他の業界に比べ、精密さが求められるIT系においては小さなミスが命取りとなるために、部下指導も慎重かつ丁寧に行われる必要があります。
ですから、育成担当者はできる仕事から少しずつ選び、仕事を理解させながら丁寧に噛み砕いて教え、少しずつ成果を出させることが大切です。
前回はこのようにIT系部下に、どう仕事を依頼するかについてお伝えしましたが、今回は仕事依頼をした後、どうフォローしていくかについてお話いたします。
■アドバイス・援助の与え方
仕事を依頼したら、その指示を理解できたか、内容を把握できたか、質問はないかなどを確認する必要があります。
指示を理解させた後は、部下にマニュアル・資料などを調べさせ、自分でよく考えさせることも大切です。実際に、作業をすすめる段階で初めて疑問が浮かぶことも大いにありますから、それぞれの段階で理解できているかどうかを確認します。部下のスキルに応じて、ヒントを与えたり、再度考えさせることも重要です。考えさせるために「君はどうすべきだと思うか」など、いろいろ質問してみることも有効です。
「自分で理解して、考える」というステップを繰り返すことで、「考える」習慣が身につきます。難しい問題や、迅速に対応する必要がある場合は、育成担当者が解決策を指示するか、その問題を引き取り、解決することで見本を示します。できる仕事から少しずつ進めさせることが大切なのです。
■報告したくないことを報告させる
報告をさせる、相談を受けるということは、部下がどういう仕事の運び方をしているのか、問題はないか、どんな気持ちで取り組んでいるかを把握する重要な仕事です。
部下は、「上手くできた」、「大きな見込み案件がある」など、よいことについては、すぐにたくさん報告・相談したい傾向があります。逆に「よく分からない」「うまく進められない」「悪い成果があった」などのよくないことは、後でさらりと報告したい、あるいは報告したくないと思ってしまうものです。
上司が把握しないといけないのは「よくないこと」ですが、表面的な報告を受けただけでは、正確な現状把握ができません。ですから、それをいかに報告しやすくするかという配慮が求められます。
そのためには「中間報告」を求めることが大切です。
指示を出すときに、「中間報告をして欲しい」と伝えます。これは、"結果が出てからでないと報告しにくい"という感じを緩和させる効果があります。
また、「どのタイミングで中間報告してほしいか」を伝えることも有効です。それにより、中間報告も仕事(任務)の1つと意識されます。その結果、作業途中での軌道修正を迅速に行うことができ、結果的に部下の仕事の成果が上がります。
部下に仕事を任せっきりにして、初歩的な段階でミスをしてしまうことがあります。ミスをしたままで仕事を続けさせても、仕事の手戻りが発生するなど、労力をかけたわりに結果(生産物)がともなわず、ヤル気も落ちてしまいます。そのようなリスクを回避するためにも、「中間報告」は非常に重要なのです。
■部下との対話を欠かさない
また、日頃から部下に話しかけたり、1対1の対話をすることも大切です。
「上司が気に掛けてくれている」と思わせることで、部下は安心して仕事ができるし、報告や相談のきっかけも与えることができます。また、仕事に対する意欲向上や退職防止の効果が期待できます。
特に、IT系においてはメールでのやり取りが多く、部下との対話が疎かになりがちです。だからこそ、部下と直接対話する必要があります。
部下にはメールでの報告に加え、必ず口頭(直接または電話)で報告させるようにします。特に緊急の場合はなおさらです。
「メールを送った ≠ 相手は読んでいる」ということを理解させるべきなのです。ただし、順番は逆でもいいでしょう。
第一報は電話または直接報告し、その後、詳細についてはメールでという方法です。これらのメールと口頭のダブルで報告することにより、仕事上のミスを減らすことができます。
社内におけるコミュニケーションが不足しやすいIT系では、たとえ仕事に直結しない内容であっても、意識して対話をするとよいでしょう。
対話時間の目安は1週間に15分~30分、新人に対しては、1日最低10分程度の対話を実施することをお勧めします。さらに言えば、対話の簡単な記録を残すことで、実施を確実に行い、相手の気持ちや傾向を知ることができます。
このように日頃のコミュニケーションにより、報告や相談ができる、いい関係を築くことができるのです。
次回もお楽しみに。