今年の夏に東京・大阪で開催しました「管理職セミナー」の安藤氏の講演録をお届けします。
民間企業の管理職向けの話が中心となっておりますが、官公庁・自治体のマネージャー様にもご参考にしていただける内容であると思いますので、是非ともご覧ください。
┏───── 今回のビジネスパーソン ──────┓
◇安藤弘一氏(Hirokazu Ando)◇
1978年、アメリカ・カーネギーメロン大学大学院卒。
MBA取得。帰国後、三和銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。
UFJホールディングス(三菱UFJフィナンシャルグループ)の執行役員・経営企画部長に就任。
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■管理職=社長って本当!?
多くの管理職は、「自分が社長の代行なんてとんでもない」と、つまり、管理職≠社長と考えています。
ところが、多くの社長は、「管理職が俺の代わりをしっかりと務めてくれれば、会社は強くなる」、
つまり、管理職=社長と考えています。
どちらが正しいのでしょうか。
管理職の実務に目を向けてみましょう。
管理者には、概ね、3つのタイプがあります。
(1)放任型、(2)管理型、(3)役割設定型の3つです。
(1)の「放任型」とは、文字通り、リーダーが部下に任せきりになることで、これでは上手くいくはずもありません。
(2)の「管理型」とは、管理基準を設定し、これをしっかりと管理すれば上手くいくと思っているタイプのリーダーです。
たとえば、「営業担当者は、週に最低20社訪問しろ」、「月に100件提案しろ」といった内容を管理基準に設定します。
このタイプのリーダーも、細かいだけで、成果に結びつくことは少ないようです。目的の達成にかなった適切な手段が選択されているかどうかがネックになるからです。
成果をしっかりと出せるリーダーは、(3)「役割設定型」です。
このタイプは、目標を達成するための方針を自ら定めて、これをメンバー全員に徹底すると共に、メンバーの一人ひとりに対して明確な役割を付与します。
また、進捗状況を定期的にチェックし、適切な指導・支援を行います。これは、言い換えれば、優秀なPDCA型のリーダーともいえます。
この「役割設定型」のリーダーと社長とを比較してみると、実は、このリーダーも社長も全く同じことを実施しています。
社長も、会社全体の目標を決め、その目標を達成するための経営方針や経営ビジョンを明らかにし、組織を形成し、ミッションを与えます。
そして、定期的に会議を開催し、進捗状況を確認しつつ、指示を出します。
このことからも分かるとおり、組織を上手に運営できる管理者とは、まさに、特定分野の社長であるといえます。
皆さんは、自ら、管理職=特定分野の社長であると気概をもって、職責を全うすることが大切です。
■日本の組織構造から言えること
皆さんが、管理職≠社長と考えていても、実は、日本の会社の組織構造から見ると、皆さんは、もとより、管理職=特定分野の社長、と位置付けられています。
ご案内のとおり、日本の会社は、トップダウンではありません。また、決してボトムアップでもありません。
実態は、ミドルアップ、ミドルダウンであって、中間管理職がその「要」に位置します。
つまり、皆さんは、社長と比べて管理スパンこそ小さいものの、特定分野の社長であり、この職責を全うしなければならないという宿命を自ずと背負っているのです。
皆さんは、社長職に適う自分力を身につなければなりません。しかし、慌てる必要はありません。
本日、ここで、社長職に適うためのポイントをお教えします。皆さんは、会社に帰って、しっかりと実践すればいいのです。これによって、会社に貢献でき、確かな自分力が磨かれます。
■管理職として常にベースにおくもの
これまでの話を、管理職の心得として以下に整理します。いくつか内容を追加していますが、6点あります。
(1)「自分の夢は自己責任において実現します」という覚悟を決める。
(2)会社は目的追求型の組織であり、目的達成を明確に意識したリーダーを目指す。
(3)このために、達成すべき目的、与えられたミッションが何かをしっかりと確認する。
(4)自分力の中身が、達成すべき目的、与えられたミッションに適合しているかをチェックし、欠けているものは自ら即補う。
(5)ルール(=権限規定)、ビジネス倫理に精通し、自らにも部下にも厳しく対応する。
(6)困ったとき、悩んだとき、必ず一呼吸いれる。
ご参考に、ある会社の人事部長が、初任の部長や支店長の一人ひとりにお願いしていることを紹介します。部長(支店長)という言葉を管理職に置き換えて、内容を噛みしめてください。
「あなたは、昇進して、初めて部長(支店長)を経験します。いうまでもなく部長(支店長)は、その部署の"最高"責任者であり、"最終"責任者です。後には誰もいません。
この本当の意味を、あなたはこれから体験します。
しかし、いくつかの事例を経験して、やっとこの意味がわかりましたというのでは、会社にとっても、あなたにとっても不幸です。決して気負う必要はありませんが、2つのことをお願いします。
(1)自ら組織をリードし、お客様と会社に貢献するという強い意志と信念をもつこと、
(2)組織がよくなるのも悪くなるのも、すべては自らのリーダーシップにあると認識すること、の2つです。
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最後まで、お読み頂きましてありがとうございます。