この時期、外訪活動に尻込みをする営業パーソンが多いようです。活動を促すために、営業の意識改革に取り組む企業もありますが、これほど難しいものはありません。今回は、このような営業の意識改革に関してご紹介いたします。
営業の意識を変える仕掛けづくり
著者:インソースマネジメント研究チーム
1.営業の意識改革には、意識そのものを変えることに焦点を当てるよりも、行動を起こさせる仕掛けをつくることの方が有効です。
2.行動を起こさせる仕掛けとして、以下の4点が挙げられます。
(1)行動に移れない阻害要因を取り除くこと
(2)外訪活動に対する抵抗感対策として、きっかけづくりとなる武器を与えること
(3)前向き行動を永続的な活動とするために体験を促すこと
(4)組織レベルで前向き行動をするために核となる人材を配置すること
- ■営業の意識を変えるもの
- 営業力強化の相談を受けて企業の実態調査をしてみると、「営業強化」の掛け声に反して社員が動かない状況にある場合があります。このような状況は、単なる意識の問題と捉えられがちです。しかし、掛け声だけでは効果はほとんど期待できません。意識改革は、意識そのものを変えることに焦点を当てるよりも、行動を起こさせる仕掛けをつくることの方が有効です。
- ■「仕掛けづくり」その1:環境を整える
- 外に出ていかない(いけない)理由としてよく挙げられるのが、社内での仕事に時間をとられてしまうというものです。このように行動に移れない阻害要因は取り除いてやる必要があります。ある会社で、本部が営業店に膨大な数の報告書類を求めるケースがありました。本部や各部は、自部署が分かりやすいように営業店に同じデータを別々の様式で徴求していたのです。検討の結果、本当に報告させる必要があるものに極力絞ることで、営業店の報告に費やす工数を5分の1程度削減することができました。このように阻害要因を取り除き、やらざるを得なくなる環境を整えることが最初の仕掛けです。
- ■「仕掛けづくり」その2: 武器を与える
- 外訪活動に対しては心理的な抵抗感をもつ社員が結構多いです。何を話せばよいか、どう切り出せばよいかなどが抵抗感となっています。営業パーソンには話のきっかけづくりとなる武器が必要です。ある会社で外に出るための仕掛けとして、時季に応じて頻繁にキャンペーンを張ることを考えました。次々とキャンペーンを張ることで顧客にアプローチする理由ができ、話題提供もできます。営業の底上げを図るという意味でこのキャンペーンは大きな効果を上げることができました。外向活動の武器は、出かけて話ができるきっかけとなればよいのです。この武器によって、全員が外に出る契機をつくることができます。
- ■「仕掛けづくり」その3:ノウハウの拡大(成功体験の経験交流)
- 内部の業務処理を効率化して外訪時間を確保し、話のきっかけとなる武器を与える活動を永続的にするには更なる仕掛けが必要です。ある会社で、経験交流の仕組みを考えたことがあります。営業成功事例をシステムに載せ、誰でも新規登録、閲覧ができるものとしました。その結果、優秀な営業マンのノウハウが広まり、それを参考に誰でも行動し、自ら体験できる仕組みへと発展したのです。真の営業力強化とは、営業パーソンが自信を持って営業ができるようにすることです。そのために体験を促すような仕組みをつくることが必要です。
- ■「仕掛けづくり」その4:核となる人材を配置する
- 意識改革は非常に個人差があるものです。個人レベルの前向き行動を組織としての行動にまで拡げないと本当の意識改革とはなりません。個人の動きを組織の動きにするためには、核となる人材を行動の中心に据えて拡げていくしかありません。核となる人材を配置することは、その人が周辺に働きかけることの重要性もありますが、効果的なやり方が実際に目に見えることが大きいです。実際の行動を目の当たりにして、自らの問題として感じ取れることが一番効果的なのです。