言葉遣い、話し方に対する考え方の軸は「自分が相手を気遣っている(立場をわきまえている)」ことを相手に伝えることです。適切な言葉遣い・話し方を通じて、お客さまを敬っていることをお伝えしましょう。
また、ビジネス表現はとかく冷たく聞こえがちですから、声のトーンや表情でフォローして補いましょう。
お客さまとの会話は、たとえば次のように、基本的な尊敬語・謙譲語を使い分け、「正しい言葉」で話をするようにしましょう。
「言う」⇒「おっしゃる」「申し上げる」など
もちろん、言葉遣いを気にしすぎ、不自然になるのも問題ですが、会話が弾む中で馴れ馴れしい言葉遣いをしてしまうことだけは避けましょう。対面応対の場合、会話をしているお客さまは平気だとしても、
周りにいらっしゃる他のお客さまがそれを聞いて悪い印象を持たれる場合もあるためです。
たとえ職場内でも、普段から誰が聞いても良い印象を受けるような言葉をなるべく使うように心掛け、自然と正しいフレーズが出るようにしておきましょう。
◇よく使う尊敬語(「普通の言葉」⇒「尊敬語」)
◇よく使う謙譲語(普通の言葉/謙譲語)
① 聞き取りやすさ
相手が聞き取りやすい声の大きさで応対をしましょう。開口、滑舌に注意して話します。ぼそぼそと小さい声で話すと、更に話し方で新たなクレームに発展してしまいます。
② スピード
相手に話すスピードの基本は、相手のテンポにあわせて話をすることです。しかし、お怒りのお客さまの中には、早口でまくしたててくる方もいらっしゃいます。
そんな時にも、早すぎず、ゆっくりすぎず、相手が聴きとりやすい一定のペースで話すことを心がけましょう。
(参考:普通のスピードは1分間に200字程度です)
③ 話し癖
自分の話し方の持つ癖は、相手からすると特に気になる項目です。相手が不快に感じたり、こちらに対して不信感を持つこともあります。とりわけ「語尾」と「トーン」には、気を配る必要があります。
④ 声のトーン・抑揚
話し方に強弱や抑揚をつけましょう。話すことで気持ちをお伝えするには、「声」の要素である「トーン」と「抑揚」が、最も重要な項目といえます。 クレーム対応時には、こちらの「申し訳ない」気持ちが伝わるような、神妙な声で気持ちを伝えましょう。
次のようなケースの場合、お客さまの心情を想像してみましょう。さらに、お客さまに対しどのようにアプローチをすべきかも考えてみましょう。
【ケース】
あなたはレストランのホールで働いています。今日は平日の昼間で、ビジネスパーソンのお客さまも多くご利用されています。
20代女性のお客さまが、小さなお子さまを1人連れて、ランチを召し上がっています。すると、お子さまが大きな声で泣き始めてしまいました。
この時の、このお客さまの心情とはどんな状態でしょうか。また、あなたはこの状況でどのようにお客さまにアプローチすべきでしょうか。
うっかりやってしまいがちですが、決して行ってはいけないNG対応があります。困った表情で「お客さま・・・あの・・・他のお客さまの迷惑となりますので・・・」と切り出してしまうことです。
たとえ別室対応をすすめる場合でも、そんな言い方で対応すると、「自分も客だ!」という感情をお客さまに持たせてしまいます。また、いきなり解決策から提示することは、こじれてしまう原因にもなりやすいのです。
まずはいかにお客さまの心情を理解し、それに相応しい対応ができるかを考えましょう。
「お料理は楽しんでいただいていますか?」など、さりげなく声をかけ、お客さまがお困りの様子だったら、それに対する提案として別室対応をご提案します。
「自分が周囲に迷惑をかけているのでは」という気持ちは、お客さま自身が一番持たれていますから、お客さまのお気持ちを理解した対応が望ましいのです。クレーム対応に限らず、お客さま対応の基本は、まず「お客さまの心情を理解すること」です。
お客さまの状況や心情を踏まえた対応が取れていたら、おそらくクレームには発展しなかっただろうというケースはたくさんあるものです。
お客さま対応の際に最初に目指すのは、「お客さまに冷静になっていただくこと」です。困っているお客さまに対しては、まずお客さまへの「共感」を示し、気持ちを落ち着けていただきます。
お客さまのお気持ちを無視して問題の解決に踏み込もうとすると、それが更なるクレームの激化に繋がってしまいます。ですから、いきなり問題を解決してしまおうとせずに、お客さまが困っている事実とその心情を理解し、お客さまに「声をかけること」です。
クレーム対応に対する認識が甘いのか、こんなことを考えている人が多いようです。
これは、明らかにクレーム対応に対する間違った考え方です。このような認識不足によってその対応に問題が生じ、クレームがさらに大きくなってしまうようです。
