【―日米間で大きく異なるMBA教育―】
―日米間で大きく異なるMBA教育― 【2】
◇上林 憲雄氏(Norio Kambayashi)◇
英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、
2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。
専攻は人的資源管理、経営組織。
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■日米で異なる取得目的
私はかつて,日本のMBA生や大学を対象に実態を調査したことがあります。実態調査の結果,受講生のMBA取得の目的が日米で大きく異なることがわかりました。MBAという資格の取得がすぐに,より条件のよい企業への転職につながるのがアメリカです。これに対し,日本のMBAコース受講生は転職につなげようという動機はほとんどなく,むしろ他社とのつながりを探り,他社の情報を得たり,純粋に経営学上の理論や知識を学習したりするためにMBAコースに入学してくるケースが大半であるということがわかりました。
■実践志向の濃いアメリカのMBA教育
加えて,MBAコースで教育される内容についても,日本とアメリカでは大きく異なることもわかりました。アメリカのMBAでは,すぐに実践に役立つ分析ツールや実際のケーススタディを中心にディスカッションをさせて考えさせるスタイルの授業が中心です。もちろん,一口にアメリカといってもスクールによって相違はあります。よく知られているように,例えば老舗のハーバード経営大学院はケーススタディで有名です。大学院によって,科目ごとに得手不得手もあると言われています。
■社会科学から出発した日本のMBA教育
これに対し日本のMBAスクールでは,どちらかというと理論ベースで展開され,すぐに実践のための手法を教えるというよりは,(とりわけ90年代の開設当初は)社会科学(social sciences)のアカデミズムの延長線上という位置づけで教育されていたことが多かったようです。日本の大学では,これまで社会人への教育経験のない教員が大半でしたから,大学サイドの事情として,学術研究の延長線上としてMBA教育も位置づけざるを得ないという事情もありました。アメリカではビジネスはsocial science の一分科ではなく,もちろん自然科学(natural sciences)の分科でもなく,いわゆる実学として独立した1つの領域という認識です。
■役に立つMBAへ向けて
このように同じMBAと呼ばれる資格でも,日米間でその内実は大きく異なっています。では具体的に,日本のビジネススクールでは,何をどのように教え,受講生はどういった能力を身につけることができるのでしょうか。社会科学の延長線では「役に立たない」のでしょうか?次回はこうした点にフォーカスを当てて考えてみることにしましょう。
☆次回もお楽しみに!
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