インタビューで聞く成功した人の「リアル」ノウハウ

 

インタビューで聞く成功した人の「リアル」ノウハウ

【第2回】「若手を成長させるためには」 ~岩永氏インタビュー『営業のマネジメントと若手の育成』

【第2回】「若手を成長させるためには」 ~岩永氏インタビュー『営業のマネジメントと若手の育成』

 ┏─────インタビューしたビジネスパーソン───────┓
        
       ◇岩永 拓家氏(Takuya Iwanaga)◇

証券株式会社入社後、支店営業課長として営業のマネジメントや、営業企画部時代には新入社員育成を担当。
その他、全社的な営業業務改革プロジェクトでも、コーチングの手法を用いて各支店への啓蒙及び業務改革の定着を図る。本店検査部次長を担当した後、独立。インソース講師。

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☆過酷な仕事が成長につながったプレイングマネージャー時代☆

―――その後、営業課長ということで、管理職になられたんですね。

◆実はですね、正式に営業課長になったのは、32歳で、吉祥寺支店に配属された時ですが、その1年くらい前、まだ九州の支店にいる時に、支店長から

「岩永、今日からお前がこの支店の営業課長だ。人事にも行っておいたからな」と言われ、実質、営業課長の職務を代行しました。

支店長が口頭で伝えただけですから、当然人事から通達もありせんし、肩書きもありませんでした。
本来こういうことはありえないことですが、その翌日から、私は支店の営業課長の役割を担うことになってしまいました。

そもそもこのありえない事態は、支店自体を更にスケールアップする、ということに起因していました。

そのような状況で、正式な通達もないまま営業課長の役割を背負うのですから、自分の数字も上げつつ、人の売り上げに関しても管理しなくてはならない、という非常に過酷な立場に置かれることになってしまったのです。

今でいうプレイングマネージャーですね。

◆その時、僕には役割はあっても、正式な肩書きがあるわけではないので、自分が数字を上げていないと、人にも言いにくいわけです。

自分の数字を作りながら、周りの人を引っ張っていくということを約1年やって、本当に大変な1年でした。

しかし、この1年がすごく自分の勉強にもなったんだと思います。この過酷な1年を経て、その後に吉祥寺に行ったので、僕はそのまますんなりとマネジメントができたんですね。

本来であれば支店の数字とかいろいろあるんでしょうけども、修行をしたおかげで全部クリアできていたので、部下を見る余裕の目線があったわけです。


☆長所を伸ばすことが成長へつながる☆

―――育成にはどのように取り組まれたのでしょうか。

◆その時、全部で6名の部下が僕のところにいたので、一番最初に、僕は3つ目標を上げたんです。

1つ目は年配者を出世させること、2つ目は、中堅社員をもう一段上の位にすること、3つ目は、新入社員2人を全店の1番、2番の営業担当者にすること。

このように皆の前で宣言しました。

◆「やるぞー!」「おー!」という感じで、皆でその目標に取り組む感じでしたね。新入社員の育成も、はじめは2人のうちの1人が少し遅れていたんですが、ある出来事があってから、すごく成長したんです。

ある日、彼が手紙を一生懸命書いているので、何の気なしに「何してるんだ」と訊いたら、「お客様が留守にされていることが多いので、手紙を書いてます」と言うんです。

見ると、それが心を動かすような、すごくいい文章になって・・・。

それを、すごいじゃないか、これはいいぞと言って、次の日の朝礼の時に皆の前で発表してほめたところ、本人もすごくモチベーションが上がって、どんどん手紙を書き出したんです。