困っているお客さまには、共感を示すことが大切です。お客さまと敵対するのではなく「困難にあわれたお客さまの気持ちに寄り添う」という意識で応対します。
「(クレームを申し立てた)お客さまは、とてもお困りなんだな」
こちらの態度で、そんな気持ちでいることをお示しすることが重要なのです。その際には、お客さまへの共感の表れとして、遺憾の意識を「お詫び」で伝える必要があります。
クレームが大きくなると、代表者へ手紙が送られたり、裁判沙汰になったりすることがあります。こうした深刻な事態にまで発展するクレームの多くは、「対応が悪かったから」、更にいえば「(お客さまの)気持ちを分かってくれなかったから」というものが多いのです。
代表者への手紙や裁判沙汰などを減少させるには、「心情理解」をすることが必要です。
クレーム対応時には、気持ちのこもったお詫びができるかどうかは、きわめて重要です。相手の心情を汲み取り、申し訳ない気持ちを「頭を下げて」表します。先にあいさつの言葉を述べてから、「最敬礼」で相手にお辞儀をし、お詫びを示します。
① お詫びの手順
② お辞儀のポイント
③ お辞儀の悪い例
以上に述べたような正しいお辞儀の流れに沿って、ポイントを確認しながら練習しましょう。
クレームをおっしゃるお客さまは、お怒りの方がほとんどです。そんなお客さまの心の中は、「思っていることを言いたい」気持ちでいっぱいです。
お客さまのお気持ちを理解し、お客さまのお気持ちを静めていただくために、まずは受け止めるコミュニケーション、「聴く」が大切になります。
お客さまは、何が起きて、どんな風に困っているかを話したがっています。クレームを受ける側にとっては小さなことでも、お客さまにとっては「大きな」「大切な」ことです。 お客さまの気が済むまで話を聴くために、「聴き役」というより、「話させ役」に徹することがポイントです。
お客さまの話を最後まで聴かずに、お客さまのご意見・ご意向の間違いを指摘したり、即座に反論したりする浅はかな行動は、絶対に避けましょう。そんな行動はお客さまの気持ちを逆なでし、クレームがさらに大きくなりかねません。
あいづち、うなずき、クッション言葉、復唱、間の取り方など、これらを的確に使いこなしましょう。お客さまから見て、こちらが聴いてくれていることがわかるように、しっかり反応を示します。
「あいづち」と「うなずき」は相手に「承認された」という意識を芽生えさせます。「はい」「よくわかります」「ごもっともです」などの言葉を適宜使います。
ただし、うなずき過ぎは逆効果です。話の40~50%程度の部分にうなずきましょう。
お客さまの話は全身を使ってききます。事務的に「聞く」のではなく、心で「聴く」ことが求められます。そして、お客さまの心情を十分に理解している旨を相手に伝えます。
そのことが相手に「自分の言っていることが理解されている」という安心感を持たせ、信頼関係の構築に繋がります。
ここまでちゃんとできたら、やっと「聞く」ではなく、「聴く」ことになるのです。お客さまのお話を「聴く」ことのゴールは、「お客さまとの信頼関係をつくること」です。
事実や状況に配慮して、お客さまに対しお声をおかけすることが大切です。
お詫びの言葉や、お客さまのお気持ちを理解しながら受け止める言葉が、お客さまの気持ちを静めることになります。
お客さまは、こちらの気持ちを受け止めて「この人は、わかってくれる人だ」と感じます。
このことが、スムーズなクレーム対応への第一歩となるのです。
■「言葉の緩衝材」の例
事実や相手の状況を踏まえて、「それは大変でございましたね」などの受け止める言葉も緩衝材になります。
クレーム対応は、「聴く」ことがまず重要ですが、一方ではこちらの言い分も伝えていかなければなりません。クレームを申し立てられる方は、怒りながらも相手の話をよく聴いています。少しずつ「ジャブ」を打ち、事実やこちら側の主張を伝えていきます。相手が怒り出しても、めげてはいけません。
お怒りの相手に言い分を伝えるのは、誰でも身構えてしまうものです。しかし、時には「覚悟」と「勇気」を持って伝えることが必要です。
ここで注意すべきは、自己防衛や正当化をするために法律やルールをたてにとってしまっては、これまでの手順で構築した相手との信頼関係が崩れてしまうことです。お話を聴くことで幾分落ち着いたとはいえ、お怒りの相手に、こちらの言い分を一気に伝えてしまうのは好ましくありません。「事実だから、正しいことだからといって、長々と語らない」ということを心がけます。
