1.3つのクレーム
「クレーム」とは、「不満表現」のことですが、広く「お問合せ、要望・提案」までの意味を含むこともあります。
これまで、企業・官公庁向けに多数の研修を行ってきた経験を踏まえると、クレームは、(1)「日常的なクレーム」、(2)「特殊なクレーム」、(3)「お門違いなクレーム」、の3つに分類できるのではないかと考えています。
まず、「日常的なクレーム」は、「説明書を読んでも、パソコンの使い方がわからない」「オペレータの対応が要を得ず、やって欲しいことをしてくれない」など、お客さまが商品・サービスに不満を持ったり、期待を下回った場合に現れるものです。また、「道路の夜間工事がうるさい」など、常識的に考えて正当な不満要求もこの中に含まれます。
次に、「特殊なクレーム」とは、「商品の欠陥を公にされたくなければ、誠意を見せろ(お金を払え)」、「要求通りにしなければ、騒ぎ立てるぞ」、「株で損をしたから、お金を返せ」など、過度に「金銭要求」などの不法行為を強要したり、「業務妨害」を行なう、悪意を持った故意のクレームです。
3つ目が、「お門違いなクレーム」で、「お前の店の前でころんだ。治療費を出せ」、「消費税を払いたくない」など、憂さ晴らし、八つ当たりなど、個人的な感情や、不満・ストレスなどを押し付けてくる、自分勝手な、常識はずれのクレームです。
2.近年、「お門違いなクレーム」が特に増えている
3つのクレームのうち、近年、特に、「お門違いなクレーム」が増えています。このクレームは、「お客さまとの見解の相違」や、「勘違い」、「法律等で決まっていてどうしようもできない」というものが多く、現場の方々を悩ましつづけています。
近年、クレームは複合化・複雑化する傾向にあります。この変化の背景には、どのような社会環境の変化があるのでしょうか。
3.サービスの向上と個人の意識の変化
私も、接客・接遇が悪い場面にも多々遭遇しますが、それだけでは、現在のクレーム増加の原因は説明できず、「時代の流れ」という要素も大きいように思います。
おそらく、クレームになる可能性がある事柄は、大昔から存在していたと思いますが、それが「クレーム」という形で実際に形となって近年増え続けているのは、一言でいえば、「便利すぎる世の中になった」こともその一因となっているように思います。
例えば、「あいつは気にいらないから注意しろ」などの「価値観の違い」によるクレームが多く発生しているのも、個人の気質の変化とともに、顧客側の期待が過剰になっているためかもしれません。
4.個人の情報発信手段の変化
また、以前は、個人が公にクレームを発信しようとしても、手段が限られていたために、影響が予想を超えて急速に波及することは多くありませんでした。
一方、携帯電話やインターネットが普及した近年では、個人のクレームの発信手段と、影響力の両方の側面に変化が生まれています。
あるバス会社によれば、以前であれば、バスの乗車中に乗客が不満を抱いても、自宅に帰るまでクレームの電話をかけることができませんでしたが、携帯電話の時代である現在は、乗客は不満を覚えるとすぐにバスの社内からクレームの電話をかけるといいます。
また、インターネットの普及で、一般の個人が影響力のある主張を容易に発信できるようになったことは、クレームを取り巻く環境に大きな変化をもたらしています。
5.どのようにクレーム対応を行うか?
社会が複雑になり、クレームが増加していますが、実は、クレーム応対は4つの基本手順を身につければ大半は解決すると考えています。
次週以降に、詳しくご説明いたしますが、
(1)「組織を代表している」という意識を持ち、行動する
(2)相手の「心情を理解」してクレームをよく聴き、迅速に行動する
(3)何が問題になっているか「事実を確認」する
(4)問題の解決策や代替案などの「解決策を提示」する
という、4つの基本手順にしたがえば、お客様に対応が悪いという印象を与えたり、お客様の神経を逆なでして、クレームをさらに大きくすることはありません。