■交渉の3つの型
◆交渉には 「功利的説得」、「規律的説得」、「情緒的説得」という3つの型があるということです。
◇それぞれどのようなものなのでしょうか。簡単に説明してもらえますか。
◆まず、「功利的説得」というのは「こうしたら儲かります」といった、相手の損得に対して働きかけるものです。「規律的説得」は相手の規範意識、例えば「これが決まりです」といったものに対して働きかけます。「情緒的説得」というのは「お願い」で、相手の感情に訴えかけます。実際の交渉では、この3つを織り交ぜてやっているんですね。
◇なるほど、確かに言われてみればそんな気がします。
◆「功利的説得」というのは、こうすれば儲かりますよって事なんですが、これが交渉の王道ですよね。ただし実際には、これだけではなかなか交渉には勝てない。だから、相手の規律意識、規範意識に働きかける。例えば地球環境を守れみたいな、理由はよく分からないけれど、 なんとなく正しいようなことを言うんですね。世の中で多分正しいだろうことを押しつけてるだけだから、相手によっては反発するんだけど、そういったことを織り交ぜる。
あと、「情緒的説得」っていうのは、例えば「あなた、それ人間としておかしくないですか」みたいなもので、相手の感情を突く。ただ、こればっかりやっていると人柄が悪く見える。だから、あまりやりすぎない方がいい。ただ、功利的な説得だけだと、なかなか打開できないときがあるから、そのときに規律的・情緒的説得を織り交ぜるといいです。
研修では、この3つの技法を織り交ぜて交渉するということを、まず座学で学んでいただいて、ケーススタディを徹底的にやります。
◇たとえ相手を説得しても、納得してくれなければ相手は動いてくれないと思うのですが、そのあたりはどうなんでしょうか。
◆ですから、最後にはお互いに歩み寄るってことを練習します。自分の意見を徹底的に通す、説得・交渉の訓練も行うんですが、その後お互いにどうやって歩み寄ったらいいかを学びます。交渉が下手なタイプに、我を通しすぎる人が居るんですね。
ディベートが得意な人に多いんですけどね。 そういう人は自分のプライドや立場を守ることにこだわりがちなんですが、無理やり和解しろと言われたら、和解状況を考えざるを得ませんよね。
だから、シミュレーションでもいいから、それをたくさん練習してもらいます。そうすると上手に交渉ができるようになるんですね。突っぱねる交渉も和解する交渉も、両方できるようになれば無敵ですよね。
◇交渉というと、ロジックを駆使して相手を説得するというイメージがありますが、 論理力というのは、交渉でどの程度必要なんでしょうか?
◆論理的なだけでは説得はできないんですね。論理的であればあるほど、説得とか交渉には弱くなってしまいます。というのも、論理って言うのは100%正しくないと論理にはなりませんよね。
ところが、実際の交渉というのは確からしいものを重ねていくんですね。ですから、論理的であろうとすれば推定のようなものが使えなくなってしまう。だから、論理的な説得・交渉というものを意識しすぎると、少しシンドくなることが多いんですね。
◇実社会では、100%確かなことってあまりないですからね。
◆まずありませんよね。だから、ロジックのみの説得って言うのは子供っぽいものになってしまう。あとは、情緒的説得ばかりでも子供っぽいものになります。 「どうしても嫌」とかね。品がなくなってしまう。あと技法以外で非常に大切なのは、人柄なんですね。
◇そういえば、最初に「生身の人間が、全人格を使い戦うのが交渉」とおっしゃっていましたね。
◆自分はいい人ですよ、世の中に対して誠実ですよっていう顔を見せなければならないんですよ。だから、しっかりとした格好で、にこやかに笑っていなければいけないんですよ。
ベンチャーの社長とかがカジュアルな格好で交渉に出てきたりするんだけど、そうするとあいつは変わり者だって思われてしまう。相手は警戒するから、その時点で大きな勝ちは取れなくてしまうんですね。だから、マナーや服装なんかをしっかりして、自分の仲間だって思わせることも大切なんです。
また、業務知識もしっかりなければいけない。たとえば、自分が全く知らない捕鯨についての交渉をやれって言われても、それは勝てませんよね。だから、その分野の仕事のプロでなければならない。さらに、長期的に勝つか、短期的に勝つかっというものもあります。交渉の場で勝っても、嫌われてたらその後の仕事は進まなくなりますよね。 インソースの研修では、オーダーメイドのケーススタディを使い、実際に交渉をやってみるっていうのがポイントです。準備をしたうえでの交渉を体験してみる。
そして、これがとても楽しい。これがこの研修のポイントですね。 なぜこのような研修ができるかって言うと、うちの講師はビジネスの現場で実際に交渉をやってきた人だからなんですね。 ビジネスのプロで、長期手に勝ってきた人たちなんです。その講師が、事前にその業界のことを勉強した上で研修をします。
最後は宣伝が過ぎましたが・・・(笑)。