そのためには、「小出しに伝える」ことが有効です。相手が受け入れられるように、納得できるように伝えていくために、少しずつ伝えていきます。
また、伝える順番にも気をつけましょう。「明確にできた事実」を先に伝え、「推測や伝聞の情報は」後から伝えます。明確なことから伝えていかないと、相手の混乱を招いたり、後に「言った、言わない」という状態を招いてしまい、クレームが長期化してしまう恐れがあります。
クレーム対応は、次のように考えれば考えるほど、相手への心情理解や丁寧な対応が不足してしまい、クレームへと悪化させてしまいます。
クレーム一次対応の心構えとしては、「すぐ解決すること」よりも、「まずは炎上させない」ように、落ち着いた対応が望まれます。
クレーム対応の大原則は迅速に対応することです。
電話、手紙、Eメールなどは、それらが届いた時点で直ちに連絡を取ります。すぐに対応できない場合でも、お客さまには必ず途中経過を知らせます。「放置されている」という印象をお客さまに持たれないよう気をつけます。
よくあるトラブルとして、「ただちに」「すぐに」「のちほど」「後日」と言ったのに連絡がない、対応が遅いというのがあります。曖昧な言葉は使用せず、「○分以内に対応いたします」「○日以内にお電話いたします」と、はっきりとお伝えすることが大切です。
また、Eメールで受けた場合は、電話対応に切り替え、可能であれば現場に急行すべきです。Eメールよりも電話、電話よりも対面の方が、相手の心情を正確・迅速に理解できます。 さらに、対面での対応は、電話対応に比べて、相手の表情など多種多様な情報が収集できます。
クレームは個人に対して寄せられるものだけでなく、組織に対して寄せられるものも多くあります。従って、組織を代表した立場で、クレーム当事者として対応することが大切です。
次の例のように、自分は当事者ではないので関係ないという態度は、お客さまの気持ちを全く汲んでいません。
自分のしたことが原因でないクレーム(上司・同僚・後輩などが引き起こしたもの)に対しても、組織の代表として対応することが基本です。「私は関係ない」という態度は、クレームをさらに拡大させてしまいます。
問題やお客さまのご要望の確認に入る前に、私たちが気をつけなければならないことが1つあります。それは、「自分にとっての常識・判断」と「相手にとっての常識・判断」は同じではない、と理解することです。
「自分はどうもクレームに遭いやすいような気がする」という人は要注意です。一度ならず何度もクレームに遭う人は、自分側にクレームを起こしてしまう原因があるかもしれません。
お怒りのお客さまに対し、お客さまの意見・意向の間違いを指摘したり、即座に反論してしまったり、自分の常識・判断に基づいて反応を返してしまうと、お客さまの気持ちを逆なですることになってしまうからです。
商品・サービスを提供する側とお客さまの常識は異なります。この点を考慮せずに、「自分たちは○○するのが常識」「あなたの考えはおかしい」という態度で臨むと、クレームを起こしてしまうのです。常識をすり合わせる第一歩はお客さまの話をよくきき、お互いの常識を確認しあうことです。
「○○については、××でございますね」など、口に出して確認することで、お互いの常識をすり合わせていくことができます。
お客さまからの連絡を受けた1次対応者が、基本的な事実確認を省略したために、本来ならクレームにならずに済んだ案件を、炎上させてしまうクレームが少なくありません。解決すべき問題・ご要望の確認を怠ると、対応の遅れやさらなる問題を引き起こし、クレームを拡大させてしまうからです。
一次対応者は慌てずに「何が問題になっているか」、「ご要望は何か」を確認することが大切です。
クレーム対応の基本は、「聴くこと」であり、「問題・ご要望の確認」などの情報収集につながります。また「訊くこと」も重要です。「何が問題なのか」「お客さまは何を伝えたいのか」を意識しながらナビゲートしつつ、お客さまに質問することがポイントです。
プロとしてのこのような業務知識が、クレームを解決する糸口となるのです。
まず質問する際は、お客さまに「質問して良いか」を聞きます。
次に「どうされましたか」と質問を投げかけます。その際、業務知識を総動員して質問し、お客さまには「プロ」に話しているという安心感を感じていただきながら情報収集をします。
クレーム対応には業務知識とともに一般常識も不可欠です。正確な業務知識がなければ、的確な事実確認ができません。逆に言えば、正確な説明をすれば、納得していただけるケースが大多数です。そして、冷静に事実関係や状況を把握することが求められます。
詳しく訊くことは、次のような5つの質問です。
