【女性管理職育成へ向けての第一歩】
女性管理職育成へ向けての第一歩 【2】
◇上林 憲雄氏(Norio Kambayashi)◇
英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、 2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。専攻は人的資源管理、経営組織。
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■女性はチーム作業に向かない!?
一般に、現場で実務に携わっておられる方々の間には、「女性はチーム作業に向かない」という認識がかなり浸透しているようです。私の知り合い(男性)もそう言っていましたし、インターネットのブログでも、そのように書かれている方も居られます。
例えば、「智子のブログ」には、次のようなストーリーが書かれています。
「有能な女性は人に頼らなくても一人で簡単にこなせるけれども、男性は出来ないため、人に頼りチームで仕事をすることを学ぶ」、「女性には20歳代からハードルを上げて男性以上の仕事を与えていかないと、組織やチームで仕事をするメリットを学ぶチャンスがなくなり、30歳代でいざ大きな仕事をしようとしてもこなせず、なかなか管理職になれない」。
同感される実務家の方々も多いでしょう。
■女性管理職が少ない理由?
以前このメールマガジンでも触れたように、チーム作業は日本企業の最たる特徴の1つですから、もしこの「女性はチーム作業が苦手」という認識が正しいとすれば、他の諸国に比べてとりわけ日本企業で女性管理職がなかなか育たないのも首肯できます。
ただ、果たして本当に「女性はチームワークが苦手」なのでしょうか。
■心理学の実験から
一般に、女性の方が男性よりも、一緒に居る周りの人と社交的に会話をし、うまくなじんでいく能力に長けていることは、日常の経験からもよく知られています。例えば男性の知らない者同士の場合には、暫く一緒に過ごしても無口の状態が延々と続くのに対し、女性同士だとうまく会話のきっかけを探しだし、互いになじんでいくことが多いようです。これは心理学の実験結果からも確認されています。
もしこれが事実であるとすれば、女性はチームワークが苦手という一般の認識とは整合性がとれなくなってしまいます。では、そうした誤った認識が流布しているのはなぜでしょうか。
そもそも女性の数が少ない!
その理由は、ずばり「職場に、一緒に仕事をする女性の数が男性に比べ圧倒的に少ないこと」に依ります。職場で働く状況で、女性が男性よりも極端に少ない場合には、女性は自分が(男性ではなく)女性である、ということを意識した行動をとらざるを得ないのです。つまり、無意識のうちに、自身の性を深層心理に抱いたまま、仕事をせざるを得なくなってしまうということです。
■簡単なエクササイズ
このことを簡単なエクササイズによって確認してみましょう。深く考えることなく、次の図を見てみて下さい。どういったことに気づかれるでしょうか。
X x X X O X x X X X
多くの方は、この図をぱっと見て、「Oが目立っている」とか「Xの方が多い」と感じるでしょう。その通りです。ただ、よくよく見れば、Xにも大きなXと小さなxが混ざっているということに気づくはずです。
この図でOを女性、Xを男性というように置き換えてみて下さい。女性は職場に1人しか居ないと、この図のようにとても目立ってしまうのです。実際には、男性にも大きい人が居たり小さい人が居たり、声のよく通る人が居たりそうでない人が居たり、というように、性以外にもいろいろ違いがある(Xとx)はずです。にも関わらず、女性が少数だと、「性」の相違のみがやたらと強調されてしまい、女性はしたがって女性という性を意識した行動をとってしまわざるを得るのです。
■性の呪縛からの解放を
チーム内に女性が1人しか居ないと、女性はなかなか他のチームメンバーに相談しづらく、1人で仕事をしてしまうような状況が多くなってしまいます。そこから「女性はチーム作業が苦手」という認識が出てきてしまうのではないでしょうか。もし、逆に女性が多い職場で男性が少数派なら、「男性はチーム作業が苦手」という認識になっていたかも知れません。女性管理職を増やすファーストステップは、女性の数を増やしてチームを組織し、性を意識しなくてすむような状態で仕事に従事できるようにしてやることがまず必要です。
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