■お客様の「心に入る」営業を目指して
---システムの仕事の後は何をされていたのですか。
◆3年ほど証券の営業をしていました。もともと証券が好きだったものですから。
---個人を対象とする証券の営業では、お客様との関係は、SE時代とはかなり違ったものだったのではありませんか。
◆システム構築の仕事では、基本的にお客様のニーズは明確になっていて、実現したい事は山ほどあるわけです。しかし多くの場合、証券営業では、お客様にニーズはありません。
---ということは、ニーズを聞き出して販売をするご苦労があったのではないでしょうか。
◆いえいえ、私は売ってないんです。私は単なる証券好きですから。お客様の所で、これいいですねとか、そんな与太話をしながら、お客様が良いと思ったら販売するというやり方でした。証券というのは、無理やり販売しても後でしこりが残ります。
ですから、ご自身で判断していただける関係を築くことを大切にしていました。そういう意味では、悲壮感はなく、楽しくやっていましたね。
その頃は営業で東京中まわりましたから、楽しかったです。都内に住んでいても、普通は下車することのない駅ってたくさんありますよね。たとえば「沼袋」とか行きますか?行かないでしょう。各沿線の駅の周辺を開拓して歩くことにも楽しみがありました。
証券の営業は、人の心に入る仕事ですから、ただ単にがむしゃらでもだめなんです。心のひだに入る方法にはいろいろあると思います。自分で実際に経験し、失敗を重ねながら、よりよいアプローチができるよう、検証していくことが大切なのです。
システムの仕事も同じですが、すべて「トライ・アンド・エラー」なんですよ。自分で仮説を立ててみて、それを実際にやってみて、検証する。成功している営業さんも同じで、仮説を立てて、検証するということをして有効にエネルギーを使っているのだと思います。単にいいお客をあてがわれたわけではないんです。
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■今の仕事への姿勢が、将来の自分をつくる
---営業職の経験の中で、印象に残っていることはありますか。
◆営業は非常に面白い仕事だと思います。証券の営業は、本当にピンからキリで、怠けようと思えばいくらでも怠けられます。逆に、努力をおこたらない方は本当によく働きます。この差異が、短期的には結果に如実に反映しないところは面白いですね。とはいえ、長い時間がたつと、確実に違いが現れてきます。
これは営業に限りません。たとえば、企業の内部でシステムや製造の仕事をしていても、やる気のある人は見えないところで人並み以上の努力をしているものです。水面に浮かぶ白鳥と同じです。上からは優雅に見えますが、水中では、見苦しいぐらいに足をばたばたさせているわけです。
逆に、「私は営業ですからそこまではできません」というように、自分で自身の仕事の範囲を限定してしまう姿勢では成長は望めないと感じます。仕事に向かい合う姿勢が、将来どこまでの仕事ができるかを左右しますから。
■「使われる」ものを作りたい
---業務の上で大切だとお考えになることはなんですか。
◆人生において、何にモチベートされるのかはその人によって様々です。私の場合は単純に、「売れる」もの、みなさまに「お金を出したかいがあったな」と喜んでいただける、何か良いものを提供していきたいと考えています。
システムによって、という意識は強くありません。私が絡むものはシステム系のものになるかもしれないけれど、売れればなんだっていいのです。
なぜ売れる商品やサービスであるべきなのか。それは、「使われるもの、ニーズのあるもの」が「売れる」価値を持つからです。たとえば使われなくなった電化製品は、壊れていなくてもガラクタと同じですよね。ニーズがなくなったからです。システムも同じです。システムは形がないのでわかりにくいですが、いくらすばらしいシステムでも使われなければただのゴミと同じです。だから、使われるもの、売れるものを作っていきたいと思うのです。
4回にわたる長連載にお付き合いいただきありがとうございました。いかがだったでしょうか?
また、次週から、面白いネタをお届けします!!