(前回からのつづき)
◆その4.いい商品・サービスを提供することの重要性を再認識する
新車を購入するとき、ディーラーから「これはニューモデルだから値引きしません」とよく言われます。彼らも強気です。この背景には、ニューモデルに要した莫大な開発費を早く回収したいとするメーカーの思惑があります。
それにしても、彼らは、なぜ、ニューモデルに販売単価を高く設定できるのでしょうか。
それは、ニューモデルが競合する他社の既存モデルよりも機能やデザインにおいて優れているからです。いい商品・サービスの提供は価格設定を有利にします。そして、営業を楽にさせます。
皆さんの会社の商品・サービスの内容や、開発体制は、この点を十分ふまえているでしょうか。
◆その5.変わる競争形態~どこで競争し、どこで利益を確保するのか
家電製品やOA機器などの販売は、すさまじい価格競争にさらされています。マージンが圧迫され、損益分岐点を確保することがやっとというメーカーや量販店も多いはずです。消費者が一回限りの購入で長く使用する商品は、価格競争が激化しやすく、会社の利益が圧迫されがちです。
このような中で、価格競争と利益確保を分けて考えるというビジネスモデルが生まれてきました。
たとえば、プリンターは安く売っても、プリンターの購入後に消費されるインクと用紙の販売で利益を確保しようとするものです。
いわば、"損してもと取る"的な発想です。この手法は、携帯電話の販売にも使われました。このような動きが、実は、広がりをみせています。
昨今、どの銀行も住宅ローンの金利優遇販売に躍起になっています。
これは、住宅ローンが成約すれば、その後に、給与振込みや公共料金の引き落しが獲得できること、また、ゆくゆくは退職金の運用ビジネスにつながるからです。
ある自動車メーカーは、傘下に、証券業務が可能な金融会社を有しています。
これは、高級自動車の購入者に、富裕層向けの投資信託を販売することを目論んでいるからではないでしょうか。
皆さんも、自社の事業について、どこで競争し、どこで利益を確保するのかを、是非、検討してみてください。
◆その6.マーケットの成長性に対応したコスト戦略の選択
利益を確保するうえで、コスト面に目を向けることも忘れてはいけません。損益分岐点分析は、この点についても、大いに示唆的です。
たとえば、マーケットが拡大し、売上高が増加すると予想されるとき、どのようなコスト戦略を取ればいいのでしょうか。
この場合、売上高が増加しても、総費用が増加しないように、変動費を固定費化することが得策です。高度成長期に、積極的な設備投資が行われたのはこのためです。
一方、マーケットが縮小し、売上高が減少すると予想されるときはどうでしょう。売上高の減少に歩調を合せる形で、総費用が減少することが望まれます。
このためには、逆に、固定費を変動費化することが得策です。バブル経済の崩壊後、会社は挙って人員を削減しました。また、外注化も積極的に活用されました。これらは、固定費を変動費化するためのものです。
皆さんは、以上を踏まえて、マーケットの成長性を掌握した後、コスト戦略についても、しっかりと検討してください。
◆その7.リスクの掌握~わが社が生き残るための最低条件は何か
会社は、なんとしても生き残らなければなりません。
このための条件は、プラスの利益を確保することです。
皆さんの会社は、売上高を何割失うと損益分岐点売上高をヒットするのでしょうか。
まず、この点をしっかりと掌握してください。そして、この状況を引き起こすリスクが何かをしっかりと洗い出してください。
利益が少ない会社は、ちょっとしたことでも損益分岐点売上高をヒットします。また、好業績を維持している会社でも、工場で大事故が起これば、操業度が低下し、これを起因にして売上高が大幅にダウンすることがあります。
コンプライアンス違反を起こせば、顧客離れが起き、売上高が一気に減少します。国内マーケットでの急速な高齢化が、売上高減少に拍車をかけるかもしれません。競合他社の新しい技術が、自社の主力商品の売上高を直撃するかもしれません。
会社は、生き残るために、どれほどの売上高を最低限維持しなければならないのでしょうか。そのために、どのようなリスクを想定し、どのような手を打たなければならないのでしょうか。
損益分岐点分析を、このようにリスク管理に役立てることも大切です。
◆その8.売上高を正しく因数分解する
事業に精通するための8つのポイントの最後として、皆さんに、どのような戦略や施策を打てばいいのかがすぐに分かる方法を伝授します。
その方法とは、売上高を正しく因数分解することです。
皆さんも、これに「なるほど」と思えるのではないでしょうか。
たとえば、わが社の売上高が営業人員比例型であるとします。つまり、因数分解の姿として次のような式が成り立っているとします。
「年間売上高=商品単価×営業人員1人あたり年平均販売数×営業人員数」
これが正しい因数分解の姿であれば、「売上高を5%伸ばす」ために打つべき戦略や施策は、自動的に決まります。
一つは、営業人員を5%増やすことであり、もう一つは、営業人員一人あたりの年平均販売数量を5%アップさせるための手を打つことです。
現下の因数分解モデルを改善して得られる効果に限界がある場合には、このモデルを刷新することも必要です。「店舗販売ではなく、インターネットを活用したセールスモデルを導入しよう」などは、まさに、因数分解モデルの入替えにあたります。
因数分解モデルを入れ替える際には、くれぐれも、現下のモデルがもつ収益性を徹底的に追求したかをチェックしてください。これによって、新モデルの構築に役立つ情報が数多く得られるからです。
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