そしてお客様が留守のところに置いていったら、その手紙を見て、大きな会社の社長と面談ができて、実際にすごく成果が上がったんです。

そのことで、その社員はすごく自信がついて、それからずっと順調に成長していって、2年後にはその社員が1番に、もう1人の社員が2番になりました。

でもその成長のきっかけは、本当にさりげないこと、というか一瞬のことですね。

その社員が書いている文章を見て、すごいぞとほめる。たったそれだけのことなんです。

◆もう1人の新入社員は、すごく努力家で真面目なんですけど、結果が出ないとすぐ落ち込むタイプだったんです。

◆でもそんなことない、と。

「お前のいいところはすごく真面目で、お客様の背中のかゆいところに手が届くような目線を持っているから、がんばれ」と言って励ましたんです。

そうしたらその社員も同じように、やる気になって。それに加えて、手紙でもう1人の社員が活躍しだしていたので、相乗効果もあって、2人で1番2番になりました。

◆その時に思ったのが、マネージャーとして大切なのは、人間の(特に若い人は)良いところを早く見つけてあげて、そこを伸ばすことです。

自分なりの得意技が1つみつかれば自信になりますし、それを軸に違うことにも挑戦してみようかということになって、それが成功していくとこっちも・・・みたいなことで、自信がどんどん膨らんでいくんです。

ですから、まずは得意技を1つ作る。

そのためには、得意技は何なのかという気づきを与えたり、そこをコントロールしてあげることが一番大事じゃないかな、と思いますね。


☆目的の提示と取り掛かりのある叱り方が重要☆

―――逆に、育成においてこれはしないように、と気をつけていらしたことはありますか。

◆僕が気をつけていたのは、「うちの会社はこうだから」とか「組織がこうだから」「お客様がこうだから」といった否定的な言葉はできるだけ使わない、ということですね。

否定的な言葉をたくさん使うと、皆しんなりしてくるからです。でも、叱る時はすごく叱りましたよ。もう相手が震えるくらい。

ただ皆の前で新入社員を叱ると萎縮するので、皆の前では4~5年目を叱るんです。

すると、それを見ている新入社員の方も、自分たちが叱られているような感じになって緊張するんですよね。

もちろん、4~5年目の子には前もって、いつでも叱るから、それはこういうことだからと、きちんと説明をしておいてから叱るんですけどね。

―――そのあたりはかなり根回しがお上手ですね(笑)

◆そうなんです(笑)。でもそういう根回しをしてでも、叱る時は本当にきちっと、緊張するくらい叱らないと効果がないんです。
こういうことをしたら本当に上司は怒る、「これはやっちゃいけない」「こういうことは良くないんだ」ということが曖昧になっては何の意味もないので、叱る時はきちんと叱りますね。

―――今は叱れないマネージャーが増えていると思うんですけれども、叱るのが苦手、どうやっていいのかわからないという人に岩永さんから何かアドバイスはありますか。

◆叱る時は、「今度から気をつけろよ」というようなことも踏まえて、何の理由で、何について叱っていると、きちんと自分も気持ちを伝えることが重要ですね。

でも、その後にどこかの時点でフォローがないまま、また何日か後に叱られて、ということが続くと、本人は「常に叱られっぱなし」といったイメージ持ってしまうので、叱った後には、どこかで一度それをリセットしないといけない。

叱るのとは別に、「よいところ」は認めてほめる、というのは大事ですよね。

◆あとは1週間でリセットというふうに、時間での区切りをつけていました。僕の場合は叱ったら、金曜の夜は皆で飲みに行くと決めていました。19時半になったら飲み屋に集合して、そこで全てを解決して、また新たな1週間を始めるようにしていました。

◆それから、叱る前にきちんと本人に、「課のマネージャーとしてたとえば2年後にはこうなってほしい」といった目標を提示しておくことが重要です。

そうすると、「課長は、そういう目標があるから自分を叱ってくれているんだ」ということが部下にも通じていくと思います。

そして半年に1回の人事評価では最大限きちんと認めてあげる。本人が頑張っているところはきちんと評価してあげて、今こういう状況だからあとはこことここ、次は頑張ろう、と本当に目標へ近づいているんだよ、というところをちゃんとフィードバックする。

そうすれば、あとは本人がもっと頑張ろうと思うようになります。

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