事務的な尋問調では、更にクレームを招いてしまうかもしれません。おそれ入りますが」など一言添えるだけで、印象は大きく変わります。
また、お客さまからのお話を勘違いしてしまうこともあり得ます。お話をきいたあと、「ここまでの確認ですが、よろしいでしょうか」などの一言を挟み、要約や復唱をし、内容に間違いがないかを確認します。この一言は、正確に話を把握できるだけでなく、きき手としての責任も相手にお伝えすることが出来ます。
さらには、大事なことを言う前後に間をとると、聞き手の注意を引きつけることができます。質問を投げかけた後に、お客さまに考えていただく「間」をつくりましょう。一つの区切りができて、冷静に内容を振り返っていただくことが可能になります。
クレーム対応時には、次のような「クッション言葉」が使われます。
① 依頼
② 拒絶
③ 抗議
④ あらゆるとき
自分だけではクレームを解決できないケースも数多くあります。その場合、無理に自分1人で解決しなければならないと思わず、できるところまで対応し、2次対応者へ引継ぎましょう。自分で対応することにこだわるあまり、こじらせて手に負えないクレームへ悪化させることだけは、避けなければなりません。
クレームは、元来、組織に向けられているものだと認識すべきです。
クレームを受けた場合には、できる範囲の対応は自分でまず行い、安易に上司や先輩に丸投げやバトンタッチなどをしないのが原則です。しかし、自分である程度対応しても解決の糸口が見出せない場合、上司や経験豊富な者に引き継ぎます。内容・状況にもよりますが、20分~30分くらいが対応時間の目安です。
クレーム対応者が変わることで、お客さまとの感情のもつれが一掃する効果があるものです。特に、あなたより上の立場の者が対応することで、お客さまにクレームを収める「理由」が生まれます。
2次対応者へ正確に引き継ぐためには、聴いた内容・状況をメモすることがポイントです。クレーム対応しながら逐一内容のメモをとり、スムーズな引継ぎに生かすことを心がけます。
どんな小さな事でも記録します。相手の言葉のうち、キーワードを強調して残しておくと、後々使いやすくなります。お客さまの言葉を確認する際には、復唱も忘れないようにしましょう。
メモを整理し、正確な記録を取っておくことが、迅速かつ的確な判断の第一材料になります。事実確認のために、自社オリジナル「メモ用紙」を用意することが望ましいです。具体的には、対応時に訊くべきことを記載したメモ用紙をつくっておき、日々の仕事の場で活用することをオススメします。
クレーム対応にかかわらず、自分の仕事を円滑に行う際に重要なのは、漏れなく「訊く」ことです。
お客さまからのご連絡の中には、適切な担当部署へのスムーズな取り次ぎを要求されるものもあります。
特に電話対応の場面では、お客さまの状態・お気持ちを把握することは難しいものです。また取り次ぎ先へ十分な情報共有を行わず、ただ転送してしまうこともあります。
そうした「取り次ぎ方」のまずさによって、更にお客さまのお怒りを増幅させてしまうことが少なくありません。
1次対応者として、2次対応者に取り次ぐためには、次の3点を心得ておかなければなりません。
① 組織を代表して、心情理解・お詫びができる
お客さまが既にお怒り、もしくはご不満のご様子でお電話をかけてこられた場合は、まずお客さまへ心情理解・お詫びをし、組織の代表として対応します。
② お客さまの状況・ご用件をしっかり確認する
お客さまのお話をきき、「どのようなご用件か」「どのような状態か」を確認します。取り次ぎ先を間違えたり、用件にききもれを出さないよう、お客様のクレームをしっかり確認します。
③ お客さまの状態、ご用件を担当者(取り次ぎ先)に伝える
お客さまからおうかがいした内容を、取り次ぎ先に伝えます。これにより、お客さまが再度、取り次ぎ先担当者に同じことを説明する手間を省きます。
「さっきも言ったのに・・・」というお客さまのストレスを防ぎます。
① しっかりあいさつ・名乗りを行う
あなたが取り次がれた立場であっても、あいさつや名乗りを省略して「はい、なんでしょう?」などと電話に出てはいけません。
② お詫びと用件の復唱確認ができる
1次対応者同様、まずお客さまへ心情理解・お詫びをお伝えします。そのうえで、こちらはお客さまの用件がきちんと引継がれているということを、次のようにお客さまにお伝えしましょう。
このように復唱確認を冒頭ですることによって、誤解や間違った認識のまま対応を進めてしまう事態を回避できます。
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