分流」で問題ありません。
下手な人は下手なプレゼン、頭のいい人は頭のいいプレゼン、根回しのうまい人は話さなくても良いプレゼンがあります。 プレゼンの目的は「相手に話を理解させ、賛同を得る事」です。
伝える技法で必要なのは、「美しい話し方」ではなく、その人なりの「説得の方法」です。
アナウンサーのように流暢な話し方ができればそれに越したことはないですが、そもそも、プレゼン目的は、「自分の考えを正確に他者に伝え、それを相手が理解し、相手の賛同を得る事」です。
相手に「あんたの話はわかった。賛成するよ」と言ってもらえるだけでいいのです。
今回は、最低限の努力でわかってもらえるプレゼンについて、現場事例を踏まえ、考えてみます。
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≪ケース1:市庁舎建替えに関する住民説明会≫
X市では築50年の庁舎建替えを検討中です。本件に関する各地区住民説明会を開催する事ことになりました。
Y地区の説明責任者に選ばれたのは、技術系職員で東京出身のAさんです。今まで説明会の経験がなく、この地方の出身でもないこともあり、Aさんは不安でいっぱいです。
住民説明会には、高齢者を含む多数の来場者が集まり、冬の夜6時にスタートしました。
うすら寒い説明会場ではコートを着る人もちらほらいます。Aさんの顔は、緊張でこわばったままです。
当日配布した分厚い、細かい字がびっしり書かれた資料を、専門用語を交えながら、順を追って、淡々とうつむきかげんに説明しています。
会場からは、「寒い!」「話が良く分からない!」「住民メリットが分からない、市職員のエゴで建替えるのではないか?」などの野次も飛び、険悪なムードになっています。
なぜ、こんな状況になったのでしょうか?どうすれば良かったのでしょうか?
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■住民を主役とし、来場者に配慮した資料を準備する
まずは資料の準備です。現実問題として、良いプレゼンペーパーがあれば、多少話がまずくてもしのげます。特に資料作りが得意な方は、腕の見せ所です。
20分程度のプレゼンテーションであれば、A4用紙で最大4枚ぐらいの資料を用意します。
このとき、「分厚い」資料は厳禁です。聴衆は資料をめくるだけで疲れてしまうからです。
資料はできるだけ少ないのが基本です。
内容としては、順次ご説明しますが、特に注意したいポイントを2点あげます。
(1)字の大きさは原則12ポイント以上
ズバリ、来場者に50代以上の方がいる場合、大きな字で書いた資料にすべきです。想像以上に高齢者にとって、小さな字は苦痛です。なにより、資料が読めなければ、「しゃべり」だけで、説明会に臨むことになり、不利です。
(2)資料の「主語」は住民にすること
皆さんは知らず知らずのうちに、「お役所言葉」を使っています。実はこれが住民にとってはあまり気分の良いものではありません。
今回のケースで言えば、「住民のみなさんにご利用いただく市役所」というように、住民が主役の言葉遣いで書くようにしましょう。
■聴衆に配慮して、聴く環境を快適にする
次に、一般常識として、聴衆への配慮を行うことが絶対条件です。
この場合、「寒い」のは、論外です。経費節減もわかりますが、風邪など引いては大変です。会場準備段階で、暖めておくべきです。
話す前に聴衆を敵に回さない事です。
(つづく)
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