■ 現場の問題をどう見つけるか
(1)人のせいにしない!
業務改善の最大の阻害要因は、「○○さんが不注意だからダメ」「○○さんは仕事ができないからダメ」など、トラブルの原因を特定の人物のせいにすることです。そうすると、すべての思考が停止してしまい、業務改善を行う理由・必要性を考える、"なぜ"という問いを阻むことになります。
(2)2つの法則を活用
業務改善の問題を見つけるためには、次の2つの「法則」に基づいて考えると、とても有効です。
1. ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)
労働災害の事例を統計分析した結果、1つの重大な事故の裏には29の軽微な事故があり、さらにその裏には300の事故寸前の、「ヒヤリとしたり、ハッとしたりする危険な状態」があるというもの。労働災害の事例から導き出された比率であるが、リスクの洗い出しにも利用可能である。
2. パレートの法則(20:80の法則)
重要な20%が全体の方向を決定しているという法則。多数の問題があるなかで、そのうちの重要な20%を解決すれば、おおよその問題は解決する。
私の経験で、この2つの法則を用いて問題解決を行った例を紹介します。銀行時代に、私はネットバンキングを立ち上げました。その際、まだ登録者が少ないにもかかわらず、厳しいご批判を多くいただきました。私は、このままの状態でお客さまが増えると、サポートの人数を膨大に用意しなければならなくなると感じました。それに対処するためには、まだ問題がそれほど大きくないときに、重大なリスクの発生を回避する方法を考えなければならないと思いました。
そこで、私は、「サービスの種類を増やす」とか「多機能にする」など、他の多くの意見があるなかで、「操作をシンプルにして、それに関する問い合わせを減らすこと」が、一番大事なのではないかという考えに至りました。この考えは当たっていたようで、実際に当時のネットバンキングの中で、「使いやすさナンバーワンサイト」にも選ばれ、利用者獲得にも多大な効果がありました。このように、何か問題が発生した時点で、今後起こりうる同じ要因の、重大な問題の発生を回避するため、問題が軽微なうちに原因をつきつめることが重要です(ハインリッヒの法則)。また、問題の原因をつきつめる際には、瑣末(さまつ)なこと(80%)を捨象し、本質的な部分(20%)を絞り込むことが大切です(パレートの法則)。