今回もバーチャルマネジメント研究所のコンテンツよりお送りします。
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上林 憲雄氏(Norio Kambayashi)
英国ウォーリック大学経営大学院ドクタープログラム修了後、
2005年神戸大学大学院経営学研究科教授、経営学博士。
専攻は人的資源管理、経営組織。
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■「心理的契約」の重要性
人事労務管理の時代と違って,人的資源管理モデルでは,経済的な側面での契約のみならず,いわゆる「心理的契約」の重要性が強調されています。
人事労務管理の時代には,従業員は規定上定められた給与水準に応じて労働するという発想法だったのですが,人的資源管理パラダイムの下では,契約を締結する当事者間の相互期待や相互コミットメントが高まることが前提とされ,組織全体として経営者と従業員の間の一体感が高められることが目指されているのです。
人的資源管理モデルでも,法律上の契約は当然に交わされます。でも,それだけではなく,心の側面で"好きにさせる"というように変容しつつあるという点がここでのポイントです。
法的側面だけの契約関係では,契約を結ぶ主体どうしの経済的利害が対立しますので敵対関係にならざるを得ませんが,心理面で相手に好きと思わせることができたらしめたものです。
好きなら,多少の利害の対立など我慢できます。好きな会社のためなら,多少しんどくても,少しばかり給料が安くても一生懸命働こうとするものです。
■職場学習の重視
また,人的資源管理パラダイムにおいては,従業員の職場学習(learning)の重要性が認識されている点が,従前のモデルと大きく異なります。
人事労務管理の時代にあっては,企業にとって従業員は,単に与えられた仕事をこなすだけの存在であり,企業がその仕事をこなしたという事実に対し賃金を支払わなければならないことからもっぱらコスト(人件費)として捉えられていました。
人的資源管理のパラダイムでは,もちろん賃金支払いとしての人件費がかかることに変わりはないわけですが,むしろ従業員は,教育訓練投資を十分にかけて学習させ成長させることを通じて,企業にとって莫大な富をももたらしうる存在であると認識されるようになってきたのです。
いわば,従業員を企業にとってのコスト要因としてではなく「競争優位の源泉」として捉えられるようになったということで,人をみる視点が人事労務管理パラダイムからは180度転換したともいえます。
★次回につづく
「きみは営業に向いてない」
周りの人にさんざん言われていながら入社早々営業担当になってしまった中島が伝える、営業の頑張り方