【日本的人事システムの先進性】
日本的人事システムの先進性 【5】
◇上林 憲雄氏(Norio Kambayashi)◇
英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、
2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。
専攻は人的資源管理、経営組織。
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かつて,生産や品質管理,マーケティングの領域でも傾向はほぼ同じで,アメリカ発の理論の何が「ベスト・ソリューション」であり,どうすれば日本企業はアメリカの「合理的な経営」に追いつけるかが探求されてきました。
では,人事システムではどうなのでしょうか。他の領域と同様,1つのパターンへと収斂していくのでしょうか。今回はこの点について説明します。
■万能ではなかったアメリカン・システム
モノやカネ,情報のマネジメントの領域と同様,人のマネジメントの領域でも,20世紀末から21世紀初頭にかけて,アメリカ型の職務主義や成果主義人事,エンプロイヤビリティ(employability,雇用されうる能力)の考え方など,雇用流動型の仕組みを導入しようとする動きが,かなり多くみられました。
しかし,その結果はどうだったでしょうか。
先に結論を述べるならば,それらのアメリカン・システム導入へ向けた性急な動きは,ことごとく挫折してしまっています。
■職務主義? 成果主義?
周知の通り,昨今の日本企業では,アメリカン・スタイルの厳格な職務主義の導入は所詮無理であるとの認識が拡がり,職務を大括りに捉えて従業員との対応関係を柔軟に運用する「役割主義」人事が提唱されるようになりました。
また,アメリカ型のドライな成果主義の弊害が露呈するようになり,そこで人材育成と両立しうる「ポスト成果主義」のあり方が真剣に議論されるようになっています。
■メイド・イン・ジャパンはハイ・クオリティか?
製造現場では,短期的な経済的動機から働こうとする一部の非正規社員が増加したことによって,かつての日本のトレードマークであった「安心・安全」に揺らぎが生じ,ハイ・クオリティ製品の代名詞でもあった"メイド・イン・ジャパン"のイメージも崩れてきてしまっています。
したがって,そこから,非正規社員をも含めた教育訓練体系や人材育成の仕組みを真剣に再考せざるを得ない段階にさしかかっていると言われています。
例えば1994年,日本航空をはじめ日本のエアライン各社に非正規の客室乗務員を導入するというニュースに,空の旅の安全性に危惧を抱いた人も多かったはずですが,そもそも会社に対する忠誠心があまり高くない非正規社員にどういった教育訓練が有効なのか,悩ましい問題です。
「きみは営業に向いてない」
周りの人にさんざん言われていながら入社早々営業担当になってしまった中島が伝える、営業の頑張り方