今回もバーチャルマネジメント研究所のコンテンツよりお送りします。
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上林 憲雄氏(Norio Kambayashi)
英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、
2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。
専攻は人的資源管理、経営組織。
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人的資源管理モデルでは,経済的な側面での契約のみならずいわゆる「心理的契約」の重要性が強調されています。
また,人的資源管理パラダイムにおいては,従業員の職場学習(learning)の重要性が認識されており、人をみる視点が人事労務管理パラダイムからは180度転換したともいえます。
■集団よりも個々人の動機づけを考慮
さらに,人的資源管理のモデルでは,組織成員を集団的に取り扱うのではなく,従業員個々人に対しフォーカスを当て,個々人の動機づけを考慮しながら組織目的の達成が目指されています。したがって,人事労務管理の時代にあっては重要であった労使関係的側面,つまり職場における労働組合代表者の役割や従業員全員と経営者との対立関係といった集団的側面は影が薄くなっています。
世界的視野でみても,人的資源管理という考え方が勃興してきた時期と労働組合員数が減少してきた時期とはほぼ合致しています。
■集団のやる気,個人のやる気
ちょっと話は横道にそれるかもしれませんが,いわゆる「やる気」を表す用語として,「モチベーション」という言葉を,最近では日常用語としても,よく使いますね。
・・・ただ,このモチベーションという用語は,皆さんあまり気づかずに用いていますが,実は"個人"を前提とした場合の用語なのです。アメリカで発展した行動科学という学問領域の影響を受け,それが日本にも"輸入"され,日本の企業経営の現場にも普及して使われている用語です。
では,集団の「やる気」のことは何と呼ばれるかご存じでしょうか?
・・・実は,それは「士気」(しき、モラール,morale)と呼びます。
戦闘部隊のような集団が任務を遂行するにあたって重要となる,兵士の心理的積極性や根性を指して,この士気という用語が使われることが多かったのですが,この語は日常用語としてほとんど聞かなくなったことからも窺えるように,集団単位ではなく個々人の動機付けの方が,人のマネジメントの世界でも重要視されるようになってきたのです。
次回は,こうした人事システムのパラダイムの変化と日本企業の経営システムとの関係について触れてみたいと思います。
★次回につづく
「きみは営業に向いてない」
周りの人にさんざん言われていながら入社早々営業担当になってしまった中島が伝える、営業の頑張り方