■「リスクのインフレ」と「多重チェックによるリスク対策」
リスクについて注意したいのは、1つは、「リスクのインフレ」もしくは「リスクの洪水」が起きていて、どれが一番優先順位の高いリスクなのかわからなくなる点です。
もう1つは、何かトラブルが起き、組織としてすぐにその問題に対処しなければいけない場合に、手っ取り早く「人を増やしてチェックを厳密にすればよい」という対応方法に頼ってしまうという点です。
チェックする人が増えてしまうと、誰もが無責任になってしまい、結局はリスクヘッジになっていない場合が多いのです。
対象とするリスクを増やす、チェッカーを増やす、どちらもトラブル回避のためにとった行動ですが、さらなるリスクを生んでしまっています。
しかし、これは職場では非常によくあることです。
リスクを軽減するためには、優先順位の明確化と責任の明確化が必要です。
みなさまの職場も、優先順位の明確化と責任の明確化を打ち消すようなリスクヘッジ策がなされていないか、一度チェックいただければ幸いです。
■リスク対応のマニュアル化は有効か?
仕事でトラブルを起こしてしまいますと、必ず再発防止策を考えなければなりません。実現可能かどうかは別にして、最も「書きやすい」再発防止策は、「マニュアル化」です。
しかし、マニュアル化は、時にそのマニュアル自体が、リスクとなってしまうこともあります。長年更新されていないマニュアルがその代表例です。
マニュアルを新規作成する時は、作成意図が明確なため、時間と労力をかけて作成されるのですが、メンテとなると、新規作成時の熱意を持って見直されることは多くありません。
よって、マニュアルによってリスクの軽減を図る決断をする時に、今後、どれだけ時が経っても、担当者が変わっても、今後ずっとそのマニュアルのメンテを失念しないという決断も同時に行なう必要があります。
マニュアルは生き物です。鮮度があります。
よって、マニュアル化を行なう場合には、「ページ数を少なく」「絶えず誰かが使用する」ことに留意して作成することをおすすめします。
ちなみに私は、業務リスクに直結する重要なマニュアルは、差し替えが簡単なリング式のファイルで作成するようにしています。
マニュアルの更新の一番の障壁は「手間」なのですが、ニ番目の障壁は、「コスト」です。全部で300ページあるマニュアルのうち、重要なオペレーションだからと言って、4ページだけを修正するのに予算は取りづらいからです。
よって、そのような場合は、「差し替えページ」を作成するのですが、差し替えページは、その名のとおり、ただ、差されている場合が多く、ほとんどの場合は、すぐに該当ページは紛失し、改訂があった事実は忘れ去られます。
初期コストは少々かかりますが、支店や支社がたくさんあり、多くの場所で多くの人が使うマニュアルなどには有効な手段です。こちらもよろしければ、是非ご実践ください。
☆この項終わり。次回もお楽しみに!
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