『・・・・・敬愛するトップからこのような態度で迫られれば、部下としては必死に教えざるを得ません。だから寸暇を惜しむように勉強して、よりよい結果を出そうとした。また井深さんもそれを応援するように、「仕事の報酬は仕事だよ」とよく言っていました。いい仕事をすると、もっとおもしろい仕事ができるようになる。これこそ人生最大の喜びじゃないか、というわけです。こうしてエンジニアは純粋に探求心を燃やし、「サムライ」に育っていったわけです。』
『「指導者」研究 ひとを動かす言葉の力 井深大 「仕事の報酬は仕事」』(天外伺朗、文藝春秋2010年3月号)
先週は、ソニーの創業者である井深大氏の「仕事の報酬は仕事」という言葉から、やる気や動機づけについて考えてみました。今週はその続きです。
■やる気が先か、行動が先か
「何もやる気がしない」というやり取りが日常生活でなされることがあります。やる気が出てきたから行動を起こす、やる気⇒行動という順序です。ところが脳科学の研究によると、やる気があるから行動を起こすのではなく、行動を起こすからやる気が出てくる、行動⇒やる気という順序が成り立つそうです。(「海馬-脳は疲れない」池谷裕二、糸井重里著、新潮文庫、2005年)。
楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいと通底した考え方です。やらないとやる気が出てこないということであるなら、やる気の有無に関わらず、まずはやってみることが大切になってきます。
■「やる気をコントロールする」という発想
本稿では「仕事の報酬は仕事」という井深氏の言葉をきっかけにして、動機づけ、やる気について心理学と脳科学の枠組みを借りて考えてきました。つまり、高い成果をあげるためには内発的動機づけが重要で、それを高めるには自律性と有能感が欠かせないこと、そして行動重視-そもそもやらないとやる気がでない- ということでした。
上司は部下のやる気、あるいはご自身のやる気を高めることに日々、腐心されていることと思います。やる気は自然発生的に出てくるのを待つものではなく、コントロールできるものだという考えを持ち、その仕組みを理解して部下や自分自身のやる気のマネジメントに取り組んでいくことが必要ではないでしょうか。
☆次週につづく!