【聞かせるプレゼンテーションのために】
聞かせるプレゼンテーションのために 【1】
◇上林 憲雄氏(Norio Kambayashi)◇
英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、 2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。専攻は人的資源管理、経営組織。
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■プレゼンテーションの場
これまで,メルマガの当コーナーでは,論理的思考法のコツやユニークな発想法の基本について触れてきました。実務家の方々にとって,具体的なビジネス上の交渉や上司との面談の場で最も肝要となるのが,いかに自分の考えたユニークな発想やアイデアをうまく相手に伝えるかのプレゼンテーションの場です。
■プレゼンはこわい
どんなに優れた着想やアイデアを思いついたとしても,その伝え方がまずいと台無しです。内容が大して無いのにプレゼンだけがうまいのも考え物ですが,いかに内容がよくてもプレゼンがまずいと全体の心証が悪くなってしまいます。伝えようとする相手には,プレゼンによってのみ伝えられるわけですから,プレゼン技法に通じておくことはビジネスの場で非常に重要なポイントとなるはずです。
実は,プレゼンは,きっちり聞く能力を持った人から見れば,話し手の伝え方次第で,よくできる社員かそうではないかが明瞭にわかってしまう,とてもこわい場なのです。
というわけで,以下では優れたプレゼンをするためのコツについて,いくつか紹介しましょう。
■大きな声で
基本中の基本は,大きな声で自信を持ってプレゼンすることです。このことはどんなものの本にも書かれていますし,読者の皆さんも経験的によくご存じのことだと思います。「自信を持って話せないから困っているのに・・・」という声を聞くこともありますが,まずは腹式呼吸で大きな声を出すように努力をすることから始めて下さい。
こうした点ももちろん重要なのですが,以下で私が紹介したいのは,こうしたテクニカルな点よりも,むしろプレゼンの組み立ての仕方についてです。
■伝えたいメッセージを明確に
優れたプレゼンテーションをするためのファーストステップは,「伝えたいメッセージ」を明確にすることです。そして,その前提は,まず何よりも「伝えたいメッセージが,ちゃんと存在する」ことが重要なポイントとなります。
何を今さら当たり前のことを・・・と思われる方も多いかもしれませんが,意外や意外,ビジネスの場のプレゼンでも,(あるいは学会の場での報告でさえも!)この伝えたいメッセージがそもそも存在しない,プレゼンに与えられた時間を単に何となくやり過ごしただけのプレゼンが多いことに驚かされます。
では,その明確化するべき"伝えたいメッセージ"は,そもそもどうやって探せばいいのでしょうか。
■"常識"は何かを考える
自分がプレゼンの場において他者に伝えたいメッセージを考える際に,まずしなければならないことがあります。それは,与えられたテーマであれば(もちろん自分自身でテーマを考えないといけない局面もあるわけで,その方がさらに難しくなるのですが),通常であればどのように考えるのが妥当か,つまり普通の常識人であれば,どのようにこのテーマを捉えるか,あるいはいま社内では(あるいは社会では)どういう空気なのかを,知っておくことです。
つまり,そのテーマの"常識"をまず知っておくということです。そこで,それをよく知らない際には,当然に自分自身でそのことをリサーチすることから始めなければなりません。
■"常識"は踏まえた上で,別の道筋を考える
リサーチした結果,常識がひととおりわかったとすると,次のステップは「本当にその常識通りでよいかどうか」を自分なりにいろいろと考えてみることです。そして,できる限りその"常識"とは違った角度からのプレゼンをする道筋がないかを考えることです。
当たり前の"常識"だけをプレゼンで長々と述べられても,聞く側としては全然面白くありません。プレゼンで伝えたいメッセージは,一般には考えられていないユニークなものであることが期待されるので,できるだけ常識とは違った視点で物事を捉えるよう努力しなければなりません。
ちなみに,その際にこのコーナーで前回取り上げた『荘子』のような逆転のものの見方が有用となるわけです。
☆次回もお楽しみに!
「きみは営業に向いてない」
周りの人にさんざん言われていながら入社早々営業担当になってしまった中島が伝える、営業の頑張り方