第10条 番外編教育担当者インタビュー
毎年何人ぐらい新入社員を採用されているのですか?
ばらつきはありますけど、ここ2・3年は60~70人です。
新入社員研修ではどんなことをされるのか教えてください。
新人研修は、今年から1次~5次の5回に分けて実施するようになりました。それぞれ行う研修の目的は全部違います。一つ一つはそれほど長い期間をかけて行うわけではありません。一番はじめにやるのが、学生から社会人に意識転換させる研修です。これを入社直後2週間ぐらいをかけて行います。ただ、どうしてもそこで会社の説明もしなければいけないので、実質的には半分ぐらいの時間しか研修に割けませんが・・・。
最初の研修では、社長などの偉い方がお話されることもあるのですか。
社長の訓示などは、入社式の時にあるだけですね。
4月に2週間ぐらいかけて意識転換の研修をした後は、次の研修はいつごろに行いますか?
2週間の研修を経て実際の業務に入ったものの、やはり見ると聞くとは違うということで戸惑ったり、業務についていけないと悩んでいる人間も多いんですね。ゴールデンウィーク明けには五月病みたいなものになって、苦しんでいる新入社員もけっこういます。
それで、新入社員をフォローする目的で5月のはじめに研修を行います。これは、新入社員をみんな集めて同期で話をさせて、やっぱり同期のみんなも同じように「苦労しているんだ、悩んでいるんだ」と知ってもらって、気分を楽にさせようというものです。現場から非常に好評でした。
その次に第3次の研修はいつごろ行いますか?
弊社は入社して3か月が試用期間なのですが、次の研修は試用が終わって正社員になるタイミングで行います。これからは試用の社員ではなく、一人前の社員だということを意識づけるために、6・7月ごろに1日研修を行います。
具体的には、社会人として働く意味や仕事の生きがいなどをもってもらうような研修を行います。いきなり新入社員にそういうことを考えさせるのは難しいですが、1次・2次の研修とは違い、完全に社会人としてこれからどんどん自分でステップアップしていかなければいけないというメッセージを我々として彼らに伝えます。
次は第4次ですね。
第4次の研修は10月の終わりぐらいに行います。2日間の日程で行う「野外体験研修」です。グループを組んで様々な課題を解決しながら次へ進み、最終的に点数を競うものです。
「野外体験研修」というのは具体的にどういうことをされるのですか。
オリエンテーリングと似ているのですが、ただ目的地を探すだけではなく、置かれている課題をみんなで考えるというものです。その課題は結構難しいものになっています。
課題といいますと、例えばどのようなものですか。
「その地点からどっちの方向に何度いったところに何かがあるので・・・」というような課題です。目的地への角度をなかなかわからなくしてあるなど、単刀直入ではなくちょっとひねって出しています。
それをみんなで知恵を出し合いながら、協力してどう課題を解決するかということが研修の目的です。こっちが思っている勝手なストーリーですが、この研修を通じて新入社員に「チームワーク」の作り方やその大切さを体験し学んでもらおうと思っています。
最後の5次の研修はどのようなことをするのですか。
5次は年度の終わりに全体を通してのまとめの研修を行います。3次(正社員の意識づけ)の研修の時点で、5次の時に「自分はこうなっているはずだ」ということを書いてもらいますが、自分が本当にそうなっているかということを考えてもらいます。
また、次の月には後輩が入ってきます。それに向けて、自分は後輩に対して仕事を教えられるだけのレベルアップができているかということを、最後にフォローアップします。
とても手厚い研修ですね。
手厚いですかね? でも、今言った5回の研修の流れで本人たちの中に入っていけば、効果は確実にあると思います。こっち側の思いというのはそういうものですが、本当にそれで新入社員が成長して活躍してくれれば嬉しいです。
5回の研修があって、そのたびに同期で顔を合わせて、周りはこんなに成長しているんだと刺激を受けるだけでもかなり効果がありそうですね。各部署ごとに新入社員一人一人のフォローを完璧に行うのは現実問題として難しいものですので、こうやって新入社員を全員集めて研修ができるというのはすばらしいと思います。
研修で大変なのはどのようなレベル感でやるかということです。幼稚園児に教えるようにやっても反発して逆効果ですが、かといって、今の子をあまり突き放してしまっても、きつい所がありますから・・・。その辺のレベル感・ペース配分などが難しいですね。
今回、弊社の研修を受講していただいた皆さまは芯がしっかりした感じでしたので、ある程度突き放しても平気な気がします。ただ、一般的には最近の新卒の方にあまり厳しくしすぎると困ることが多いかもしれませんね。次に、新入社員研修で注意されていることを教えてください。
やはり、新入社員の目を見ることです。やっぱり悩んでいる人間は死んだ目をしています。トロ~ンとした。眠くてトローンとしているのとは別ですよ。悩んでいることを、いかに早く見つけてやるかということですね。本人はなかなか言い出せないわけですよ。がんばれがんばれと言われてますから、なかなか弱音を吐くのが難しいんですよ。そこをどうやって見つけてやるかということなのですが、それも簡単にはいきませんからね。研修で集めた時以外には、ゆっくり時間をとって見ることもできませんから・・・。
どこの職場でも新人の方が弱音をなかなか吐きにくいということは分かる気がします。そういう苦しい思いを誰かが見つけて、それを吐かせてあげるのは本当に大事ですよね。
なかなかできないんですよ。しようと思わなければできません。
そのように、新入社員のSOSの兆候を見つけようとしてくださる方が研修担当者としていらっしゃるということだけでも本当に大きいと思います。では、最後になりますが、新入社員研修でご苦労されていることをお聞かせください。
いつも苦労していますが・・・(笑)。今年の研修はまだ終わっていませんのでなんとも言えませんが、大変というか、こちらで悩んでいることは、アンケート等で新入社員に自分の気持ちを出させることですかね。
なんとなく、彼らの答えがこっちが考えている研修の意図などを深読みして、「自分達はそれに対してこういう答えを出さなければいけない」という雰囲気が強いのではないかと思うんです。
あまりにもズバリと模範解答が出てきますので、もっと胸の内は違うのではないか、額面通り受け入れていいのかなと疑問に思います。
もちろん、打ち合わせはさせてないですよ。その場で個々人に書かせていますから。本当にそうかなのかもしれないですけどね。